魔境育ちの全能冒険者は異世界で好き勝手生きる‼︎ 追い出したクセに戻ってこいだと?そんなの知るか‼︎

アノマロカリス

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3巻

3-3

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 翌朝、僕がリビングで料理していると、リッカ、シンシア、クララの三人が部屋に入ってくる。
 シンシアとクララは、二日酔いなのか頭を押さえている。
 そしてリッカは二人より遥かに顔色が悪い。
 とはいえ僕を見て何も言ってこないということは、昨日のことはよく覚えていないようだ。
 まぁ何か言われても、『夢でも見たんだろ』って誤魔化ごまかすつもりだったけど。

「そんな顔色じゃ午前中に出発するのは無理だろうね。二日酔いに効くキュアポーションをあげるから、それを飲んで休んでいな。出発は午後でも良いし」

 僕は何食わぬ顔でそう言うと、収納魔法から取り出したキュアポーションを三人に渡す。

「「「は~い……」」」

 三人は素直に返事して、部屋に戻っていった。
 ……まぁ結局午後になっても三人の体調は戻らず、その日は出発出来なかったんだけど。


    ◇   ◇   ◇   ◇


 シンシアとクララの祝いのパーティから二日後、ようやくリッカとシンシアとクララの体調が戻った。
 そのため、僕、ガイアン、リッカ、シンシア、クララ、それに僕の右手の紋章もんしょうにいるタイニードラゴンのシドラの五人と一匹で巡礼の旅を再開することに。
 とはいえ、これから目指す場所ではタイニードラゴンは珍しいから、騒ぎを避けるためにも基本的にシドラには紋章の中にいてもらうけどね。
 まず僕らは、ファークラウド大陸のはしにある街、サンデリアに転移した。
 ガイアンが周囲を見渡して言う。

「もうここはファークラウド大陸なのか。いつも思うんだが、転移魔法で移動すると別大陸に来た実感が湧かないな」

 その言葉に、シンシアとクララも頷いている。
 僕はもう慣れちゃったけど、彼女達にとって、転移魔法はあまり身近ではないだろうし、その感想も納得だ。

「まぁ手間が省けるんでいいけどよ。で、最終的な目的地はクラウディア王国だよな?」

 クラウディア王国はファークラウド大陸の中央にある国だ。
 ガイアンの言葉にリッカが頷く。

「うん。そっちの方角に穢れの反応があるよ!」

 そう言って、首に掛けたアミュレットを掲げるリッカ。
 彼女のアミュレットにはそれぞれの大陸かられた七つの宝石が取り付けられており、穢れに反応して光る。
 これをコンパス代わりにして、穢れた土地を探せるのだ。
 本当は穢れの反応があるクラウディア王国まで転移魔法で行ければ楽なんだけど、僕はクラウディア王国に行ったことがない。
 だから転移出来る場所でそこに一番近いサンデリアに来たというわけだ。
 ファークラウド大陸は大陸といいつつ島国が多いから、海の上の移動がメインになりそうだな。
 最初の目的地はここから歩いて一日ほどのところにある港だ。



 第三話 ある男との決着(まずはコイツです……)


 休憩を挟みつつ、僕らは一日半ほどかけて、サンデリアの港にたどり着いた。
 ここから船で移動し、クラウディア王国のマウロ港に向かうプランだ。
 僕らは港でぼんやりと船を眺めている。
 もうそろそろ僕らが乗る船が来るはずなのだが、中々来ないなぁ。
 別にそんなに急ぐわけではないから、いいんだけどさ。
 適当にぼんやりしていると、背後から声が聞こえてくる。

「おや? 貴方はガイアン殿ではありませんか? このようなところで会うなんて、奇遇ですね」
「ん?」

 僕らが振り向くと、そこにはどこかで見たことがある男が立っていた。
 彼は確かアイテム士の……アイテム士の……ダメだ! 名前が思い出せない。
 とっさに隣を見るが、ガイアンもいまいちピンと来ていないようだった。
 ガイアンは微妙な顔で男を見る。

「お前は……確かアイテム士の……」
「そうです、ドゥグですよ。まさかこのような場所でお会いするとは思いませんでした」

 あ、そうだ、ドゥグだ!
 僕の後釜あとがまとして【烈火の羽ばたき】に入った男が、そんな名前だったはず。
 既に【烈火の羽ばたき】は解散しているのだが、今更こいつと再会するなんて。
 そんなことを思っていると、ドゥグは僕達をジロジロと見て言う。

