魔境育ちの全能冒険者は異世界で好き勝手生きる‼︎ 追い出したクセに戻ってこいだと?そんなの知るか‼︎

アノマロカリス

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3巻

3-2

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「それまで! 勝者、リュカ殿!」

 僕はその言葉を聞いて、剣をしまった。
 すると、ハイランダー公爵が驚いた顔で声を掛けてくる。

「私ですら[ソニックブレスト]は教わらなかったのに……リュカ殿は本当に過酷かこくな修業をこなしてきたのだな」
「僕はとー祖父ちゃん達に死ぬ程シゴかれましたからね。弟子より親族の方が、遠慮えんりょなく鍛えられるのは当然でしょう」

 まぁあの人達に遠慮なんて発想があるかは怪しいが。
 そんなことを思っていると、ハイランダー公爵が「約束の依頼料だ」と言って、金貨を一枚渡してくる。
 僕はそれを受け取ると、ポーションをふところから取り出した。

「そのポーションは……なんだか色が普通のものと少し違うな?」

 そう聞いてきたハイランダー公爵に、僕はポーションの効果を説明する。

「このポーションを飲むと徐々に怪我が治っていきます。しかし副作用として治るまでの間に、攻撃を食らった際の十倍の痛みに襲われるんです。シュヴァルツの性根を直すには良いかと思いまして」
「ほう、それは懐かしいな。私も修業の時、痛みを増すポーションをよく飲まされたものだ。言われてみれば、こんな色をしていた気もする」

 このポーションはとー祖母ちゃんが作ったものを改良したものだったが、ハイランダー公爵も似たようなものを飲んだ経験があるのか。
 っていうかシュヴァルツに飲ませるのは反対されるかもと思ったけど、そうでもないみたい。
 この人もとー祖父ちゃんの修業を乗り越えているから、感覚がズレているのかも。
 そんなふうに思いながら、地面にうずくまるシュヴァルツにポーションを飲ませた。
 すると、シュヴァルツがのた打ち回り始める。
 息子の様子を見つつ、ハイランダー公爵が懐かしむように言う。

「私もカーディナル殿から痛覚五十倍ポーションを飲まされた時はつらかったなぁ……」
「え? 百倍じゃないんですか?」
「何? 今はそんなものがあるのか?」
「僕が修業していた時は百倍ポーションでした。そう考えたら十倍なんて、軽い軽い!」


 それからしばらく雑談に興じているうちに、シュヴァルツは気絶して動かなくなった。
 怪我はすっかり治っているようで、一安心である。
 だが念のため体をるということで、一緒に試合を見ていた執事達数人が、シュヴァルツを治療室に連れて行った。
 ハイランダー公爵は小さく呟く。

「……これで、少しは態度を改めてくれるといいが……」

 やはりハイランダー公爵は、息子の性格を心配しているらしい。
 だが、あの性格はすぐには直らないだろうな。
 あっ、でもを経験すればさしものシュヴァルツも改心するんじゃないか!?
 そうと決まれば、ハイランダー公爵にお願いしてみよう!
 僕は思いついたことを頭の中でまとめると、口を開く。

「ハイランダー公爵は今、おひまですか?」
「差し迫った公務はないな……ここ最近忙しかったが、ようやくいち段落ついてね。向こう一ヶ月ほどは落ち着いているよ」
「奥様もですか?」
「無論……だが、それがどうかしたのか」

 ハイランダー公爵は首をかしげた。
 僕はニヤリと笑って言う。

「実はご子息の性格を変えるのにうってつけな場所があるんです! 僕の故郷の村なんですけど……丁度近々魔猟祭まりょうさいというイベントがあり、それに参加すればご子息の考え方にも変化が表れるはず!」

 魔猟祭とは、カナイ村で毎年一週間ほどかけて行われる、魔物の狩猟祭のことだ。
 カナイ村では毎年決まった時期の一週間ほど、土地の魔素が一気に増大して魔物が増殖する。
 まぁ一種のスタンピードが起こるわけだ。
 村人達だけで増殖した魔物を全て倒すのは骨が折れるので、この時期が近づくと【黄昏の夜明け】の弟子達を中心に、村の外にいる実力者を呼び集めるのだ。
 まだ魔猟祭が始まるには少し時間があるが、魔物が少しずつ増え始めており、とー祖父ちゃん達は忙しそう。
 実力者と思しきハイランダー公爵に村に来てもらえれば、とても助かるんだよね。

