社員成長の決め手は、人事が9割

“ぼっち人事”が、無理せず効果的な採用活動を行うコツ

2024.05.08 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第24回

社内の人的リソースを把握することからスタート

何の経験もなく、いきなり人事担当に任命されてしまった。1人で人事業務をすべてやらなくてはならない…。そんな「ぼっち人事」の方が「採用」をする場合、どのように取り組んだらいいのでしょうか。今回は、大事なポイントに絞ってお伝えしたいと思います。

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「採用」は人事における重要な仕事の1つですが、実はその前にやることがあります。それは「人員計画」の策定です。これは簡単にいうと、社内の人的リソースを把握し、誰をどこに配置し、欠員・余剰があれば、どのような手を打つのかを決めることです。

人員計画は、経営目標の達成や、必要な業務を遂行するためには、どれくらい人が必要なのか、どれくらい人件費に割けるのかを考え、部門別の人件費予算を割り出すことから始まります。

人件費予算が決まったら、各部門にどのような雇用形態の人を何人ずつ置くのかを考えます。管理職と対話しながら、誰をどこに配置するのか、具体的なメンバーを想定。異動希望や退職予定、産休や育休など、個別の事情も配慮しながら人員配置を決めていきます。

その結果、人が足りない部署があったら、まずは社内異動で対応できないかを検討します。それが無理なら、派遣や業務委託などの方法も検討し、「採用」は最終手段です。近年は人手不足が社会問題になるほど、人を採ることが難しくなっています。「人が足りないから採用」という簡単な話ではないので、人事担当になる人は、このような背景を知っておかなくてはいけません。
  ただ、いきなり一人でこれだけのことをするのは難しいでしょう。社長や管理部門の責任者の方に、上記を説明して協力をお願いしてください。しっかり説明できれば、ご理解いただけるとも思います。

人員計画については、第11回「中小企業の経営層が知らなきゃマズい「人事」の第一歩」で詳しく説明しています。こちらの記事も参考にしてみてください。

本当に「採用」なのか、「活用」ではダメなのか?

では、採用をするうえで何が重要なのかというと、1つは「求める人材像」を明確にすること。これについても当コラムでたびたび触れてきました。まずは第18回「採用の失敗はなぜ起こるのか、誰が悪いのか――」に目を通していただき、自社が求める人材像を具体化しましょう。

もう1つは、本当に「採用」なのかを徹底的に検証すること。必要な人材が社内にいないとしても、外部の優秀な人材にお願いする方法もあります。企業と働く人の契約形態は「雇用契約」だけではありません。「請負契約」「委任・準委任契約」「派遣契約」があります。

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たとえば「IT技術者が欲しい」となっても、最近はそう簡単に人を採れません。ただしフリーランスで活躍している人材はいっぱいいます。そういう人たちを「活用」する方法もあるのです。

私の会社もコンサルタントの何名かは請負契約です、彼・彼女らは当社とは別に自分の会社や事業も持っていますが、しっかりと成果を出してくれています。それに応じた報酬も払っています。昨今は優秀な人材ほど「雇用契約」ではなく「請負契約」「委任・準委任契約」による業務委託を望む傾向があります。働きやすい契約は、人によって違うのです。

世間一般の傾向として「正社員」が良いと言われていますが、「契約社員」という方法もあります。正社員とは、一般的に「無期雇用」で「フルタイム(所定労働時間)」で働くことを指します。契約社員は「有期契約社員」の略称です。

「無期雇用」の場合は、その雇用契約が長期間に及ぶことを想定しなくてはいけません。長期間ということは、その間に勤務場所、仕事内容、任される仕事の責任の範囲などが変化する可能性があります。「この仕事しかしたくない」「この場所でしか仕事したくない」「責任の重い仕事はしたくない」という人を「正社員」として無期雇用することには十分注意しなくてはなりません。

雇用形態についてはハッキリしていない会社も多く、有期雇用でありながら、働く側は正社員として誤解しているケースでは、将来、雇い止めになる際にトラブルに発展する場合もあります。

本当に「採用」にすべきなのか、「活用」ではダメなのか。また、それは「雇用契約」でなければならないのか。「正社員」でなければならないのか。人を採用する場合は、その仕事内容、期間、場所、またどの雇用形態が適しているのかも十分検討したほうがいいでしょう。

「採用」や「求める人材像」「契約形態」については、第16回「経営者や人事はもっと「採用」に慎重になれ」でも詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてくさい。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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