異銀河クロニクル

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現れるE16の個性たち

フェアレディという偶像

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「エマニュエルさん、すみません。私もう、研究所を辞めますね」
アテネ高等研究所に勤めていたフレアという男性は突然エマニュエルにそう言い放った。
「…分かった。別に引き留めはしない。だが、私の愛とでもいうべきか、その先の道はおそらく想像以上に厳しいだろう。それをよく肝に銘じておけ。ここでの経験が何らかの役に立つことを祈る」

人以上に神経質なフレアはこの選択に対して一定の迷いはあったが、安定的な利益を計上している現在を考えればあながち間違いではないと思ったのだ。

「分かります。このことは、僕自身の問題でしょう。だけど許してください」

「…早くいけ」

ギガポリス周辺は、巨大な雨雲におおわれてた。黒々としたビルの中に我が地であると主張するかのようにそびえる摩天楼はあたかも権威の亡霊のごとく霞んでいる。

「アルファケイン」
アルファケインは、そのころ知人のボブとテスラ区を歩いていた。
「何してるんだ、早くこいよ!フェアレディがくるんだぞ?」

「おう!」

フェアレディ…最初にその名を聞いて観たときはあまりの魅力に感心した。しかし、今は素直にそれを受け入れられなかった。いったいなぜなのか。

「なんだかつまらない顔してんな?なんだよ早く行こうぜ!」

「左様…!行こう!」

つまらない顔…確かに最近誰に対してもそうなってしまうところがある。なぜなんだろうか…
フェアレディが凱旋したのはテスラ区だった。

テスラ区は、古き良き伝統のある街で、世界の元皇帝の末裔などが訪れたりしている。赤い屋根に、レンガ造りの建築物が立ち並ぶその姿を上空から見ればまさに壮観である。だが、この町にはアウトローが跋扈しており、その残骸をあちらこちらで見かける。

「テスラ区のどこだっけっかな…」

ボブはどうやらフェアレディの出現場所がどこなのかを探しているようだった。

「あそこだろ!」

アルファが指さしたところにはやや人影が見えた。
「あれか…行くぞ!」

ボブは全力でかけていく。しかしアルファはそこで、アウトローの残骸を目にした。遺骨だった。

「アルファ?早くいくぞ!」

灯里とは学校が終わった後少しの会話を楽しんで、別れた。そのあとにボブと出くわしたわけだ。その間にも、何やらギガポリスで事件が起きたらしく、相変わらずの混迷を極めている。

テクノロジーの進歩を受け入れ喜ぶもの。つまらなそうに、自分事だと思い行動するもの、テクノロジーを忌み嫌うもの。その三者が、ここの区には入り混じるように過ごしている。フェアレディは直訳すれば公平な娘であるが、人びとがこの名前に熱狂しているのか、それとも彼女の容姿に熱狂しているのかは分からない。

そして、ここに集まる彼らは熱狂しているもの、そして熱心になっているもの、様々だった。

「凄い…観ろよアルファ!フェアレディ…あれが…初めてみる」
ボブはすっかり、彼女のとりこになっている。

「な、なぁボブ…お前、今日あとどのくらいこれ見てくんだ?」

「どういうこと?何言ってんだ?終わるまでだろ?」
ボブは、当然だろうという顔で一瞬こちらを見て、再びフェアレディに目をやった。

「じゃあ俺そろそろ帰ってるわ!」

「何?!おい!アルファ!」

ボブが引き留めようとはしたが、その時すでに足が動いていた。
「クッソ…なんだかおかしいと思うんだ…なんで…こんなに…」

テスラ区の中を、アルファはひた走った。あたりにはところどころにカラスの骸が散らかっている。誰も掃除しないのだろうか。

「遠いな」

と、そこへ知った顔が現れた。

「アルファ君!」

スクールの専務のアリサという女性だった。
「専務?」
普段から呼び名は専務だった。
「どうしたの?急に走ってなんかきて?」
「いいや、専務…さん…なにしてんるんですか?」

「あなたもあれ見てたんじゃないの?」
「フェアレディのことですか?」

「フェアレディ。1年に一回だけしか見れないから…」
「僕も見てました…なんか…結構改めてみるといいですね…では!」

そういってその場から早々と立ち去った。
「アルファ君?」

おーい、というように、手を振りながら呼んでいる専務の姿を想像しながら自宅へと全力で帰っていった。
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