「リュカ殿の故郷というと……カナイ村だよな? それに魔猟祭って……」

 ハイランダー公爵は、顔を青くしてそうこぼす。
 どうやら魔猟祭のことも知っているようだな。それなら話は早い。

「ご子息の曲がった根性も矯正きょうせいできますし、レベルも上げられて一石二鳥いっせきにちょうです。行きましょう!」

 ハイランダー公爵は口ごもる。

「いや、でも、私達はしばらく休息を……」
「美しい自然に綺麗きれいな空気、そして美味しい魔物達……観光には持ってこいですよ!」
「だが……ジェスター殿もお忙しいと思うし……」

 え切らないハイランダー公爵。
 まぁ気持ちは分かる。もしとー祖父ちゃんに会ったら絶対に修業させられるだろうし、魔猟祭に本格的に巻き込まれたら、休むどころではないからな。
 だが、僕はそろそろ旅に出てしまうから、代わりに腕の立つ人を少しでも村に呼んでおかねば。
 もし人手が足りなくなって、旅に出られない、なんてことになったら困るからね。
 僕は更に語気を強めて言う。

「ハイランダー公爵は、ガーライル侯爵をご存知ですよね?」
「あぁ、知っているが……」
「数ヶ月前に、ガーライル侯爵とその配下の騎士達が僕の村に修業しに来たのですが……全員すごく強くなって帰っていきました。きっとご子息も更に実力を付けられると思います!」

 そう言って僕はハイランダー公爵に詰め寄る。
 しかし、彼は首を縦には振ってくれない。

「その……妻にも聞いてみないといけないしな……」
「では、早速聞きに行きましょう。さぁさぁ!」

 僕はそう言って、ハイランダー公爵の背中を押して、公爵夫人の部屋に向かわせるのだった。


 訓練室を後にして十分後、僕とハイランダー公爵は、公爵夫人――オリビアさんの執務室を訪れていた。
 この部屋も、ハイランダー公爵の部屋と同じ構造になっている。
 僕はソファに座り、向かいにいるオリビアさんに頭を下げる。

「初めまして……リュカ・ハーサフェイと申します。突然押しかけてしまい、申し訳ございません」

 すると、オリビアさんは穏やかな笑みを浮かべる。

「ふふ、いいのよ。トリシャちゃんの息子さんが来てくれるって話は聞いていたし、私も会いたかったもの~」
「トリシャちゃん……? 母とお知り合いなんですか」

 オリビアさんは母さんとの関係を説明してくれた。
 なんでも、オリビアさんもカナイ村で修業していた時期があるらしく、そこで母さんと知り合ったらしい。
 オリビアさんがロイヤルナイツの副団長になれるほどの実力者だと考えると、納得できる話ではある。

「私とトリシャちゃんは同い年で、すぐに仲良くなったの~。ちなみに、リュカ君が生まれる時には私も立ち会ったのよ。双子だったのよね?」

 オリビアさんの言葉に僕は頷く。

「はい、妹はリッカといいます」
「そうそう、リッカちゃんね。懐かしいわぁ!」

 そう言って、楽しそうな表情になるオリビアさん。
 対照的に、ハイランダー公爵は冷や汗を流している。
 オリビアさん、カナイ村に行きたがりそうだしね。

「そういえば、シュヴァルツはどこにいるのかしら? 英雄の顔を見てくるって息まいていたけど……」

 オリビアさんは思いだしたかのようにそう言うと、周囲を見回した。
 僕は言葉を選びながら説明する。

「先ほどまで模擬戦をしていたのですが、力が入りすぎてしまい……怪我はないのですが、気絶させてしまいました。申し訳ありません」

 すると、オリビアさんは笑う。

「いいのよ~あの子は最近どんどん我儘になってきていたから。いい薬になるわ~」

 ……なるほど、オリビアさんもシュヴァルツの性格には思うところがあるのか……チャンスだな。

「それなら、ハイランダー公爵と奥様、そしてご子息でしばらくカナイ村に滞在されませんか? ご子息もあそこで修業すれば心身ともに強くなるはずです! それに近々魔猟祭がありますので、もしよろしければ力を貸していただけたら……と」

