異世界転移の特典はとんでも無いチートの能力だった。俺はこの能力を極力抑えて使わないと、魔王認定されかねん!

アノマロカリス

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第二章 自分勝手な聖女編

第二十六話 予行練習…?

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 俺達3人は王都コーネリアに着いた。

 王都コーネリアでは国王から城内に魔王は無害と通達されている筈だったのだが、頭では分かっていても心の中では納得できないと感じていた者達は俺達に向かって槍を構えていた。

 アヴェルユージェンは俺の前に出て来てから、槍を構えている騎士や兵士達に向かって頭を下げた。

 弁解する訳でも無く、かといって言い訳する訳でも無く…ただひたすら頭を下げていた。

 それを見ていたミンフィーリアもアヴェルユージェンの横に立ってから同様に頭を下げた。

 魔王という立場ではこれが当たり前の事である為に、旅先でも他国に向かえば同様にこの様な扱いをされるだろう。

 さすがにここ迄されたら騎士や兵士は槍を下げるしかなかった。

 勿論納得している者はいないだろうが、無抵抗の相手に槍を向けるという行為は騎士道に反すると感じたのだろう。

 俺は騎士に命じて場内には居る許可を貰うと、3人で城内に入って玉座の間に案内された。

 『異世界人ヒカル殿、魔王アヴェルユージェン様、奥方のミンフィーリア様入られます!』

 騎士がそう言って玉座の間の扉が開いた。

 俺を先頭に中に入って行くと、当然歓迎されてる訳ではなく…第一王子のアレンや騎士達はアヴェルユージェンの事を睨みつけていた。

 こればかりは仕方ないと思っていたが、襲い掛かろうとする者はいなかった。

 「ヒカル殿と…」

 「こちらは…紹介しなくても分かるよな? 魔王アヴェルユージェンと奥さんのミンフィーリアだ。」

 アヴェルユージェンとミンフィーリアは国王の前で跪いて頭を下げていた。

 「このように抵抗する意志は無いんだ、今迄の遺恨を考えれば殺気を放つのは分からなくは無いが…とりあえず収めてやってくれ。」

 俺がそう言うと、アレンや騎士達は目を閉じて頷いた。

 「ヒカル殿は彼等の住む魔族領に赴いたのであろう?」

 「あぁ、魔族領の状況を考えると侵攻した理由が分かった。 魔族領は不毛の大地で、作物は育たずに貧困な生活を送っている者達ばかりだった。」

 「なら豊かさを求めて侵攻するという事も解らなくは無いな。」

 するとアヴェルユージェンが手を挙げた。

 「国王陛下、私からも発言をしても構いませんか?」

 「良い、話してみよ。」

 「感謝致します。 我が領地は確かに不毛の大地で作物がロクに育たずに飢餓する者達もいました。 ですが侵攻した目的はそれだけではありません。」

 「そうなのか?」

 てっきり俺は飢饉による飢餓がそもそもの発端だと思っていた。

 ところがアヴェルユージェンの話では…?

 「伝承の時代の魔王様は世界を征服する為に動いておりましたが…伝承の異世界人により討たれました。 その時の魔王様も発端は同じ理由でしたが、それから数百年後に誕生した魔王様が今迄の考えを捨てて歩み寄ろうと考えて各国に使者を送り込みました。」

 「その時でもやはり飢餓はあったんだろう?」

 「ヒカル殿も見てわかる通り、魔族領は決して恵まれた土地という訳ではありませんでしたからね。 それで何とか暴力による侵攻ではなく交渉による物で解決を図ろうとしました。」

 「だが、上手く行かなかった…のか?」

 「全てが…という訳にはいかなかったですが、賛同してくれた国もありました。 龍人族・獣人族・ドワーフ族は過去の蟠りを捨てて有効的な関係を築けました。 勿論すぐにという訳ではなく、ある程度の年数が掛かりましたが…」

 「その話は聞いた事があるな、今から数百年前に行った事例があると。」

 「ところが閉鎖的な考えを持つエルフ族や過去の蟠りを持つ人間族は否定的でした。 それでも我々の祖先は何度も我慢強く交渉しましたが…」

 「ふむ。」

 「それから我等の祖先は魔族達を各国の国に送り込んで生活を始める事をしました。 初めは迫害を受けましたが、それでも日数を掛けて関係を築く事が出来ました。」

 「解らないな、それが何故侵攻する事になった?」

 「世界の各地ではスタンピードという現象が起きると聞きました。」

 「確かにマナの暴走により魔物や魔獣が大量発生をして人々を襲い始めるという事があるが?」

 「それらの原因が我等魔族という所為にされて、多くの罪なき同胞達が人間族や他の国の者達に殺されました。 確かに我等魔族は魔物や魔獣に近い生態をしておりますが、魔物や魔獣とは全くの別物です。 そしてかろうじて生き残った者達も奴隷にされて酷い扱いを受け、その悲痛な声は我等の魔族領にまで届いて来ました。」

 「なるほど、それで魔族側が立ち上がったという訳か。」

 「このままでは魔族領以外の多くの同胞達が迫害されて命を落とす事になりますからね。」

 さすがの国王もこの話は知らなかったみたいでショックを受けている様だった。

 そして他の王族達も騎士達も寡黙になっていた。

 「くっだらねぇな! これならどっちが悪だか分かったもんじゃねぇな!」

 「確かに今の話では間違いなく我等に非があるのは明白だな。」

 魔族には魔族の理由があって事を起こした事が解った。

 「それならアヴェルユージェンは何故侵攻を止めたんだ?」

 「ヒカル殿が幹部や最高幹部を討伐した事により、我々の大半の戦力が失った事ですよ。 こんな状態では遺恨は残りますが諦めざる負えないのです。」

 なるほど、侵攻が止まったのは俺が原因か。
 
 理由を知る前なら当然の行為だと思ったが、理由を知った後だと悪い事をしたと思ってしまった。

 「事情を知る前は魔王や魔族は悪だと聞かされていてな。」

 「過去の魔王様が行った事を考えればそれも当然でしょう。 それについては気にしていませんし、そろそろ侵攻も止めようと思っていましたので。」

 「それなら各国で魔物や魔獣が人々を襲っているという話は?」

 「魔族領の魔物や魔獣には一切の手を出す事を止めておりますが、他の大陸の魔物や魔獣は知りません。 そもそも魔族領の魔物や魔獣と大陸に棲息している魔物や魔獣とは全く生態が異なりますので。」

 「なら自然界の魔物…という感じなのか?」

 「そうなりますね、他の大陸の魔物や魔獣は私にも制御は出来ませんので。」

 全ての魔物や魔獣が魔王に従っている訳ではないのか。

 この事実を知ったら今後どうなるのだろうか?

 「…とはいえ、我等が侵攻し多大なる迷惑をしたのは事実ですのでこれからヒカル殿と一緒に各国を回って…」

 「国王、今の話を他の国王達にどう説明するんだ?」

 「うむ…しばし待ってはくれないか?」

 その数日後…各国の王による王国連合により、世界に向けて発表される事になった。

 勿論、全ての者達が納得する訳ではなかった。

 俺達は国王が世界に向けて発表が済む迄の間は城に留まった。

 これで…俺達の旅も少しはマシな物になるだろう。

 それなら無理してアレナを同行させる必要もなくなる…と思っていたが、アレナとミンフィーリアが意気投合してしまって同行せざる負えなくなってしまった。

 まぁ…良いか。
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