「こちらの方々がガイアン殿のパーティメンバーのようですが……まさか役立たずの荷物持ちをやとっているとはね」

 荷物持ちとは僕のことを言っているのだろう。
 その言葉を聞いたガイアンが、怒気をはらんだ声で答える。

「何が言いたいんだ?」
「いえね、自分を貴方のパーティに入れてほしいのですよ」

 ガイアンが呆れたように僕を見てきたので、小さく首を横に振る。
 するとガイアンは小さく頷き、口を開く。

「残念だが、お前を入れる理由がない。他所よそのパーティを探してくれ!」

 これ以上絡まれたくないので、僕らは移動しようとする。
 だが、ドゥグは慌てて僕らの前に回り込んできた。

「ちょ……ちょっと! 待ってください。彼のような役立たずより、自分の方が遥かに優秀ですよ。ガイアン殿、そこの役立たずを外して自分を雇って下さい!」

 そう言って、ドゥグは僕とガイアンを交互に見た。
 僕とガイアンは揃って溜息を吐く。

「「はぁ……」」

 コイツ……新聞を読んでないんだろうか?

「リュカを役立たずと言うがな……ドゥグよ、レベルは幾つだ?」

 ガイアンが呆れたように尋ねると、ドゥグは胸を張って答える。

「自分は58になりましたよ。ザッシュに解雇されてから必死に鍛えてましてね」
「うん、話にならん。他を当たれ!」
「それは、どういう……」

 ドゥグは心底わけが分からないという様子だ。
 ゆっくり息を吐いてガイアンは言う。

「お前は三つ勘違いしている。まず一つ目、このパーティを作ったのは俺ではなく、リュカだということ。二つ目、リュカは俺よりよっぽど強いということ。更に三つ目、お前のレベルはこのパーティの誰よりも低いということ。そんな奴が入っても足手まといにしかならない。それが雇えない理由だ。だから他を当たれ」
「そんな、馬鹿な! ならばそこの役立たずのサポーターよ! 自分と勝負しろ!」

 ドゥグは僕を指差した。
 シュヴァルツの時も思ったが、傲慢な性格の奴はどうしてこうすぐに勝負を挑んでくるんだ。
 ぶっちゃけ、もうき飽きしているんだが。
 僕は心底めんどくさいと思いながら言う。

「断る。時間の無駄だから」
「おやおや、臆したのですか?」

 挑発の仕方までシュヴァルツと同じかよ。
 すると今度はガイアンが口を開く。

「ドゥグよ、リュカに勝負を挑むというが、お前新聞は読んでいるか?」
「新聞ですか? もちろん読んでいますよ。大事な情報源ですからね。それがどうかしましたか?」
「なら、ここ最近のビッグニュースを言ってみろ」
「……そうですね、ここ最近といえば、第四の魔王、デスゲイザーが倒されたことですかね」

 その言葉を聞いたガイアンが、呆れたように言う。

「倒した者の名前は分かるか?」
「リュカ・ハーサフェイですよね? それが何か?」

 ドゥグの言葉を聞いたガイアンは僕を指差した……が、ドゥグは首を傾げながら言う。

「そのサポーターがどうかしたのですか?」
「コイツが、リュカ・ハーサフェイだ」
「ふっ、ご冗談を。そんなわけがない! リュカという名前が同じなだけでしょう」

 どうやらコイツは僕のフルネームを知らないようだ。
 まぁ、直接絡んだことはほとんどないけどさ……
 僕はやれやれと思いながら、ドゥグにギルドカードを見せた。
 だがドゥグはそれでも納得しない。

「貴方がSランクですって? 冗談はおよしなさい! そのギルドカードは捏造ねつぞうしたものでしょう!」

 その言葉を聞いた僕は思わず呟く。

「頭が痛くなってきた……コイツの中で、僕はどれだけ弱いんだろう?」
「リュカ兄ぃ……もう勝負を受けてあげればいいんじゃない」

 ここまで黙っていたリッカがそう口にする。
 その顔には呆れと苛立ちが浮かんでいた。
 シンシアとクララも同じような顔をしている。
 ……まぁ、僕もそろそろムカついてきていたし、いいか。

