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王都の謁見の間は、かつてないほどの殺気と、そして「空腹による苛立ち」に包まれていた。
玉座に座る国王陛下は、目の前に並べられた「豆苗とカリフラワーの温野菜」を力なく見つめ、深い、深いため息をついた。
「……エドワードよ。貴様が辺境へ向かったと聞いた時は、ついにパールを連れ戻し、この国の食肉事情を改善してくれるものと期待していたのだがな」
国王の視線の先には、泥まみれで、見る影もなくやつれ果てたエドワードが平伏していた。
「……申し訳ございません、父上。しかし、あのアバズレ……いえ、パールは完全に野獣公爵に毒されておりました。あんな脂ぎった生活、王族として認めるわけには……」
「黙れ、この無能なもやし野郎が!!」
国王の怒号が、ひび割れた鐘のように響き渡った。
エドワードは肩をビクつかせ、床に額を擦りつける。
「いいか、エドワード。貴様が『品性がない』と切り捨てたパール嬢の買い占めルートが、どれほどこの国の経済と……何より、私の健康を支えていたか理解しているのか!」
「し、しかし父上、野菜は美容に良く……」
「美容など知るか! 私はステーキが食べたいのだ! あの日以来、私の胃袋はもはや干からびた雑巾のようだぞ!」
国王の背後に控える大臣たちも、血走った目で一斉に頷いた。
彼らもまた、パールの「おこぼれ」を失い、家庭での食卓がサラダ記念日状態になっている被害者たちだ。
「さらに、貴様が連れて行った軍勢はどうした。なぜ一人残らず、ベルフェゴール領へ亡命を希望しているのだ」
「そ、それは……敵の卑劣な『肉の香波(かおり)』による洗脳でして……」
「言い訳はもういい! 貴様のような、国民の胃袋を掌握するどころか自ら飢えさせる愚か者に、この国の未来を任せるわけにはいかん!」
国王は立ち上がり、冷酷な宣告を下した。
「エドワード・ド・ロワイヤル! 貴様の王位継承権を、現時刻をもって剥奪する!」
「なっ……! 父上、そんな!?」
「さらに、貴様が心底愛してやまない『もやし』と『豆苗』を、国民のために一生作り続ける刑に処す! 王都のはずれにある、痩せこけた開拓地へ向かえ!」
エドワードの顔が、絶望で真っ白に染まった。
優雅な王宮生活。
着飾った令嬢たちに囲まれ、高尚な「草食論」をぶち上げる日々。
それらすべてが、今、土まみれの農作業へと変わろうとしていた。
「ま、待ってください! 私は王太子ですよ!? クワなんて持ったことも……」
「安心しろ。貴様が育てた野菜は、すべてパールのいる辺境へ『家畜の餌』として輸出する予定だ。彼女への、せめてもの詫びにな」
「……家畜の、餌……。私が作った野菜が、パールの食べる肉の栄養になるというのですか……!?」
「そうだ。これぞ、完璧なる食物連鎖だな」
衛兵たちが、泣き叫ぶエドワードの両脇を抱え、ズルズルと広間から引きずり出していく。
「やめろ! 私は豆苗を愛しているが、豆苗を育てるのは嫌だ! 肉だ! 本当は、私も肉が食べたかったんだぁぁぁ!!」
最後の最後で本音を叫んだ元王子の声は、重厚な扉の向こうへと消えていった。
その数日後。
エドワードは、泥まみれの服を着て、慣れない手つきで地面に種を蒔いていた。
彼の目の前には、広大な「もやし畑(予定地)」が広がっている。
「……うう、腰が痛い。喉が渇いた。……お腹、空いた……」
彼は、ふと空を見上げた。
北の空からは、今日も香ばしい肉の香りが風に乗って届いてくる……ような気がした。
「パール……。君は今、どんな肉を食べているんだい……?」
一方その頃。
ベルフェゴール領では、パールの実家から「王位継承者が変わったから、もう自由にしていいぞ」という手紙が届いていた。
「あら。エドワード様、もやし農家になられたんですって。……似合っているわ、とっても」
パールは、ガイの腕に寄り添いながら、報告書を焚き火に投げ込んだ。
「……いい着火剤になったな。さあ、パール。今日はエドワードの就農祝いに、最高級の豚バラ肉を五段重ねにして食うぞ」
「はい、ガイ様! お祝いは豪華にいかなくてはなりませんわね!」