 僕がそう言うと、オリビアさんは手を叩く。

「カナイ村! いいわねぇ……久々に行きたいわぁ! トリシャちゃんにも会えるし……あっ、でも、ここからだとかなり遠いわよねぇ」
「心配ありません! 僕の転移魔法を使えば、今からでも行けますよ」

 すると、オリビアさんは「まぁ素敵!」と言って、ニコニコと笑った。
 その様子を見たハイランダー公爵は肩を落とした。
 とはいえその後、「まぁ、久しぶりにジェスター殿にお会い出来るなら……」と言っていたので、心の底から嫌というわけではないのだろう。
 そんなこんなで話はまとまった。
 カナイ村に行くための準備をしてもらい、また明日、ここに迎えにくることになったので、僕は屋敷を後にした。


    ◇   ◇   ◇   ◇


 翌日、僕は約束通り再びハイランダー公爵の屋敷を訪れた。
 昨日の夜、村に帰った時に、家族の皆には一通り話を伝えてあるし、宿も確保済みである。
 屋敷の前に行くと、ハイランダー公爵にオリビアさん、そしてシュヴァルツと、数人の執事が待っていた。
 シュヴァルツはこちらを一瞬にらんできたものの、すぐに視線を逸らす。
 まだ敵意を抱いているようだが、初めて会った時みたいに突っかかってはこない。
 多少は認めてもらえたのかもな。
 そんなことを考えつつ、僕はハイランダー公爵に声を掛ける。

「行くのはご家族の三人だけで良いんですか?」
「うむ! あとは頼んだぞ!」

 ハイランダー公爵が執事達を見てそう言うと、彼らはそろって頭を下げてくる。

「「「「「「いってらっしゃいませ、旦那様」」」」」」

 挨拶が終わったことを確認し、僕は唱える。

「では、転移・カナイ村!」

 一瞬で僕ら四人は荷物とともに、カナイ村に移動した。
 僕ら四人は家の前の庭へ。
 僕はまき割りをしているとー祖父ちゃんに声を掛ける。

「とー祖父ちゃん。昨日話していた通り、ハイランダー公爵達を連れてきたよ」

 とー祖父ちゃんはこちらを振り返ると、笑みを浮かべる。

「おぉ、シュナイダーにオリビアか! 久しいのう!」

 ハイランダー公爵とオリビアさんは頭を下げた。

「お久しぶりです、ジェスター殿!」
「ジェスター様、御無沙汰ごぶさたしております!」
「二人とも、元気そうで何よりじゃ。で、後ろの子は……」

 とー祖父ちゃんはそう言ってシュヴァルツを見た。
 ハイランダー公爵が口を開く。

「息子のシュヴァルツです」

 シュヴァルツは素直に頭を下げた。
 僕に会った時と同じように何かしら文句を言うかと思ったが、さすがに【黄昏の夜明け】の凄さは分かっているということか。
 僕はとー祖父ちゃんに言う。

「シュヴァルツに修業の手ほどきをしてほしいんだ。あと……ハイランダー公爵はどうしますか?」
「私は……」

 ハイランダー公爵が何か言う前に、とー祖父ちゃんが口を開いた。

「シュナイダーも久々に手合わせをするか? 腕がなまってないか確認してやろう!」

 その言葉を聞いたハイランダー公爵は苦笑いする。

「……お手やわらかにお願いします!」

 シュヴァルツとハイランダー公爵は武器を取りに庭の奥へ歩いていった。
 残された僕はオリビアさんを連れて、家の中に入る。
 すると母さんが、ハイランダー公爵夫人を見てけ寄ってきた。
 二人は抱き合い、互いに声を掛け合う。

「久しぶりね、トリシャちゃん!」
「本当にね、オリビアちゃん!」

 二人の再会に水を差すのは悪いと思い、僕は再度外に出る。
 すると、既にとー祖父ちゃんとハイランダー公爵、そしてシュヴァルツが剣で激しく打ち合っていた。
 おいおい、軽くだが衝撃波が発生するくらい本気でやらなくても……
 僕は巻き込まれたらまずいと思い、早々に家を離れる。
 行き先は、シンシアとクララのところだ。
 最近は二人の修業を見ていないし、様子が気になる。

「そういえば、リッカはどこにいるんだろ?」

 移動しながら索敵さくてき魔法で調べてみると、リッカは二人の近くにいることが分かった。
 二人を見に行けば会えそうだな。
 そう思いながら、僕は三人がいるであろう、街の外れに向かった。



 第二話 リッカへの復讐ふくしゅう(食事中の人が見ていたらごめんなさい!)