「……分かった。やろう」

 僕がそう言うとドゥグは笑みを浮かべ、剣を抜く。

「自分はアイテム士ですが、ソードスキルを扱う剣士でもあるのです。この魔剣アルマヒルザで貴方を――」

 ドゥグが言い終えるより先に僕は剣を抜き、彼の魔剣の刀身を粉々に砕いた。
 柄のみになった己の魔剣を見つめながら、ドゥグは信じられないという顔をする。

「そんな馬鹿な……自分の魔剣が……」
「まぁ、僕の剣も魔剣だからね」

 僕がそう言うと、ドゥグは震えながら叫ぶ。

うそを言いなさい! 貴方程度が魔剣なんて……って、そのデザイン……まさか……伝説の剣、アトランティカ……」

 僕の手にある剣を見たドゥグは信じられないといった様子で呟いた。
 ドゥグの言う通り、僕の剣はかつて世界を救った英雄ダン・スーガーが持っていたとされる、魔剣アトランティカだ。
 アイテム士だから、剣にも詳しいんだな。

「もうこれでいいだろう?」

 僕が言うと、ドゥグは震えながら声を張り上げる。

「い、いえ! まだです! その分不相応ぶんふそうおうな剣を持っていたから自分に勝てたのですね! アトランティカがなければ、貴方などが自分に勝てるわけがない!」

 ダメだ。もう言葉もない。
 ここまで実力の差を見せつけられたのに、まだ自分の方が強いと思っているのか……
 僕は剣をしまい、呟く。

「もう面倒くさいから……」
「おや、図星を指されて降参ですか? それならその剣を敗者のあかしとして自分に渡していただきま――」
「[奈落]!」

 ドゥグが最後まで言う前に、僕は[奈落]を使い、ドゥグを小さい黒い玉に閉じ込める。
[奈落]はやみ牢獄ろうごくを作り出す魔法だ。
 ちなみに[奈落]内の経過時間と、現実世界での経過時間のバランスは調整でき、現実世界での一日を、[奈落]内の百年にまで設定できる。
 しかも球体内では現実時間分しか年を取らないので老化することもない。

「[奈落]か……今回は何日に設定するんだ?」

 ガイアンの問いに答える。

「こっちで一年経ったら出られるようにするよ。ただ……こっちでの一日を、[奈落]の中では百年に設定する」
「え? ちょっと待て! すると?」
「[奈落]の中で三万六千五百年間過ごすことになるね」
「さすがにそれは……」

 心配そうなガイアンを無視して、僕は球体を近くの海に放り込んだ。
 すると、[奈落]の玉はどんどん沈んでいく。

「さすがにやりすぎじゃあ……」

 そう言ったガイアンに僕は満面の笑みで言う。

「ふふ、冗談だよ! 球体の内部時間で一年、現実世界で一日で出られるようになってる。まぁ海の中で解除されるから……解除された瞬間は驚くだろうね」
「おいおい、大丈夫なのか?」
「まぁ、この辺りは水深も深くないし、さっきあいつ、レベル58って言っていたから大丈夫でしょ」

 レベルが58もあれば、海の中で目覚めたって、生きて岸まで上がることくらいはなんとか出来るはずだ。
 そんな話をしていると、ようやく僕らが乗る船がやってきた。
 僕はスッキリした気持ちで船に乗り込み、クラウディア王国へ向かった。



 第四話 激闘げきとう! リュカvsザッシュ!(ついに出会ってしまった因縁いんねんの二人……)


 サンデリア港を出て三日、僕らはクラウディア王国の港、マウロ港にたどり着いた。
 僕らは船から降りて、穢れた地へ向かうことに。
 リッカ曰く、『ここから歩いて二時間ちょっと経ったところに穢れがありそう』とのこと。
 僕らはアミュレットの反応に従って歩きだす。
 そして二時間ほどが経ち、たどり着いたのは、人気ひとけのない森の前だった。

「この奥に穢れがあるんだよね」

 僕がそう聞くと、リッカが頷く。
 意を決して森の中へ進もうとした――その時だった。
 茂みの奥から、足音が聞こえてくる。
 そして姿を現したのは、だった。
 僕は思わず息を呑む。

