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第六話

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 私は父親の…あ、もう父親とは思ってないわね、あんな選択肢を与えられたのだから。
 あの男の発言に呆れていた。
 そして母親もヴィシュランティス男爵の声を聞きつけて来ていた。

 「さぁ、どうするんだセレナ‼」
 「第三の選択肢、私が貴方達を葬って金輪際の関係を断つ…という選択肢もありますよ。」
 「何を馬鹿な事を言っているのだ‼ 貴様に俺達を倒せる力があると思っているのか‼」
 「そうよ、思い上がるんじゃないわよ‼」
 「家に居た頃は私達に逆らう事なんて一切出来なかった癖に‼」

 あぁ…本当に似た者親子ね。
 良かったわ、私はこの家族と性格が似なくて…
 それにしても、いつの頃の話をしているのかしら?
 聖女に選ばれてからの私の事は一切知らないし、会いにすら来なかったから何をしていたかも知らないのでしょうね。
 基本的にこの家族は私のしていた事に興味を持たない筈だし。
 確かに家で暮らしていた頃は一切逆らえない様に躾けられていたけど、今はもうどう考えても私の方が強いし。
 この家族を全員ボッコボコにぶっ飛ばしたい所だけど、どうしようかな?

 「何を黙っている! さっさと決断をしろ‼」
 「そんな物、嫌に決まっているでしょ! そんな事も解らないなんて頭おかしいの?」
 「な、なんだと⁉」
 「だって、どっちを選んだところで私に不利な条件でしかないし、そんな物を素直に選ぶと本気で思っているの?」

 私は左手から5m位の業火球を出現させながら、右手にはフォルティーナを抜いていた。

 「貴方達に選択肢を上げるわ。 この火球で消滅するか、剣で斬り殺されるか…さもなくばとっととこの場から逃げ出すかをね。」

 本当はただで逃がすという選択肢を与えたくはないけど、これ以上この家族には関わりたくないという恩情を与えたんだけど?

 「貴様は家族に対して牙を向くというのか⁉」
 「貴方は私に対してあんな選択肢を与えた癖に、今更家族の面して話を持ちだすのもどうかと思うけど?」
 「妹の癖に生意気よ‼」
 「碌に姉らしい事もしなかった癖に、今更何を言っているのよ‼」

 私がまだ家に居た頃は、両親には奴隷の様に扱われていた。
 そしてこの姉には、何でもかんでも奪われていた。
 私の持っていた物を何でも奪って行く。
 祖父母から貰ったアクセサリーも、友達から貰った綺麗な石も…気に入った物は何でも奪って行った。
 返してほしくて言ったとしても、両親は常に姉の味方をしていた。
 そんな姉だけを贔屓にして行ったせいか、姉は自分がお姫様か何かと勘違いをする様になっていた。
 なので私が聖女に認定された時は、聖女自体は興味が無かったので問題は無かったけど…王子と結婚するという話になると騒ぎ出した事があった。

 「何でこいつが王子様の妃になるのよ! それは姉である私の方が相応しいのに‼」

 準男爵の娘で碌に何もして来なかった癖に高望みした夢を見るなよ。
 貴族を笠に私からだけじゃなく、平民からも奪い取って行ってヴィシュランティス家の品位を落とし入れた癖に。
 まぁ、もう昔に話だから別に良いけど…それにしてもこの家族にはこの業火球が見えていないのかな?
 私は面倒になって、業火球を家族の元に放り投げた。
 業火球は家族に到達する前に弾け、家族達は爆炎を纏った風に吹き飛ばされたのだった。

 「貴様! 俺たちを殺す気か‼︎」
 「王国に引き渡されるか、身を捧げて奴隷の様にコキ使われるか…なんて選択肢を与えた時点で殺す以外に何があるというのよ!」
 「貴様は家族に対して…」
 「は? 家族? 私が家にいた時は、父は邪魔だと言って蹴飛ばしたり、母は目付きが気に入らなからと鞭で顔を叩いたり、姉は私から全てを奪っておいて…どの口が家族とかほざくの?」
 「ぐぅ……!」

