4 / 15
現れるE16の個性たち
フェアレディという偶像
しおりを挟む
「エマニュエルさん、すみません。私もう、研究所を辞めますね」
アテネ高等研究所に勤めていたフレアという男性は突然エマニュエルにそう言い放った。
「…分かった。別に引き留めはしない。だが、私の愛とでもいうべきか、その先の道はおそらく想像以上に厳しいだろう。それをよく肝に銘じておけ。ここでの経験が何らかの役に立つことを祈る」
人以上に神経質なフレアはこの選択に対して一定の迷いはあったが、安定的な利益を計上している現在を考えればあながち間違いではないと思ったのだ。
「分かります。このことは、僕自身の問題でしょう。だけど許してください」
「…早くいけ」
ギガポリス周辺は、巨大な雨雲におおわれてた。黒々としたビルの中に我が地であると主張するかのようにそびえる摩天楼はあたかも権威の亡霊のごとく霞んでいる。
「アルファケイン」
アルファケインは、そのころ知人のボブとテスラ区を歩いていた。
「何してるんだ、早くこいよ!フェアレディがくるんだぞ?」
「おう!」
フェアレディ…最初にその名を聞いて観たときはあまりの魅力に感心した。しかし、今は素直にそれを受け入れられなかった。いったいなぜなのか。
「なんだかつまらない顔してんな?なんだよ早く行こうぜ!」
「左様…!行こう!」
つまらない顔…確かに最近誰に対してもそうなってしまうところがある。なぜなんだろうか…
フェアレディが凱旋したのはテスラ区だった。
テスラ区は、古き良き伝統のある街で、世界の元皇帝の末裔などが訪れたりしている。赤い屋根に、レンガ造りの建築物が立ち並ぶその姿を上空から見ればまさに壮観である。だが、この町にはアウトローが跋扈しており、その残骸をあちらこちらで見かける。
「テスラ区のどこだっけっかな…」
ボブはどうやらフェアレディの出現場所がどこなのかを探しているようだった。
「あそこだろ!」
アルファが指さしたところにはやや人影が見えた。
「あれか…行くぞ!」
ボブは全力でかけていく。しかしアルファはそこで、アウトローの残骸を目にした。遺骨だった。
「アルファ?早くいくぞ!」
灯里とは学校が終わった後少しの会話を楽しんで、別れた。そのあとにボブと出くわしたわけだ。その間にも、何やらギガポリスで事件が起きたらしく、相変わらずの混迷を極めている。
テクノロジーの進歩を受け入れ喜ぶもの。つまらなそうに、自分事だと思い行動するもの、テクノロジーを忌み嫌うもの。その三者が、ここの区には入り混じるように過ごしている。フェアレディは直訳すれば公平な娘であるが、人びとがこの名前に熱狂しているのか、それとも彼女の容姿に熱狂しているのかは分からない。
そして、ここに集まる彼らは熱狂しているもの、そして熱心になっているもの、様々だった。
「凄い…観ろよアルファ!フェアレディ…あれが…初めてみる」
ボブはすっかり、彼女のとりこになっている。
「な、なぁボブ…お前、今日あとどのくらいこれ見てくんだ?」
「どういうこと?何言ってんだ?終わるまでだろ?」
ボブは、当然だろうという顔で一瞬こちらを見て、再びフェアレディに目をやった。
「じゃあ俺そろそろ帰ってるわ!」
「何?!おい!アルファ!」
ボブが引き留めようとはしたが、その時すでに足が動いていた。
「クッソ…なんだかおかしいと思うんだ…なんで…こんなに…」
テスラ区の中を、アルファはひた走った。あたりにはところどころにカラスの骸が散らかっている。誰も掃除しないのだろうか。
「遠いな」
と、そこへ知った顔が現れた。
「アルファ君!」
スクールの専務のアリサという女性だった。
「専務?」
普段から呼び名は専務だった。
「どうしたの?急に走ってなんかきて?」
「いいや、専務…さん…なにしてんるんですか?」
「あなたもあれ見てたんじゃないの?」
「フェアレディのことですか?」
「フェアレディ。1年に一回だけしか見れないから…」
「僕も見てました…なんか…結構改めてみるといいですね…では!」
そういってその場から早々と立ち去った。
「アルファ君?」
おーい、というように、手を振りながら呼んでいる専務の姿を想像しながら自宅へと全力で帰っていった。
