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第五章 動き出す…?

第九話 反省会(ダンはいません)

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 皆はカイナンに街に戻って、冒険者ギルドで食事をしながら反省会を行った。

 「今回の戦闘訓練はどう感じた? 僕的には色々反省点が見付けられたけど…」
 「俺は指摘されるまで気付かなかったが、槍の性能にまだ甘えていたらしい。」
 「ダンは本当に酷いのよ! 私やレイリアさんの体に剣を刺すだけじゃなく、レイリアさんを斬ったんだから!」
 「なるほど、そういう事か…」

 翔也は溜息を附いた。
 ダンの言っていた言葉の意味をこの時になって理解した。

 「悪いが華奈、レイリアが斬られた…それがどうかしたのか?」
 「ガイウスさんは自分の妹が怪我させられたのに怒りは無いのですか?」
 「無い訳ではないが、クリスから話を聞く限りでは、あの場合は対抗策が無いレイリアが悪い…」
 「そんな…なら、ダンがやった事を誰も責めないんですか? そんなのはおかしいです!」
 「華奈やめろ! ダンのやった事は正しいよ。」
 「あぁ、俺もそう思う。」

 華奈は、ガイウスや翔也や賢斗の言っている事が理解出来なかった。
 
 「あちきも仲間を信じられずに攻撃を辞めてしまったにゃ! あの時は本来なら敵に突っ込んで行かなければならない筈だったのに、それを躊躇ってしまったにゃ…」
 「クリスが悪い訳ではない、俺も同じ立場だったら攻撃の手を止めていたかもしれない。」
 「それが普通じゃないんですか?」

 華奈は至極当たり前の様に話したつもりだが、2人の顔を見るとそういう訳ではないらしい…
  
 「ダンが初めに言ったよね? 殺す気で掛かって来いって…」
 「華奈には解らないかもしれないけど、ダンはな…俺達の弱点を把握させる為にあえて悪役を演じていたんだ。」
 「でもそれだけの事の為に、仲間や友達に剣で刺したりする?」
 「華奈、少し黙ってて…」
 「どうしてよ、翔也!」

 翔也は華奈の態度を見て、戦闘訓練の意味を理解していない事に気付いた。
 甘やかしているつもりは無かったと思っていたけど、これではダンが言っている事がもっともらしいと思った。
 
 「私と飛鳥さんは師匠の声を聴いて構えたけど、フェイクでクリス姉様に化けた師匠を最後の方まで気付かなかったです。」
 「ボクは、ダンじゃないと思って油断してしまった所に突かれたね。 もっと気配に気を配っていたら気付ていたかもしれないのに…」
 「では、皆それぞれの課題が見付かったみたいなので、話を進めるよ!」
 「ちょっと待ってよ! ダンの事は何もお咎めは無いの?」
 「何故…ダンが咎められなければならないんだ?」
 「何故って…ガイウスさん、妹のレイリアさんが刺されているんだよ?」
 「だからその話は、対抗策が無かったレイリアが悪いという事で話は済んだだろう?」
 「華奈さん、今回の件は私の納得しているのです。 そうダンを責めないであげて。」
 
 賢斗と翔也は顔を合わせると、同時に溜息を附いた。
 賢斗と翔也は華奈に言った。

 「華奈さぁ、今日の戦闘訓練を何か誤解してないか?」
 「ダンが企画した戦闘訓練を、友達同士の仲良し鬼ごっこだとでも思っていたのか?」
 「翔也は悔しくないの⁉」
 「確かに初めの内は腹が立った事は認めるさ。 だがなぁ、ダンの伝えたい事は理解しているつもりだよ。」
 「なんでそんな事が言えるのよ! ダンは友達に一線を越えた行動をしたのよ‼」
 「はぁ…やっぱり思った通りだ。 華奈は今日の訓練を誤解しているね…」

 仕方ないな、とりあえず華奈には黙っていて貰って話を進めよう。
 
 「華奈、話が進まないから少し黙っていて。 ダンはこの戦闘訓練を定期的に行うと言っていたので、各自弱点や修正点を見付けてそこを鍛える様にしよう。 僕は冷静さを見詰め直すとしよう。」
 「俺は槍の性能に甘えずに振るう事に意識を向けよう! 姉弟子、もう1度教えをお願い出来ないか?」
 「わかりましたガイウスさん、私も見つめ直さないといけない点がありますので、一緒にやりましょう!」
 「俺は勇者の能力を見詰め直さないとだな、怒りで我を忘れる何て冷静な判断が出来なくなるからな…」
 《勇者の能力を使いこなせる迄、私が厳し指摘します。》
 「私は接近された場合の対抗策を考えないとだね。 魔法を放つのではなく…?」
 「それには力になれるかもしれません、レイリアさん一緒にやりましょう。 師匠直伝の方法を教え致します!」
 「あちきは心を鍛える事にするにゃ!」
 「華奈はどうする?」
 「違うだろ賢斗、華奈はどうしたい?」
 「私は…」

 皆は何故ダンのした事を咎めないのかが解らない。 
 私達は大事な幼馴染であり、仲間でもある。
 皆は納得していても、私には全く理解出来ない。

 「私は少し1人で考えてみたいの。 しばらくはパーティから離脱するね。」
 「そうか…」
 「わかった、好きにすると良い…」
 「華奈さん…」

 華奈は冒険者ギルドを出て宿屋に向かった。
 そして個室を借りてしばらく考える事に専念した。
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