「お前は……ザッシュ!?」
「リュカ……!? おいおい、こんなところで会うなんてなぁー! リュカよぉ!」

 そこにいたのは【烈火の羽ばたき】時代に僕を散々こき使い、挙句にパーティから追放した男、ザッシュだった。
 なぜこいつがこんなところにいるんだ!?
 今ザッシュは別のパーティで聖女候補の護衛をしているはず……
 そう思っていると、ザッシュの後ろから、狼獣人おおかみじゅうじん猫獣人ねこじゅうじんとドワーフ、そしてリッカと同じアミュレットを首に着けた人間が現れる。
 やはり、こいつのパーティも穢れを浄化しに来たらしい。いや、でもアミュレットが指し示す場所は、他の候補とは被らないはず。どういうことだ?
 混乱の最中、奥の茂みから更にもう一人現れた。
 そこにいた人物を見て、僕は思わず声を上げる。

「君は……シオン!?」

 現れたのは、バストゥーグレシア大陸で薬草採取を行っている時に出会った少年――シオンだった。

「リュカ……さん!?」

 シオンも僕を見て、驚いているようだ。
 僕は思わずシオンに問いかける。

「どうして君がザッシュなんかと?」

 シオンとはそこまで長い時間一緒にいたわけではない。だがとても優しくて、気が合う人だと感じたのを覚えている。
 そんなシオンが、まさかあのザッシュと一緒にいるなんて……

「おいおい、何余所見してんだよ! リュカ!」

 ザッシュはシオンと話すのを遮るように僕の前におどり出る。

「ザッシュ……なんでそんなに突っかかってくるんだよ……」

 僕が苛立ちながら口を開くと、ザッシュはあおるように言う。

「おいおい、ザッシュさんだろ。荷物係がよぉ」
「はいはい、なんですか? ザッシュちゃん?」
「あぁ!?」

 僕も煽り返すと、ザッシュは睨んできた。
 ……やっぱりこの男が絡むとろくなことがないな。
 いつもみたいに適当に怒らせて、すきを見て退散しよう……そう思っていたが、その前にザッシュは彼のパーティメンバーに叫ぶ。

「おい、お前らはリュカの仲間をやれ!」
「えっ、で、でも……」

 聖女候補のアミュレットを首に掛けた女性が躊躇ためらいながらそう言うが、ザッシュは聞く耳を持たない。

「いいから行けぇ!」

 その言葉を合図に、狼獣人はガイアンに、猫獣人はリッカに、聖女候補とドワーフはシンシアとクララにそれぞれ向かっていく。
 くそ、転移で逃げられないよう分断しようって腹か!
 ザッシュの仲間達の魔力を見るに、皆が負けることは万が一にもないだろうけど、個人的なゴタゴタに巻き込んでしまったことは申し訳ないや。
 そんなふうに思っていると、さやにしまった魔剣アトランティカが念話で話しかけてくる。

相棒あいぼう、あの男からただならぬ気配がする! 気を付けろよ》

 聖剣や魔剣などの特別な武器は、使い込んで心を通わせれば、会話出来るようになるのだ。
 また、一つでも聖剣や魔剣の声を聞くことが出来る者は、他の剣の声も聞けるようになる。
 僕は頷き、剣を抜いて油断なく構える。

《そうだね……ザッシュから邪悪なオーラがき出しているのが分かるよ》

 アトランティカの言う通り、今のザッシュはこれまでとは少し違うようだ。
 先ほどこっそり相手の力やスキルを知る[鑑定]スキルを使ってみたのだが、ザッシュの情報は得られなかった。
[鑑定]はレベルの近い相手には効果を発揮しない。
 つまり、どうやったかは知らないが、今のザッシュは僕と同じくらい強くなっているのだろう。
 更に、その身に纏う魔力も、これまでとは比べ物にならないほど大きい。
 そんなことを考えていると、ザッシュも剣を鞘から抜き、斬り掛かってきた。
 僕はアトランティカでザッシュの剣を受け止める。
 その瞬間、体から力が徐々に抜けていく。
 アトランティカが叫ぶ。