アテネ高等研究所に勤めていたフレアという男性は突然エマニュエルにそう言い放った。
「…分かった。別に引き留めはしない。だが、私の愛とでもいうべきか、その先の道はおそらく想像以上に厳しいだろう。それをよく肝に銘じておけ。ここでの経験が何らかの役に立つことを祈る」
人以上に神経質なフレアはこの選択に対して一定の迷いはあったが、安定的な利益を計上している現在を考えればあながち間違いではないと思ったのだ。
「分かります。このことは、僕自身の問題でしょう。だけど許してください」
「…早くいけ」
ギガポリス周辺は、巨大な雨雲におおわれてた。黒々としたビルの中に我が地であると主張するかのようにそびえる摩天楼はあたかも権威の亡霊のごとく霞んでいる。
「アルファケイン」
アルファケインは、そのころ知人のボブとテスラ区を歩いていた。
「何してるんだ、早くこいよ!フェアレディがくるんだぞ?」
「おう!」
フェアレディ…最初にその名を聞いて観たときはあまりの魅力に感心した。しかし、今は素直にそれを受け入れられなかった。いったいなぜなのか。
「なんだかつまらない顔してんな?なんだよ早く行こうぜ!」
「左様…!行こう!」
つまらない顔…確かに最近誰に対してもそうなってしまうところがある。なぜなんだろうか…
フェアレディが凱旋したのはテスラ区だった。
テスラ区は、古き良き伝統のある街で、世界の元皇帝の末裔などが訪れたりしている。赤い屋根に、レンガ造りの建築物が立ち並ぶその姿を上空から見ればまさに壮観である。だが、この町にはアウトローが跋扈しており、その残骸をあちらこちらで見かける。
「テスラ区のどこだっけっかな…」
ボブはどうやらフェアレディの出現場所がどこなのかを探しているようだった。
「あそこだろ!」
アルファが指さしたところにはやや人影が見えた。
「あれか…行くぞ!」
ボブは全力でかけていく。しかしアルファはそこで、アウトローの残骸を目にした。遺骨だった。
「アルファ?早くいくぞ!」
灯里とは学校が終わった後少しの会話を楽しんで、別れた。そのあとにボブと出くわしたわけだ。その間にも、何やらギガポリスで事件が起きたらしく、相変わらずの混迷を極めている。
テクノロジーの進歩を受け入れ喜ぶもの。つまらなそうに、自分事だと思い行動するもの、テクノロジーを忌み嫌うもの。その三者が、ここの区には入り混じるように過ごしている。フェアレディは直訳すれば公平な娘であるが、人びとがこの名前に熱狂しているのか、それとも彼女の容姿に熱狂しているのかは分からない。
そして、ここに集まる彼らは熱狂しているもの、そして熱心になっているもの、様々だった。
「凄い…観ろよアルファ!フェアレディ…あれが…初めてみる」
ボブはすっかり、彼女のとりこになっている。
「な、なぁボブ…お前、今日あとどのくらいこれ見てくんだ?」
「どういうこと?何言ってんだ?終わるまでだろ?」
ボブは、当然だろうという顔で一瞬こちらを見て、再びフェアレディに目をやった。
「じゃあ俺そろそろ帰ってるわ!」
「何?!おい!アルファ!」
ボブが引き留めようとはしたが、その時すでに足が動いていた。
「クッソ…なんだかおかしいと思うんだ…なんで…こんなに…」
テスラ区の中を、アルファはひた走った。あたりにはところどころにカラスの骸が散らかっている。誰も掃除しないのだろうか。
「遠いな」
と、そこへ知った顔が現れた。
「アルファ君!」
スクールの専務のアリサという女性だった。
「専務?」
普段から呼び名は専務だった。
「どうしたの?急に走ってなんかきて?」
「いいや、専務…さん…なにしてんるんですか?」
「あなたもあれ見てたんじゃないの?」
「フェアレディのことですか?」
「フェアレディ。1年に一回だけしか見れないから…」
「僕も見てました…なんか…結構改めてみるといいですね…では!」
そういってその場から早々と立ち去った。
「アルファ君?」
おーい、というように、手を振りながら呼んでいる専務の姿を想像しながら自宅へと全力で帰っていった。
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる