第10回漫画大賞終了

第10回漫画大賞

選考概要

アルファポリス漫画大賞としては過去最高となる526作品の応募があった今回、編集部内で大賞候補作としたのは、「龍と龍殺しの巫女」「紅月に吠える」「河童と仙人と」「お兄~ト狐」「美しき者」「異界バーで皆ママに怒られたい」「男子高校生ゴブリンを飼う」「黎明のワルツ」「【人外×青年】テューリンゲン博士と愛しのリリー」「きび様といっしょ」「あやしもの」「鋼兵の整備士」「おかえりインファンツ」「魔法少女(仮)マホツカ!」「冴えて懐か」「正義の味方と侵略者」「FLYAWAY!」「猫と居候」「コンビニで逢いましょう」の19作品。

どの候補作もキラリと光る魅力を秘めてはいるが、最終選考会議においては「大賞」にふさわしい作品としてはやや物足りないという意見が多く、大賞は「該当作なし」という結論に至った。

続く各賞の選考において、評価が特に高かった「龍と龍殺しの巫女」「紅月に吠える」に優秀賞(賞金15万円)を設け授与。「河童と仙人と」「お兄~ト狐」「美しき者」の3作を、今後の飛躍に期待を込めて特別賞(賞金10万円)に選出した。

「龍と龍殺しの巫女」は、人間の少女と龍が繰り広げる異種間交流ファンタジー。キャラクターが特に魅力的で、龍を殺す密命を帯びて嫁入りしてきた少女と、彼女にベタ惚れの龍の奇妙な夫婦生活の続きが気になる、という声が相次いだ。

「紅月に吠える」は、禁術を使って人の命を奪い、あやかしを退治してきた旧家の少女と、千年の封印から目覚めた「陰陽師の裏切り者」と呼ばれる男の出会いから始まる現代和風バトルファンタジー。安定した画力に裏打ちされたダイナミックな画面作りが高く評価された。

「河童と仙人と」は、作者の個性が光る佳作。人里離れた山奥でスローライフを送る老人と河童が愛嬌あふれる姿で描かれており、独自の画風とあいまって、完成度の高さを感じさせてくれた。

「お兄~ト狐」は、泣いている小さな女の子を助けた縁で、不思議な狐の恩返しをされる女子高生を描いたハートフルファンタジー。起承転結がしっかりとしている作品で、華のある画風も将来性が感じられた。

「美しき者」は、領主である伯爵の命令で、美貌の女性が皆殺しにされる街を舞台に、伯爵に背いた2人の男の生き様を描いたファンタジー作品。スタイリッシュな画風と構成力を支持する編集部員が多かった。

また、大賞候補作ながら惜しくも受賞を逃した14作品も、それぞれに個性や魅力を持った良作が揃っていた。

「異界バーで皆ママに怒られたい」は、バーという舞台の特性に理解が及ばない世代には魅力が伝わりづらい作品だが、アイディアの独創性とキャラクターのインパクトは群を抜いていた。

「男子高校生ゴブリンを飼う」は、ペットの“ゴブりん”の挙動が可愛らしい日常系コメディ。読者が入り込みやすい世界観説明が追加されると、ゴブりんの魅力がより際立ってくるだろう。

「黎明のワルツ」は、ストーリーの完成度が高く、良質のエンタテインメントの要素を備えている。それだけに、原稿がラフ画の状態で掲載されているのが非常にもったいなく感じられた。

「【人外×青年】テューリンゲン博士と愛しのリリー」は、異種族間コミュニケーションのすれ違いをコミカルに描いており、博士の溺愛ぶりとリリーのツンデレな反応が微笑ましい。このままではワンパターンに陥るので、両者の関係をどのように変えていくのかが課題だろう。

「きび様といっしょ」は、神狐のきび様の弟子となった見習い子狐たちの奮闘をほのぼのと描いた日常ファンタジー。キャラクター設定やギャグは、やや幼年向けながら非常に面白く、ストーリーもしっかりと作られていた。子狐たちの外見が、普段の目つき以外に大差がなく、ビジュアル面で個性を生かしきれていないのが少し残念だった。

「あやしもの」は、人間社会にさりげなく溶け込みながら長い時を生き続けるあやかしたちのオムニバスストーリー。高い画力を駆使して、明治時代から現代まで、さまざまな時代背景をごく自然に描ききっている。構成力も非常に優秀な半面、読者にわかりやすく読ませることよりも、作品の空気感を優先する傾向にあるのがマイナス点であった。この敷居の高さを解消すれば、さらに多くの読者を楽しませられるだろう。

「鋼兵の整備士」は、戦争という非日常が日常となった世界をフルカラーコミックで描いた力作。構図やコマ割りのメリハリをより強く心がければ、魅力的なストーリーがさらに引き立つはずだ。

「おかえりインファンツ」は、読者を引き込むに足るストーリーが魅力。画力や構成力も水準以上の作品だが、よりダークファンタジーらしい世界観を演出するためにも、さらなる絵の描き込みが欲しいところだ。

「魔法少女(仮)マホツカ!」は、ある秘密を持った女子高生がヒロインのドタバタコメディ。ノリと勢い重視のギャグで押していくインパクトの強さが光っている。課題は画面作り。ゴチャついて読みにくい印象があるので、絵の白い部分と黒い部分の濃淡をもっとはっきりとさせれば、メリハリがつきハイテンションなギャグシーンが続いても読みにくさは軽減されるであろう。

