幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?

アノマロカリス

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第二章 エルヴ族での生活の章

第三話 ダンが追い出された後の幼馴染達(こんな事になっていたんだ?)

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 今回は、ダンが城から出て行った後のしばらく経ってからのストーリーです。
 
 ~~~~~翔也の回~~~~~
 
 慱が城から旅立って2日経った。
 慱が旅立った翌日に俺達は国民達の前に出て、異なる世界からの救世主召喚が成功したと発表された。
 そして俺は、【魔王】を倒す【勇者】として公表された。
 国民達は一斉に沸き立ち、俺達は歓迎された。
 国王からの指示で俺は笑顔を作って答えてくれと頼まれたが、正直笑顔になっていたのかあまり覚えてない。
 その後は国を挙げてのパーティーが行われ、俺達は王宮で貴族から話を振られて答えていた。
 だが、悪いがそんな気分にはなれない。
 
 俺はこの世界で【勇者】と判明した時は、正直嬉しかった。
 だが、そう思う反面【勇者】として本当に相応しいと思うのは慱の方だった。
 7年前に慱の言いつけを守らずに廃工場に行き、皆を危険に晒してしまった。
 でもそんな時に助けに来てくれた慱が俺には【勇者】に思えた。
 野犬共の群れに立ち向かった勇気は、俺にはない…。
 今では、【勇者】という肩書が重い。
 俺が力に溺れて魔獣を甘く見ていたのを慱は注意してくれた。
 だが、あの時の俺とは違うという所を慱に見せたくて暴走してしまった。
 その不甲斐なさの所為で、慱は追放を選んだ。
 俺がもっとしっかりしていれば…いや、もうやめよう。
 嘆いてたって、慱が帰ってくるわけではない。
 
 翌日…
 俺は騎士団員に頭を下げて、1から【勇者】の力を使わずに稽古をつけて貰った。
 【勇者】の能力に頼っていては成長が望めないと思ったからだ。
 能力に頼らないで稽古をすると、自分の弱さが良く解る。
 だが、弱音を吐いている暇はない!
 慱は1人で外の危険な世界で頑張っているんだ!!

 「待ってろよ、慱…【魔王】を倒して一緒に元の世界に帰ろうぜ!!」

 ちなみに、同時刻のダンはというと…?
 ウサギ相手にデカ包丁を振り回して、ミスが連発していた。


 ~~~~~~華奈の回~~~~~

 華奈は部屋の中で枕を抱きしめて悶えていた。
 慱にキスをするなんて…自分の行動が信じられなかった。
 本当は「気を付けてね」とか「頑張ってね」と言おうとしたのに…
 
 5歳の時に私は初めて慱に会った。
 私の両親が慱の両親と自治会の会合で何度か会っていた。
 その時、両親に連れられて行った場所で慱に出会ったんだ。
 慱はその時、すっごく分厚い本を読んでいた。
 本のタイトルは正直よく覚えてないけど、確か題名が英語で書かれた。  
 
 慱は凄く頭の良い子だった。
 私達と遊ぶ時以外は、いつも近くの図書館で本を読んでいた。
 小学校に入る少し前に、慱は図書館の本を全て読み終えていた。
 英語もドイツ語もフランス語も慱は喋れた。
 特に誰かから習ったという訳でもなく、本を読んでいたら身についていたって言ってた。

 小学校に入って少しした頃に、慱は家に教科書を忘れてしまった。
 先生にこの本の物語を最後まで読んでくださいと言われて、隣にいた私が教科書を見せようとしたけど、大丈夫だよと言われ、慱は本も見ずに物語の内容を暗唱した。
 この頃から慱は、天才少年とか神童と呼ばれるようになった。

 小学2年生の時、私と慱は縁日の祭りに行った。
 その時、翔也と賢斗は夏風邪で来れなくて、飛鳥は両親が祭りの関係者だったので二人っきりのデートだった。
 色々な出店を慱と2人で回った。
 射的で大きな赤い宝石の指輪を見ていた。
 慱が「欲しいの?じゃあ取ってあげるよ!」といって景品を落とすと、その指輪を私の薬指にはめてくれた。
 「この意味わかっているの?」と聞いたら、慱は私の手を取って甲にキスをして、「これが答えだよ」と言って笑ってた。
 
 小学3年生の時、慱の両親と瑠香ちゃんが交通事故で亡くなった。
 私は慱が心配だったが、声を掛けれずにいた。
 その3か月後、あの事件が起きた。
 慱は野犬の群れと戦って大怪我をした。
 その後はしばらく慱は目を覚まさなかった。
 私は毎日毎日お祈りをした。
 2か月半くらいしてから、私はみんなを待たずに慱に会いに行った。
 そして、久しぶりに慱に会えたんだけど…それは私の知っている慱ではなかった。
 明らかに慱の姿をしている別の何かだった。