《まずいぞ相棒! 奴の剣は魔剣ブラドノーヴァだ! 打ち合うのは極力避けるんだ!》

 僕はアトランティカの指示に従い、ザッシュから距離を取る。
 そして[ソニックブレスト]を連続で放つ。
 しかしそれらは易々やすやすぎ払われてしまう。

《ブラドノーヴァってどんな武器なの?》

 僕は[ソニックブレスト]を放ち続けながら、アトランティカに尋ねる。

《ブラドノーヴァは上位の魔剣で、魔力を喰らうという性質を持つ》

 なるほど、先ほど力が抜けたのは魔力を吸われていたからか。
[ソニックブレスト]も魔力を飛ばす技だから、あんなに簡単に薙ぎ払われてしまったんだな。
 じゃあ、属性のある魔法ならどうだ!
 今度は火属性魔法を使い火球を生み出し、ザッシュに向けて放つ。
 ザッシュは迫りくる火球目掛けて剣を振るう。
 すると火球は割れ、更に炎の一部が刀身に吸収されていく。
 ……直接触れても魔力を吸われるし、遠距離魔法も吸収されてしまう、と。
 中々厄介だな。
 ザッシュは一瞬で距離を詰め、再び斬りかかってくる。
 僕は奴の剣に触れないよう攻撃を躱すが……攻め手がない!
 くそ、この状況を打開するには……そうだ!
 僕は転移魔法でザッシュから少し離れたところに移動する。
 そしてアトランティカに光属性の魔法を纏わせた。
 すると、アトランティカが声を掛けてくる。

《光魔法を刀身に纏わせたわけか。ブラドノーヴァの力を無力化出来る確証はないが、試す価値はあるな》

 魔剣の多くは魔の力を宿しているが、光属性はそれを中和する性質を持つのだ。

《そう言ってもらえて良かったよ。ちなみに、アトランティカも魔剣だけど、光魔法を纏わせても大丈夫だよね?》
《無論、オレは邪悪な力を宿しているわけではないからな!》
《それは良かった!》

 今度は僕から斬り掛かる。
 ザッシュの魔剣とアトランティカが触れるが、今度は力が抜けないぞ。
 よし、これならいける!
 僕は剣による連撃を仕掛ける。
 ザッシュはなんとかさばいているが、押しているのは僕の方。
 少しずつザッシュの体に傷が刻まれていく。
 ザッシュは怒りを孕んだ声で言う。

「なぜだ!? なぜ急にリュカの攻撃が勢いを増した!?」
「それは簡単だよ、ザッシュより僕の方が遥かに強いからだ!」
「なんだと!? さっきまで逃げ回っていたくせに!」
「ザッシュの持つ魔剣の特性を警戒していただけだ。対処法さえ分かれば楽勝さ!」

 それからしばらく打ち合いが続いたのだが――突如、ザッシュの体が光を纏う。
 急にザッシュの力が強くなったのを感じる。

「これはなんだ……まさか魔剣と同調し始めたとか?」

 僕の声にアトランティカが反応する。

《違う! 奴は支援魔法をかけられている!》
「支援魔法?」

 僕は、ザッシュの背後に視線をる。
 するとそこにはザッシュに支援魔法を掛けるシオンの姿があった。
 そうか、そういえばここにはシオンもいるんだった。
 シオンとは過去に少しだけ一緒に戦ったことがあるが、彼の魔法の腕は間違いなく一流だった。

「ザッシュよりシオンの方が厄介だな!」

 僕が思わずそう叫ぶと、ザッシュが吠える。

「なんだと!? 俺がシオンより劣るとでも言いたいのか!?」

 苛立ちのあまり、ザッシュの剣技が大振りで隙の多いものばかりになる。
 ……すぐに頭に血が上る性格は変わっていないな。
 それなら!

「ザッシュなんてシオンに支援魔法を掛けてもらわなきゃただの雑魚ざこなんだよ。まさか一人で僕に勝てると本気で思っていたのか?」

 僕は目いっぱい馬鹿にした口調で、そう言った。
 するとザッシュは案の定、顔を真っ赤にする。

「なんだと、リュカの癖に! おいシオン! 俺は良いから他の奴らのサポートをしろ! こんな奴、俺一人で十分だ」
「で、でも……」

 ザッシュは逡巡しゅんじゅんするシオンを怒鳴りつける。

「俺が負けるはずがないだろう! さっさと行け!」

 その言葉を聞いたシオンは心配そうな顔をしながらも、この場から離れた。
 僕はニヤリと笑う。
 よし、これでやりやすくなるぞ!
 もっともシオンを野放しにはしたくないから、さっさとコイツを倒さなきゃだけどな。
   
   
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