幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く！

第一章

第五話 慟哭の森（樹海の様な感じがします。）

　僕達は、森に足を踏み入れてから静かにゆっくりと歩いていた。
　なぜなら、この慟哭の森という場所は…？
　日の光を木々で遮られて薄暗く、辺りから獣の叫び声が度々聞こえてくるからだ。
　陣形は…僕と翔也が先頭を行き、賢斗と華奈が中衛、飛鳥が後衛と後方警戒だった。
　僕は小声で翔也に話しかけた。

　「魔王の配下というのは、この先に居るの？」
　「地図の地点を見る限りでは、もう少し先に行った場所らしい…というか、慱は良くそんなに落ち着いていられるな？」
　「野犬の事件以降、僕には恐怖心が欠落しているみたいでね…怖いと思う事が無いんだ。」
　「それは…頼もしいな。」

　翔也だけに限らず、皆は獣の声や大きな音がするだけでビクッとしていた。
　まぁ、いくら強力なジョブを入手していても…初めての実戦でこんな場所に来れば、普通はこんな反応になる。
　僕は慎重に辺りを警戒した。

　「皆、前方から何か…」
　「前方から数が5匹、軽い音からして軽量な魔物だと思うよ！」

　翔也が言おうとする言葉を遮り、僕が皆に警告した。
　前方から血肉を好む、5匹の屍犬が現れた。
　僕は剣を抜いて言った。

　「翔也、飛鳥…やるぞ！」
　「あぁ…わ…わかって…いる…」
　「ボクも…いま…」

　２人を見ると、剣の柄に手を掛けているが、抜く事は出来ずにカタカタと震えていた。
　僕は剣を構えて、屍犬に斬り込んでいった。
　先頭に走って来た2匹の首を落とし、後の2匹の胴をぶった斬り…最後の1匹を眉間に突き刺して、屍犬を倒した。
　刀身の血を払ってから鞘にしまうと、４人は安堵していた。
　これでは、どちらが勇者で…どちらが無能なのかわからなかった。
　僕は溜め息を吐くと、５人は再び目的地を目指して歩いた。

　その後も何度か魔物に襲われたが、初見と違い…翔也と飛鳥の動きも良くて敵を討伐して行った。
　ただその時、僕の剣の刀身にヒビが入っていたのは気付いてなかった。
　更に歩き進んで行くと、地図に記されていた地点が見えて来たが、魔王の配下の魔物の姿は見当たらなった。

　「魔王の配下の魔物という位だから、厄介な奴なんだろうけど…？」
　「賢斗のサーチでも無いのよね？　私の敵対心索敵にも反応がないよ？」
　「２人の反応に無いとすると、余程隠れるのが上手いのか…？　此処には居ないかだ…！」
　
　この場所に何かいるのは間違いない！
　何故なら、この場所で魔物は襲って来ないからだ。
　魔物もこの場所がボスや主の縄張りという事が感じているからだ。

　「慱、済まないが…先を見て来てくれないか？　こっちは警戒しておくから…」
　「あぁ、良いよ！」

　僕はそう言って振り返ろうとした時に、翔也が飛鳥に杖の様な物を渡しているのが目に見えた。
　僕は気にもせずに、ボスの場所を調べてから何もない事を確認すると、皆の元に戻って来た。
　そこで、賢斗と華奈が心配そうに駆け寄ろうとして来たその時！
　飛鳥は賢斗の頭に…翔也は華奈の頭に杖を発動して、２人は倒れる様に地面にうつ伏せになって気を失っていた。

　「翔也！　飛鳥！　何の真似だ！？」
　「何の真似…かぁ！　こういう事だよ‼︎」

　翔也は笑みを浮かべながら、腰から杖の様な物を取り出して僕に発動した！
　僕は体中に鉄の輪っかの様な物で拘束されて、指以外が動かせずにいた。
　必死にもがこうと足掻いてみるが、拘束は強すぎて動けなかった。

　そして…僕は絶望的な状況に陥るのだった。