 「ねぇ…、あなたは誰なの?」
 
 慱は、「皆には内緒だよ。」といって真実を話してくれた。 
 私の知っている慱はもういなかった。
 それから召喚されるまでの間、一緒に過ごしていく内に今の慱も好きになっていた。
 出来たら昔の慱にも会いたい。
 私は聖女の力を使って、慱に祈りを捧げた。
 【魔王】を倒すまで無事でいてね。


 ~~~~~賢斗の回~~~~~
 
 やっぱり慱は凄かった。
 僕はいつまでも慱には敵いそうもない。
 幼い頃から慱には何をやっても勝てなかった。
 それは小学校に入った時も一緒だった。
 テストも僕はいつも慱の次で2位だった。
 1年生の時、教科書を忘れたにも関わらず国語の物語を本を見ずに暗唱していた。
 僕には絶対に出来ない事だった。
 中学2年になった時、試験問題でどうしても解らない問題があった。
 慱が来ると、問題を読んでから一瞬で解いて見せた。
 中学に入った時は僕はすでに首位をキープしていたのに。
 慱は中間くらいの成績なのに…。
 僕は本気を出さない慱を恨んでいた。

 異世界召喚で僕が【賢者】になり、慱が【器用貧乏】というジョブを手に入れたときに、初めて勝てたと思った。
 ところが慱は魔法を誰よりも早く使い、さらに合成魔法というのも使っていた。
 僕も真似をしてみたが、いくら試しても出来なかった。
 慱の天才的なところは、小さい時から変わらない。
 魔獣との戦いの時も自分の力に溺れて、慱の意見を無視した。
 慱は適切な戦法を提示してくれていたのに、僕は慱より優れた所を見せつける為に功を焦ったのだ。
 あの魔獣との敗戦後、僕は初期魔法から見直した。
 そして魔法を使いこなしていく内に、いつの間にか慱の魔法の威力を越えていた。
 それを慱に話すと、「やっぱり賢斗はすごいな!」といって褒めてくれた。
 正直、褒められても嬉しくはなかった。

 慱が城から追放される時、決意をした。
 慢心せず、謙虚に行こうと。
 次に慱に会う時は、僕達が【魔王】を倒した時だと。
 そして目標を決めた時に初めて合成魔法に成功した。

 
 ~~~~~飛鳥の回~~~~~
 
 ボクが初めて道場で稽古するようになったのは4歳の頃…
 この紅蓮院流古武芸道場ぐれんいんりゅうこぶげいどうじょうは、元々はとある武家に仕えていた忍びの一族だった。
 時代が移り変わるにつれ、忍びは廃れていき…今では精神を鍛える為の道場だ。
 毎年100人近くの門下生が入るが、修業がきつ過ぎて翌年になる頃には2,3人しか残ってない。
 祖父がここの師範で、修業は本当にきつかった。
 ボクは慱達と遊ぶ時以外は道場で過ごした。
 
 小学校に上がり、修業は本格的に厳しくなった。
 ありとあらゆる武器の使いこなす為に必死だった。
 結局、使えるようになったのは、剣術と弓術だった。
 ボクはその個性だけ伸ばす事にした。

 小学3年生のあの事件の時、ボクは木刀の小太刀を持って行った。
 いまの筋力ならこれが一番使いやすいと思ったからだ。
 でも、実際に野犬の群れに襲われた時は、怖くて華奈と一緒に泣いて見ているだけだった。
 慱が助けに来てくれた時、ボクは穴から見ていた。
 野犬に噛まれても必死に立ち向かう姿に、ボクは憧れを持っていた。
 けど、慱も多勢に無勢で野犬に襲われて血だらけになっていた。
 それを助けたのが祖父とお兄ちゃんと兄弟子達だった。
 
 慱が長期の入院で会えなくなった後に、ボクは祖父に頼み込んだ。
 慱の様に強くなるにはどうしたら良いですか?と聞いたけど、祖父は一生無理だといってボクを突き放した。
 それからのボクは、努力を惜しまなかった。
 慱に追いつく為に努力を重ねた。
 その甲斐があって、小学5年生で剣道大会で全国優勝をした。
 弓道も優勝した。
 だけど祖父は認めてはくれたけど、あの頃の慱君には遠く及ばないと言われた。

 中学に上がり、より一層努力をした。
 すると、祖父が剣術と弓術の奥義書を見せてくれた。
 理解は出来たけど、実践するにはまだ不可能だった。
 
 そして異世界召喚が行われてボクは、【剣聖】を手に入れた。
 体中にみなぎる力を感じ、奥義書の技も使いこなせる様になっていた。
 だけど、魔獣との戦いでは全く歯が立たなかった。
 大きすぎる力は驕りを生む…祖父の言葉だった。
 そしてボクは、今一度基本に返り技を確認した。

 「紅蓮院流剣術…壱の太刀・紅刃!」

 刀身に炎を纏った刃が鎧を切り裂いた。
 鎧を見たら、剣より先に溶けている個所があった。
 ボク達の不甲斐なさで慱に迷惑を掛けただけじゃなく、慱を追い出してしまったボク達の力の無さを呪った。
 慱、次に会う時までボクはもっと強くなるよ!
 あの頃の慱の様に!!


 余談…テルシア王国・国王陛下のその後

 最近、メイドや騎士達から風当たりが何故か悪い。
 余の判断は間違ってなかったよな?…多分…。
 娘に話しかけても素っ気ない。
 余はどこで間違えたのだ!?
 やはり、ダン殿を追放したのはまずかったのか?
 ショウヤ殿が【魔王】を倒したその時には、余はダン殿に土下座してでも許しを請おう。
 それまでの間、この状態が続くのか…。
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