 街の外れに行くと、シンシアとクララが天鏡転写によって生み出された分身体――シャドウと戦っているのが見えた。
 僕はそれを近くで眺めているリッカに声を掛ける。

「二人はどんな感じ?」
「クララは順調だけど、シンシアは苦戦しているみたい」

 リッカの言葉を聞いて、僕は改めてじっくりと二人を眺める。
 二人は魔法の発動を助ける魔法じょう――ワンドを武器に、シャドウと戦っていた。
 ……なるほど、学園にいた頃と比べれば、二人とも恐ろしく成長しているけど、シャドウを倒すにはもう一歩足りないかもね。

「よし、少し休憩きゅうけいにしよう」

 僕はそう呟くと、シンシアとクララのシャドウを魔法で拘束する。
 すると二人は驚いたようにこちらを見た。
 どうやら戦いに夢中で、僕に気付かなかったらしい。
 僕は収納魔法にしまってあったレジャーシートや食べ物を取り出し、彼女達に手を振る。
 シンシアとクララは僕の意図を察したようで、駆け寄ってきた。
 四人でレジャーシートを敷いた地面に座り、取り出した軽食や飲み物を口にし始める。
 収納魔法は生物以外のものならなんでも、時を止めた状態で異空間に収納出来る魔法だ。
 容量の制限もほとんどないので非常に重宝ちょうほうしている。
 休憩しながら、僕は戦いを見て感じたことを二人に伝えていく。

「クララは追い詰められるとムキになって、攻撃魔法を乱発してしまう傾向があるね。ピンチの時ほど落ち着いて、弱体魔法を駆使くししてチャンスをうかがったほうがいい」

 僕の言葉を聞いたクララは、真剣な表情で頷く。

「なるほどね……追い詰められると急いで倒さなきゃって気持ちになっちゃうけど、確かにそっちの方がいいわね。魔力消費も抑えられるし」

 その返事を聞いて満足した僕は、次にシンシアを見る。

「そしてシンシアなんだけど……これを使って戦ってみてほしい」

 僕はそう言って、収納魔法から手製のレイピアを取り出し、シンシアに渡した。
 シンシアは武器を手に取り、言う。

「このレイピア……魔力を感じます」
「これはつばの部分に魔石を入れてあるから、ワンドの機能も持っているんだ。シンシアは魔力量が多くて魔法も上手いけど……杖で戦うのが苦手なんじゃないかって思ったから」

 どうやらシンシアにも思い当たるふしがあるみたいで――

「実は幼少から騎士の兄とよく剣の手合わせをしていたので、剣の方が扱いは慣れています。でも魔法学園で、剣よりも杖を使った方が良いと教わりまして」

 なるほど、まぁ魔術師を育てる学園ではそう指導するだろうな。
 でもシンシアは遠距離からの魔法戦よりも、接近戦をしながらサブで魔法を使う方が向いていそうだ。
 それから、三十分ほど掛けて僕はシンシアにレイピアの使い方を教えるのだった。


 三十分後、シンシアとクララが僕らから離れシャドウと向き合ったのを見て、拘束魔法を解く。
 再び戦闘が始まる。
 僕は改めて二人の戦いを眺める。
 ……クララもシンシアも、先ほどより戦い方が良くなったね。
 クララは魔法を無駄撃ちしなくなったし、余裕を持って立ち回れている。
 シンシアは予想以上にレイピアの扱いが上手く、敵に接近された時も慌てていないな。
 どうやらリッカも同じことを思ったようで、嬉しそうに頷きながら言う。

「クララの動きが良くなったのは当然凄いけど、シンシアがこんなに剣の扱いが上手いなんて驚いたよ」

 確かに、シンシアの剣術は想像以上に板についている。
 魔法学園にいた時には見ることはなかったけど、かなり訓練していたんだな。

「そういえば、今のシンシアとクララってレベルいくつなんだろう?」

 僕がふと呟くと、リッカが答えてくれる。

「学園にいた時はレベル13前後だったと思う。でも少し前にヘルクラブを倒せるようになったから、今は50くらいじゃないかな?」

 ……ってことは、シャドウを倒せれば、レベルは70~80台くらいにはなるか。
 それだけあれば、旅の同行を許してもいいかな。
 そんなことを思いながら、僕は戦いを眺め続けるのだった。