 私が受けた虐待はこれだけでは終わらない。
 言い出したらキリがないくらいに虐待を受けていたからね。

 「貴様は今一度俺の怖さを教えてやった方が良いだろう‼︎」
 「別に貴方なんか怖くもないけど?」

 ヴィシュランティス男爵は私の元に来て凄んだ顔を見せた。
 確かに家にいた頃にはこの顔をされたら萎縮していたけど、それは遠い昔の話。
 数多くの魔物や魔獣と戦って来た私にとっては、今更この男が凄んで来ても小物が威嚇している程度にしか思えない。
 実力差がハッキリしているのに、この男にはそれが分かっていないみたいで、この男は私に対して拳を振り上げて来た。
 まぁ、殴ろうとしてくるくらいなんだから、やられる覚悟もあるのよね?
 この男の背後では、母と姉が良い気になってこの男に応援をしていた…のが腹立って、この男の拳を躱してから顔面に一撃を喰らわした。
 父親は吹っ飛んでいくとすぐに立ち上がって私に言った。

 「貴様! この俺に何をしやがる‼︎」
 「貴方は馬鹿なの? 攻撃して来たら反撃するに決まっているじゃん! それとも、黙って殴られるとでも思った訳?」
 「貴様は俺に逆らうことは出来なかったはずだ‼︎」
 「何年前の話をしているのよ? 私は聖女に選ばれてから王宮で優雅な暮らしをしていたとでも思っていた訳? 聖女に選ばれてから王宮で過ごしては来たけど、王子妃になる為の勉強や魔法や武術の鍛錬、更には戦場での実践経験をして来たのよ。 そんな私に貴方程度の小物が勝てる訳がないでしょう‼︎」

 私はそう言い放つと、母と姉は何を考えているのか私に向かって来た。
 相変わらずこの親子は人の話を聞かない…いえ、聞く気がないみたいね?
 私は母親の顔面を思いっきり殴りつけてから、姉の顔にも殴って地面に叩き付けた。
 そして姉に馬乗りになってから何度も何度も顔を殴っていった。

 「もうやめてセレナ!」
 「やだ!」

 私は容赦無く姉の顔を殴っていた。
 姉は言えば辞めてくれると思っていたみたいだった。

 「どうして辞めないのよ⁉︎」
 「私が辞めてと言った時に素直に辞めた事があったっけ? 私がそう言った時に、生意気とか面白がってどんどん酷くなって行ったよね? それで今は立場が逆転して同じ目に遭っていて私が辞めると思う?」
 
 昔にやられた事を思い出して憎しみが増した所為か、私は姉の顔を歓喜な声を上げて容赦なく殴っていった。
 姉の顔はどんどん腫れ上がり、歯も数本折れていた。

 「セレナやめなさい! 貴方はどうして姉にそこまで酷い事を…」
 「五月蝿い黙れ! 次はお前らの番なんだから黙って見ていろ‼︎」

 私は何度も姉の顔を殴っていたら、姉はいつの間にか気を失っていて漏らしていた。
 私は立ち上がってから、今度は母親の顔に蹴りを入れてから倒れたと同時に馬乗りになってから殴って行った。
 両手の拳は姉と母親の返り血でべったりと付いていて、その拳で殴られていた母親の顔も血まみれだった。

 「貴様は何故実の家族にそこまでの仕打ちが出来るんだ⁉︎」
 「そんな事も分からないの? 私に対して来た仕打ちがこの程度じゃ済まないからよ‼︎」
 「や…辞めろ! お前にはもう関わらないから辞めてくれ‼︎」
 
 私は気が付くと、母親も気を失っていて垂れ流していた。
 そして私は父親の顔を見るとニヤリと笑って見せた。

 「次は…覚悟出来てる?」
 「まさか…?」
 「貴方の暴力が一番酷かったからね…」

 私は指を鳴らしながら近付いて行くと、この男は青褪めた表情をしていた。

 「や…辞めろ! 辞めろ~~~‼︎」
 「い・や・よ!」

 私は父親の顔も容赦無く殴り付けた。
 気が付いた頃には、父親の顔は原型が留めてないくらいになっていた。

 「あ~~~~スッキリした!」

 私は3人の潰れた顔を見ながらそう言った。
 後はこの3人の処遇だけど…どうしようかな?
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