王都の愚かな王子が土に塗れる中、パールの幸せは、肉汁と共に最高潮へと向かっていた。
玉座に座る国王陛下は、目の前に並べられた「豆苗とカリフラワーの温野菜」を力なく見つめ、深い、深いため息をついた。
「……エドワードよ。貴様が辺境へ向かったと聞いた時は、ついにパールを連れ戻し、この国の食肉事情を改善してくれるものと期待していたのだがな」
国王の視線の先には、泥まみれで、見る影もなくやつれ果てたエドワードが平伏していた。
「……申し訳ございません、父上。しかし、あのアバズレ……いえ、パールは完全に野獣公爵に毒されておりました。あんな脂ぎった生活、王族として認めるわけには……」
「黙れ、この無能なもやし野郎が!!」
国王の怒号が、ひび割れた鐘のように響き渡った。
エドワードは肩をビクつかせ、床に額を擦りつける。
「いいか、エドワード。貴様が『品性がない』と切り捨てたパール嬢の買い占めルートが、どれほどこの国の経済と……何より、私の健康を支えていたか理解しているのか!」
「し、しかし父上、野菜は美容に良く……」
「美容など知るか! 私はステーキが食べたいのだ! あの日以来、私の胃袋はもはや干からびた雑巾のようだぞ!」
国王の背後に控える大臣たちも、血走った目で一斉に頷いた。
彼らもまた、パールの「おこぼれ」を失い、家庭での食卓がサラダ記念日状態になっている被害者たちだ。
「さらに、貴様が連れて行った軍勢はどうした。なぜ一人残らず、ベルフェゴール領へ亡命を希望しているのだ」
「そ、それは……敵の卑劣な『肉の香波(かおり)』による洗脳でして……」
「言い訳はもういい! 貴様のような、国民の胃袋を掌握するどころか自ら飢えさせる愚か者に、この国の未来を任せるわけにはいかん!」
国王は立ち上がり、冷酷な宣告を下した。
「エドワード・ド・ロワイヤル! 貴様の王位継承権を、現時刻をもって剥奪する!」
「なっ……! 父上、そんな!?」
「さらに、貴様が心底愛してやまない『もやし』と『豆苗』を、国民のために一生作り続ける刑に処す! 王都のはずれにある、痩せこけた開拓地へ向かえ!」
エドワードの顔が、絶望で真っ白に染まった。
優雅な王宮生活。
着飾った令嬢たちに囲まれ、高尚な「草食論」をぶち上げる日々。
それらすべてが、今、土まみれの農作業へと変わろうとしていた。
「ま、待ってください! 私は王太子ですよ!? クワなんて持ったことも……」
「安心しろ。貴様が育てた野菜は、すべてパールのいる辺境へ『家畜の餌』として輸出する予定だ。彼女への、せめてもの詫びにな」
「……家畜の、餌……。私が作った野菜が、パールの食べる肉の栄養になるというのですか……!?」
「そうだ。これぞ、完璧なる食物連鎖だな」
衛兵たちが、泣き叫ぶエドワードの両脇を抱え、ズルズルと広間から引きずり出していく。
「やめろ! 私は豆苗を愛しているが、豆苗を育てるのは嫌だ! 肉だ! 本当は、私も肉が食べたかったんだぁぁぁ!!」
最後の最後で本音を叫んだ元王子の声は、重厚な扉の向こうへと消えていった。
その数日後。
エドワードは、泥まみれの服を着て、慣れない手つきで地面に種を蒔いていた。
彼の目の前には、広大な「もやし畑(予定地)」が広がっている。
「……うう、腰が痛い。喉が渇いた。……お腹、空いた……」
彼は、ふと空を見上げた。
北の空からは、今日も香ばしい肉の香りが風に乗って届いてくる……ような気がした。
「パール……。君は今、どんな肉を食べているんだい……?」
一方その頃。
ベルフェゴール領では、パールの実家から「王位継承者が変わったから、もう自由にしていいぞ」という手紙が届いていた。
「あら。エドワード様、もやし農家になられたんですって。……似合っているわ、とっても」
パールは、ガイの腕に寄り添いながら、報告書を焚き火に投げ込んだ。
「……いい着火剤になったな。さあ、パール。今日はエドワードの就農祝いに、最高級の豚バラ肉を五段重ねにして食うぞ」
「はい、ガイ様! お祝いは豪華にいかなくてはなりませんわね!」
王都の愚かな王子が土に塗れる中、パールの幸せは、肉汁と共に最高潮へと向かっていた。
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