断罪!婚約破棄され、念願の「肉食生活」を求めて辺境へ

ちゃっぴー

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「……エドワード様! しっかりしてくださいませ、エドワード様!」

砂埃の向こうから、今度はピンク色のフリルを泥だらけにしたルル嬢が駆け寄ってきた。
彼女もまた、王都での「もやし生活」に耐えかねたのか、頬が削げ、目は血走り、かつての可憐な面影は霧散している。

「……う、うう。ルル……。見てくれ、パールが……パールが恐ろしい肉を回しているんだ……」

「肉!? まあ、なんて……なんて罪深い……! あんなに脂の乗ったものを、ルルを差し置いて食べるなんて!」

ルル嬢は私を睨みつけるが、その視線は私の顔を通り越して、ガイ様が手に持っている「焼き立てのスペアリブ」に突き刺さっている。

「あら、ルル様。あなた、殿下の心配よりお肉の心配をしていらっしゃらない?」

「うるさいわね! この泥棒猫! 悪役令嬢! そのお肉を今すぐ私に献上しなさい! これは、エドワード様を誘惑した慰謝料よ!」

ルル嬢が、獣のような身のこなしで私に襲いかかろうとした。
しかし、その細い腕が私に触れる前に、巨大な影が彼女を遮った。

「……俺の女に、その汚い手を伸ばすんじゃねえ」

ガイ様の低く、冷徹な声。
彼は大剣を鞘に納めたまま、ただそこに立っているだけで、周囲の温度を五度ほど下げたような威圧感を放った。

「ひ……ひいいいっ! な、なによこの野蛮な男は!」

「野蛮で結構。……おい、王子。いつまで地面を舐めてる。さっさとその『もやし女』を連れて、俺の領地から消えろ」

ガイ様が、足元で震えているエドワードの襟首を、子猫でも扱うように片手でひっつかんだ。

「ぐえっ!? な、離せ! 不敬だぞ! 私は、この国の……っ!」

「国のなんだって? もやしの普及大使か? 悪いが、ここには肉を食う男と女しかいねえ。お前みたいな、自分を愛してくれる女の価値も分からねえスカスカの男に、指図される筋合いはねえんだよ」

ガイ様はそのまま、エドワードを勢いよく兵士たちの方へ放り投げた。

「……あ、あ、熱い……。いや、重い……。殿下、重いです……」

「もやししか食べていないから、殿下を受け止める力も残っていないのか……!」

倒れ込むエドワードと、それを支えきれずに共倒れする兵士たち。
その光景は、もはや悲劇を通り越して喜劇だった。

「パール。こいつら、どうする。……一応、王族だ。殺すと後味が悪いが」

ガイ様が私に問いかける。
私は、焼き上がった黒鉄牛の一番良い部位を小皿に取り分け、ガイ様の口に運んでから答えた。

「そうですわね。……ガイ様、彼らには一番過酷な『刑罰』を与えましょう」

「刑罰? ……拷問か?」

「いいえ。――彼らの目の前で、私たちが最高に美味しそうに肉を食らう、という刑ですわ」

私は、領民たちに合図を送った。
すると、収穫祭の音楽が一際大きく鳴り響き、村人たちが一斉に、肉の塊を持ってエドワードたちの周りを取り囲んだ。

ジュウウウ! パチパチ!

「さあ! 皆様! 王都からのお客様に、私たちの『幸せの音』を聞かせて差し上げましょう!」

「やめろ! やめてくれ! その香りを嗅がせるな!」

「あああ! あの肉汁が……肉汁が地面に落ちている! もったいない、私の口に落としてぇ!!」

エドワードとルルは、周囲で繰り広げられる「肉の狂宴」に、発狂せんばかりに身悶えた。
自分たちが捨てた女が、自分たちが馬鹿にしていた野蛮な土地で、世界で一番幸せそうに笑っている。
その事実が、空腹という最大の苦痛を伴って彼らの魂を削っていく。

「……パール。お前、本当に性格悪いな(最高だ)」

ガイ様が、私の腰を引き寄せて笑う。

「あら。悪役令嬢ですもの。……さあ、ガイ様。あんなもやし、もう放っておきましょう。お肉が、私たちを呼んでいますわ!」

「ああ。……一生、お前の肉の好みに付き合ってやるよ」

エドワードたちは、その後、領民たちによって領地境界線まで「丁重に(肉の香りを振りまきながら)」送り届けられた。
彼らの手元に残されたのは、パールが慈悲で持たせた、たった一本の「もやし」だけだったという。

パールの復讐は、血を流すことなく、ただ圧倒的な「旨味」によって完遂されたのである。
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