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03-服を脱がしてしまいましょう。

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 大悟の肩に頭を預けたままで、大悟のジーンズのファスナーを押しさげる。手探りでトランクスの上からそっと撫でてみると、大悟のぺニスはまだ柔らかかった。でもサイズが……ずしりとした存在感が手にあまる。

 なんだコレ? もしかして、この大きさで通常サイズなのか?
 これまで経験したどのペニスよりも大きそうだ。身体のサイズとぺニスのサイズって、比例するもんなんだろうか?

 もし、コレが勃起したら……。
 自分の想像につられて、思わず内腿に力が入る。膝で挟み込んだ大悟の腰の硬さに、さらに妄想が広がった。
 勃起したコレを、この腰で、力強く。
 押し込まれたときの感覚をリアルに想像して、アナルがきゅっと締まった。その刺激に、腰の奥がじんと痺れる。

 ヤバい。テンションがあがりすぎだ。頭がぼうっとしてきた。
 少しでも熱がさがればいいと、熱くなった息を大きく吐き出してみたけど、あまり効果はない。
 俺がこんなに興奮してるのに、手のひらの下の大悟は反応する素振りもなかった。

 少し悔しくなって、手のひらをぐっと押しつけた。布の上から強弱をつけて刺激する。
 あ、少し硬くなってきた。
 大悟の肩に預けていた頭を少しずらして確認すると、視覚的にもやっぱり大きい。もうトランクスのウエスト部分から先端が覗いてる。その隙間から手を差し込んで直接触れると、それは、ふるっと震えてさらに硬度を増してきた。


 ココを硬くしてるってことは、それなりに性欲を感じてるってことだよな?
 ……脱がせたい。ジーンズを穿いたままでもセックスできなくはないが、脱いでもらったほうが断然楽しめる。

 いつもなら俺が言い出す前に、相手が自発的に脱いでくれるんだけど、大悟はきっと俺が言わないと脱がないよな? でも、言えば脱いでくれそうな気もする。
 だって、ここまでされても俺の手をとめないんだから、それは、俺とセックスしてもいいってことだろ?
 大悟が服を脱いで、俺と……。
 脳内を駆け巡る妄想に、胃のあたりがきゅんとざわめいた。


「あ、あの……」
 頼もうとしている内容を考えると羞恥と緊張が綯い交ぜになって、たったひと言なのに、それが上手く言葉にならない。
 ああ、『脱いで』ってお願いが、こんなにも難題だったとは。

 半ば挫けて、いっそこのまま先に進んでしまおうかとも思った。
 けれど俺の脳裏では、白い逆光の中で、上半身裸の大悟がジーンズと下着を片足ずつ抜き去っているムービーが再生されていた。

 前屈みになった大きな背中に浮きあがる広背筋。形よく引き締まった大殿筋。逆光のせいで見えそうで見えない輪郭が恨めしい。
 それでも、動くたびに隆起を陰影として見せつける彼の脚腰は、たぶん俺を高みに連れていってくれるだろう。
 いや、本物の大悟の身体は、きっと俺の妄想なんかじゃ追いつかないに違いない。

 うぅ、……どうしても脱がせたくなってしまった。


 俺はうずうずと焦れる衝動を堪えながら、大悟の膝から降りて、その脚のあいだに座り込んだ。
「こ、腰、あげて」
 ジーンズを脱がそうとする仕草をしながら言ってみる。
 すると、小さな間を置いてから、大悟が軽く腰を浮かせてジーンズと一緒に下着も自分で脱ぎ去った。

 ああ、やるんだ。いまから、やっちゃうんだ、俺たち。
 大悟の顔が見たい。どんな顔で俺の言葉を聞いたのか。どんな顔で服を脱いだのか。
 めちゃくちゃ気になるのに、どうしても顔があげられない。それどころか視線もあげられない。いま見えているのは、大悟の足先だけだった。

 俺、おかしい。明らかに変だ。初体験のときだって、ここまでドキドキしなかった。


 俺の初体験の相手は、十歳年上の従兄、茂兄しげるにいだった。バイで、自称セックスマスターで、久しぶりに会った俺をひと目でゲイだと見抜いた人だ。
 海外支社から栄転してきて、ちょうどセックスパートナーを探していた茂兄から『試してみないか?』と誘われたのがきっかけだった。

 その頃の俺は、長いリハビリを終えて、やっとできると思っていたバスケへの希望を絶たれたところだったんだよな。
 手術のあと、どうしても取れなかった小さな痛みのせいで、踏み込みや踏ん張りが利かない状態だった。それでもバスケがしたいと言ったら、『次は膝をやることになる』と医者に諭されて、部活動も断念したんだ。

 そんなときに茂兄から誘われて……安易にもチャンスだと思った俺はバカだったと、いまでは思う。

 それまでも、自分のことをゲイかもしれないと薄々は感じていた。でも、そう感じていることさえ認められず、周囲に隠し怯えて、何年も悶々としていたんだ。

 大悟がそばにいてくれたから、それなりに耐えられた。けど、先の見えない迷路の真ん中で、先にも後にも進めず立ち尽くしたようなその状態は、俺にとってはかなりしんどいものだった。
 それが、大悟とのバスケまで取りあげられて、心細くてならなかったんだ。


 そんなときに差し伸べられた茂兄の手は、俺には、自分が何者なのか知ることのできるチケットのように見えた。これで進める。どこへ辿り着くことになるのかはわかってなかったけど、希望が確かに見えた気がした。

 でも、相手が悪かった。茂兄の言う自称セックスマスターは、伊達じゃなかったんだ。
 手解きを受けて、自分がやっぱりゲイだったとわかった時点で引き返せばよかったのに、結局、茂兄の海外支社長就任が決まるまで、八カ月も離れられなかった。おかげで男を我慢できない身体になって、茂兄がいなくなったあとには男漁りを余儀なくされた。

 まあ、アナニーを教えてくれたり、未成年の俺に男漁り用として知人の店を紹介してくれたりと、アフターフォローもばっちりだったセックスマスターには感謝してる。けど、そもそもこんな身体になる前にフォローしてくれていれば、親友相手に迫ったりしないで済んだのにな。


 いまさら考えたところで詮ない思考のおかげで、少しだけ落ち着けた。これなら大丈夫そうだ。
 思いきって顔をあげると、目の前には大悟のペニスが……やっぱりデカい。それから、なんだろう。きれいだ。

 歪みのない真っ直ぐなシルエット。力強さを感じさせる十分以上の太さと、張り出したカリの確かさ。こんな怒張した状態なのに、日焼けした肌を思わせる艶やかなその色は健康的ですらある。

 ここまでペニスに好印象を持ったことって、あったかな?
 思えば、これまではついてて当然てくらいの認識しかなかったから、まじまじと見ることもしなかった。

 俺にとっての大悟が、いままでの男と違うことは承知してたつもりだけど、なんだか『初めて』だらけで、正直たじろいでしまう。脱衣シーンを妄想したのも、顔をあげられないでいるのも、ペニスをきれいだと思ったのも、いまだかつてないことだった。

 ああ、どうしよう。またドキドキしてきた。俺、こんな調子でちゃんとできるのかな。
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