    ◇   ◇   ◇   ◇


 僕がアドバイスをしてから、クララは十四日後、シンシアは十六日後にシャドウを倒した。
 当初の想定よりも時間がかかってしまったが、これでようやく旅を再開出来る。
 旅に出る日も決まり、今はその前日の深夜だ。
 僕は一人、リッカの寝室にしのび込もうとしている。
 目的は仕返しだ。
 つい先ほどまで家族の皆やうちに滞在するハイランダー公爵一家、あとは村で修業をしていたガイアンも含めて、シンシアとクララが修業を終えたことを祝うパーティが行われていた。
 パーティは最初は平和に盛り上がっていたのだが……誰かが持ってきた酒をリッカ、シンシア、クララの三人が飲んだところから、僕にとって地獄の時間に変わったのだ。
 みんな十五歳以上なので成人にはなっているからお酒を飲んでも問題ないのだが、三人は泥酔でいすいして、僕に絡んでくるようになったのである。
 その中でも最悪だったのは、っぱらったリッカが性別を変えるメイク魔法を僕に放ち、体を女性のものに変えたことだろう。
 リッカは女性になった僕の服を脱がし、どこからか持ってきたセクシーなランジェリーや、露出の多いドレスを着せてきたのだ。
 ちなみに、止める者は誰もおらず、皆大笑いしていやがった。
 その時はシンシアとクララの祝いの場だったこともあり、死ぬ気で怒りを抑えていたが、やられっぱなしの僕ではない。
 リッカには僕が受けた以上の苦しみを味わってもらわなくちゃね。
 音を立てないようにリッカの寝室に入る。
 リッカはベッドの中で寝息を立てて眠っていた。
 あれだけお酒を飲んだんだ。しばらくは起きないよね。
 僕は周囲に防音用の結界を張り、更に眠っているリッカに拘束魔法をかけて動けなくする。
 これから始まるのはかー祖父ちゃんのブーツと、ダメージ十倍ポーションを使った悪戯いたずらだ。
 かー祖父ちゃんは、現役時代はトレジャーハンターとして活動しており、今でも頻繁ひんぱんに森で冒険したり、鍛錬したりしているのだが、足がとても臭い。
 そんなかー祖父ちゃんのブーツをこっそり借りてきたのだ。
 しかも今回持ってきたのは洗う直前のものである。
 一ヶ月は使い続けていたので、汗がたんまりとしみ込んでいるはずだ。
 僕は収納魔法を発動し、結界魔法で封じておいたブーツを取り出す。
 次にリッカに身体機能を上昇させる魔法を掛け、嗅覚きゅうかくを鋭くしてあげた。
 そして僕は防臭効果のあるマスクを着け、準備は万全ばんぜん
 結界を解いて……リッカの鼻と口をふさぐようにブーツを押し付ける。

「スースー……む? う……うぷぅ! うぇーーーー! おぇーーーー!」

 先ほどまで眠っていたリッカがジタバタと暴れだしたが、拘束魔法のせいで体はほとんど動かせない。
 今のリッカは犬以上の嗅覚を持っているはずなので、相当苦しいだろうな。
 普段僕はあまり怒らないようにしているが、そのせいでリッカが調子に乗ることが多々ある。
 今回のように行きすぎた時には、このような行為で仕返しをしているのだ。

「リュ……カぃ……? ゴボッゲボッ! ゴボボボボ!」

 リッカは、まるでおぼれているかのような声を上げ続ける。

「大丈夫だよリッカ、臭いで死ぬことはないから……はい、ポーション!」

 僕はそう言って一度ブーツを離すと、今度はリッカの口にポーションの入ったびんを押し当てる。
 わけもわからず、リッカはポーションを飲む。
 その様子を見て再度ブーツを顔に押し付ける。
 次の瞬間、リッカは獣のような声を上げ、先ほどよりも大きく暴れだす。
 よしよし、ちゃんと臭いの苦しみがダメージ扱いされ、十倍になったようだな。
 それからたっぷり三十分、僕はブーツをリッカの顔に押し付け続けた。
 リッカが気絶して、反応を示さなくなったところで、ブーツを離す。

「今回はこれで勘弁かんべんしてあげるよ!」

 僕はそう告げ、部屋を後にした。
 さすがにこれ以上やると、体に問題が出てくるかもしれないからね。


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