第8回ホラー小説大賞

第8回ホラー小説大賞

選考概要

編集部内で大賞候補作としたのは、「ひび割れて、埋まる」「輪ゴム」「もしも彼女がゾンビになったなら」「忌怨 ―きえん―」「月の好い日は窓を開けて」「壁の中の魚」「うろこ」の7作品。最終検討の結果、編集部内の評価が総じて高かった「月の好い日は窓を開けて」を大賞とすることになった。

「月の好い日は窓を開けて」は、飛行機事故でただ一人生き残り、体の異常とともに別人の記憶が混じるようになった女性の話。物語の重要な鍵を握る、どことなく不可解な隣人女性との危うさをはらんだ交流をはじめ、作品全体に漂う不気味で幻想的な雰囲気が評価された。

「壁の中の魚」は、前出の「月の好い日は窓を開けて」と同じ作者の作品。台所の壁に魚が棲むという新鮮なアイデアと、ホラー作品としての完成度の高さに評価が集まったが、短編かつ2年連続のノミネート作品であったため、「月の好い日は窓を開けて」のほうを大賞授賞とした。

「ひび割れて、埋まる」は、田舎の祖父の家を訪れた少年が、祖父の家に伝わる奇妙な習慣を破ってしまったことから始まる物語。ラムネのビー玉というノスタルジックなモチーフを使った演出が巧みであり、構成力、描写力ともに秀れた良作であった。

また、「忌怨 ―きえん―」は、弁護士の青年がとある旧家を訪れ、殺人事件に巻き込まれるというストーリー。悪霊絡みの怪奇事件モノということで、候補作の中では最も商業性が高いと感じられる魅力的な設定だったが、登場人物の造形とストーリー展開がやや物足りないのが惜しかった。

応募総数 96作品 開催期間 2015年04月01日〜末日

月の好い日は窓を開けて

鵜狩
5位 / 96件

編集部より

主人公の心情の変化が丁寧に描かれた作品で、筆力の高さが感じられました。また物語全体に漂う雰囲気がとても幻想的で、引きこまれた読者も多かったのではないかと思います。秀逸なファンタジックホラー作品として編集部内でも高く評価されました。

ひび割れて、埋まる

ひかわ浅葱
1位 / 96件

編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。田舎の情景に漂う不気味な雰囲気の演出が見事で、王道の和風ホラーとして幅広い世代の読者に支持されたのではないかと思います。最後のオチの薄ら寒い読後感も絶妙だと感じました。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

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