断罪!婚約破棄され、念願の「肉食生活」を求めて辺境へ

ちゃっぴー

文字の大きさ
27 / 28

27

しおりを挟む
王都の謁見の間は、かつてないほどの殺気と、そして「空腹による苛立ち」に包まれていた。

玉座に座る国王陛下は、目の前に並べられた「豆苗とカリフラワーの温野菜」を力なく見つめ、深い、深いため息をついた。

「……エドワードよ。貴様が辺境へ向かったと聞いた時は、ついにパールを連れ戻し、この国の食肉事情を改善してくれるものと期待していたのだがな」

国王の視線の先には、泥まみれで、見る影もなくやつれ果てたエドワードが平伏していた。

「……申し訳ございません、父上。しかし、あのアバズレ……いえ、パールは完全に野獣公爵に毒されておりました。あんな脂ぎった生活、王族として認めるわけには……」

「黙れ、この無能なもやし野郎が!!」

国王の怒号が、ひび割れた鐘のように響き渡った。
エドワードは肩をビクつかせ、床に額を擦りつける。

「いいか、エドワード。貴様が『品性がない』と切り捨てたパール嬢の買い占めルートが、どれほどこの国の経済と……何より、私の健康を支えていたか理解しているのか!」

「し、しかし父上、野菜は美容に良く……」

「美容など知るか! 私はステーキが食べたいのだ! あの日以来、私の胃袋はもはや干からびた雑巾のようだぞ!」

国王の背後に控える大臣たちも、血走った目で一斉に頷いた。
彼らもまた、パールの「おこぼれ」を失い、家庭での食卓がサラダ記念日状態になっている被害者たちだ。

「さらに、貴様が連れて行った軍勢はどうした。なぜ一人残らず、ベルフェゴール領へ亡命を希望しているのだ」

「そ、それは……敵の卑劣な『肉の香波(かおり)』による洗脳でして……」

「言い訳はもういい! 貴様のような、国民の胃袋を掌握するどころか自ら飢えさせる愚か者に、この国の未来を任せるわけにはいかん!」

国王は立ち上がり、冷酷な宣告を下した。

「エドワード・ド・ロワイヤル! 貴様の王位継承権を、現時刻をもって剥奪する!」

「なっ……! 父上、そんな!?」

「さらに、貴様が心底愛してやまない『もやし』と『豆苗』を、国民のために一生作り続ける刑に処す! 王都のはずれにある、痩せこけた開拓地へ向かえ!」

エドワードの顔が、絶望で真っ白に染まった。
優雅な王宮生活。
着飾った令嬢たちに囲まれ、高尚な「草食論」をぶち上げる日々。
それらすべてが、今、土まみれの農作業へと変わろうとしていた。

「ま、待ってください! 私は王太子ですよ!? クワなんて持ったことも……」

「安心しろ。貴様が育てた野菜は、すべてパールのいる辺境へ『家畜の餌』として輸出する予定だ。彼女への、せめてもの詫びにな」

「……家畜の、餌……。私が作った野菜が、パールの食べる肉の栄養になるというのですか……!?」

「そうだ。これぞ、完璧なる食物連鎖だな」

衛兵たちが、泣き叫ぶエドワードの両脇を抱え、ズルズルと広間から引きずり出していく。

「やめろ! 私は豆苗を愛しているが、豆苗を育てるのは嫌だ! 肉だ! 本当は、私も肉が食べたかったんだぁぁぁ!!」

最後の最後で本音を叫んだ元王子の声は、重厚な扉の向こうへと消えていった。

その数日後。
エドワードは、泥まみれの服を着て、慣れない手つきで地面に種を蒔いていた。
彼の目の前には、広大な「もやし畑(予定地)」が広がっている。

「……うう、腰が痛い。喉が渇いた。……お腹、空いた……」

彼は、ふと空を見上げた。
北の空からは、今日も香ばしい肉の香りが風に乗って届いてくる……ような気がした。

「パール……。君は今、どんな肉を食べているんだい……?」

一方その頃。
ベルフェゴール領では、パールの実家から「王位継承者が変わったから、もう自由にしていいぞ」という手紙が届いていた。

「あら。エドワード様、もやし農家になられたんですって。……似合っているわ、とっても」

パールは、ガイの腕に寄り添いながら、報告書を焚き火に投げ込んだ。

「……いい着火剤になったな。さあ、パール。今日はエドワードの就農祝いに、最高級の豚バラ肉を五段重ねにして食うぞ」

「はい、ガイ様! お祝いは豪華にいかなくてはなりませんわね!」

王都の愚かな王子が土に塗れる中、パールの幸せは、肉汁と共に最高潮へと向かっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。 (私って一体何なの) 朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。 そして―― 「ここにいたのか」 目の前には記憶より若い伴侶の姿。 (……もしかして巻き戻った?) 今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!! だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。 学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。 そして居るはずのない人物がもう一人。 ……帝国の第二王子殿下? 彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。 一体何が起こっているの!?

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

婚約破棄されたので、とりあえず王太子のことは忘れます!

パリパリかぷちーの
恋愛
クライネルト公爵令嬢のリーチュは、王太子ジークフリートから卒業パーティーで大勢の前で婚約破棄を告げられる。しかし、王太子妃教育から解放されることを喜ぶリーチュは全く意に介さず、むしろ祝杯をあげる始末。彼女は領地の離宮に引きこもり、趣味である薬草園作りに没頭する自由な日々を謳歌し始める。

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

処理中です...