「冴えて懐か」は、画力、構成力、ストーリー力とも水準を大きくクリアした総合力の高い作品。父の転勤によって見知らぬ街に越してきた男子高校生が、書道を通して新生活を始める青春ストーリーだ。主人公に大きな影響を与える大護守先生の正体が、昼夜によって性別が変わる土地神という設定は独創的だが、こうしたファンタジー要素がなくても、主人公の心の成長を描くに足る世界観が構築されているため、やや蛇足にも感じられた。

「正義の味方と侵略者」は、設定とシチュエーションの妙が光る4コマ作品。画風に華があるので、このまま画力を磨き続ければ、さらなる活躍が望めるだろう。

「FLYAWAY!」は、ケガによるトラウマで競技から引退した元スノーボード選手の少年が、学校のスキー&スノボ合宿に参加する熱血テイストの少年漫画。画風に華があり、コマ割りもダイナミックで、スポーツをテーマにした作品らしく勢いを感じさせてくれた。ストーリー展開に強引さが見られるので、疑問を持たれない展開を心がけることが今後の課題だろう。

「猫と居候」は、3匹の猫との同居生活を描いた実録4コマで、猫たちに振り回されるドタバタの日常がリアルで興味深い。ページ数の少なさと、あるあるネタになってしまいがちな点が残念だった。

「コンビニで逢いましょう」は、コンビニの店長と店員のヴァンパイア少女が繰り広げる異色のラブコメディ。男性視点での萌えを重視した作品のため、読者層が限定されそうだが、画力が安定しており、アクションシーンも達者。ストーリーコミックとしては短めで、食い足りない印象が残ったのが残念だった。

「第10回漫画大賞」は過去最高の応募数があったこともあり、王道ファンタジーや日常4コマ、エッセイなど幅広いジャンルでレベルの高い作品が多く見受けられた。ご応募くださったみなさんの今後の飛躍に期待するとともに、次回は大賞に輝ける作品が現れることを願っている。

応募総数526作品 開催期間2017年03月01日〜末日

なし


編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。アイディアが面白く、センスの良さが感じられる作品です。主人公と姫の関係もひとひねりされており、最弱であることの悲哀がとてもコミカルに描かれています。物語はまだ動き始めたばかりです。最弱主人公が今後どのように活躍していくのか、期待しています。たとえば、最弱という欠点が逆にプラスに働いて問題を解決するなど、エピソードにバリエーションが作れれば、さらに魅力的な作品に成長するでしょう。


編集部より

人間の少女と龍が繰り広げる異種間交流ファンタジーという発想、設定、テンポ感など、総合的に「面白い」「続きが読みたい」と思わせてくれる作品です。巫女は龍にデレるのか否か、なぜ龍は巫女を国に帰せないのか、先を読ませる引きがちりばめられており、ストーリーを作る力も感じられます。読者賞を受賞した「四天王最弱ですが魔王様の娘の教育係です。」も、もちろん魅力的ですが、編集部員たちの評価は、この作品のほうが高かったです。各話ともオチがついていて体裁は整えられていますが、一話ごとのページ数が少なく、食い足りなさが残るのが非常に残念でした。


編集部より

画力が高く丁寧に描かれており、構図のバリエーションも工夫されている力作です。禁術を使う旧家の少女と、千年にわたり封印されていた「陰陽師の裏切り者」と呼ばれる男の出会い。大作を予感させる堂々とした世界観で、物語も非常に魅力的です。最大の課題は、作品内での柚希と雪の位置づけでしょう。柚希の心情や行動をメインに描きたいのか、それとも雪をメインに据え、柚希はヒーローの魅力を読者に伝える語り部にすぎないのか、やや曖昧に見えます。どちらをメインに据えるかで、読者層が変わりますのでより明確に定めたほうがいいでしょう。


編集部より

異種間交流ファンタジーの中では、古くから言い伝えが残る河童と仙人の物語。愛嬌のある絵柄とあいまって、不思議な安心感を持って読み進めることができました。画力と構成力は、やや不安定な部分もありますが、しっかりとした描き込みがなされています。独自の画風として完成されていると言っていいでしょう。物語も画風にマッチした独特のほのぼのさを持っており、作品の総合的な完成度を高めています。課題は第1話の冒頭部分です。のほほんと始まっていて味がある半面、老人が何者なのかの説明が足りていないため、作品に入り込めない読者もいるように思いました。


編集部より

現代が舞台のファンタジー作品で、主人公の女子高生が、狐の神様の兄妹に恩返しをされる物語。画風に華があり、線画から仕上げまで、基本的な画力の高さが感じられました。読み切り作品としての起承転結の作り方やテンポ感など、総合的な完成度も高い作品です。狐の兄妹は、ビジュアル面や設定面でインパクトがありました。課題は想定読者です。「少年向け作品」としてエントリーされていますが、物語の語り手である有為は、ごくふつうの女性的な価値観を持っています。兄神の八千尾も、どちらかというと女性受けしそうなので、むしろこの作品は女性のほうが共感しやすいと思います。若い男性読者に向けているのであれば、もう少し男性が楽しめるバトルシーンなどの要素が必要でしょう。


編集部より

キャラクター、背景、構図とも画力の高さが光る作品です。白黒のメリハリの利いた画風が読みやすく、メインキャラクターであるハクとシキの対照的な色づかいが印象的でした。暴君である伯爵に反逆した2人の男性が活躍する、スタイリッシュなアクションファンタジー。物語も読み切り作品として、ソツなくまとめられていて好感が持てました。その半面、アクションシーン以外のページは、やや文字が多くなる傾向がありました。全体のページ数が少し増えたとしても、もう少しゆったりと描いていれば、さらに良かっただろうと思います。

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