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連載

おまけ、バレンタインネタ

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今回はいつもと書き方を変えています。
アース視点ではありませんので……。
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 二月十四日。言わずと知れたバレンタインデー当日。現実世界でも色々とある一日だが、ワンモアの世界でもそれは同様であった。その一部を紹介しよう……


 一つ目 ある特殊な意思を持つ男性達を纏めていたプレイヤー

「よし、遂に聖戦当日を迎えた。お前ら、準備は良いな? やることは事前に通達しておいたが、ここで再確認を兼ねてもう一度説明する。今回もこの時期限定でカップルになっているモンスターが闊歩しているが、この聖戦の日にはその数が跳ね上がる傾向が高い事を同士が突き止めてくれている。我々がやることは、そのカップルモンスターを情け容赦なく殲滅する事だ!」

 何て事を、男性プレイヤーは声高らかに宣言する。街中なのに。しかし、彼らのテンションは同じ方向に盛り上がっているために、それを指摘する人がこの場には居なかった。

「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」

 そして、そんな男性と意思を共にする五十名以上のプレイヤー軍団。ちなみに全員男性。彼らの目は、殺る気に満ちている。彼らは待っていた。自分達を率いる男の指示を。

「では、これより聖戦を開始す──「いたいた、おにーちゃーん!」」

 そんなプレイヤー軍団を相手に音頭を取っていた男性プレイヤーがだったが、聖戦開始の号令を掛けようとしたその時、一人の幼い女の声が突如割り込んできた。何事かと動きが止まる周囲の男性陣。そんな男性達をスルーして、号令を掛けようとしていた男性プレイヤーに近寄る幼女。

「おにーちゃん、今日はバレンタインデーだから……はい、あげる!」

 差し出されたのはチョコレート。可愛らしくリボンでラッピングされ、外見もハート型。義理か本命かという面はひとまず置いといても、貰える人と貰えなかった人の間にこれ以上ないほどの高い壁を作るバレンタインのチョコであることは言うまでもない。

「じゃ、またねー! お兄ちゃん大好き!」

 チョコを渡し終え、立ち去っていく幼女。そこに残されたのはチョコレートと、先程まで同士であったはずの人達から向けられる殺気の籠った眼にさらされる男性プレイヤー。

「いや待ってくれ、さっきの子はネーネちゃんと言ってな、長く病気で苦しんでいたんで、その治癒のためにいろんな国から病気の治療薬の素材を集めて治してあげただけで。決して同志たちを裏切ってきゃっきゃうふふな事をしていたわけではないぞ!?」

 殺気の籠った視線を周囲から向けられた事で、冷や汗を流しながら反論する男性プレイヤー。たとえ何を言っても、無駄な努力にしかならないと知りつつも。そして、事実無駄なのであるが。

「お兄ちゃん大好き、だってよ」「あんなかわいい幼女と知りあいになってるとか」「ましてやこの時期にチョコレートを貰うとか」「でかいハート型だったよな」「そしてたとえハート形じゃなかろうと」「この時期にチョコを貰う奴は」「「「「「全て我らの敵だ」」」」」

 と、意思の統一がなされ……モンスター狩りの予定が一転して、大対戦大会が開かれたそうな。特にチョコを貰った男性プレイヤー一人を、残り全員が武器で空中に高く舞い上げる胴上げワッショイスタイルとなったらしい……。


 二つ目 ギルドブルーカラー

「ツヴァイくーん、私のチョコを受け取ってー♪」「私の方が先!」「私よ私!」「分かっていませんわね、彼の口に一番最初に入るチョコは、この私のチョコですわよ!」「ツヴァイさ〜ん、はいど〜ぞ〜」

 ハーレムギルドと揶揄されるツヴァイのギルドだが、ツヴァイはそんなチョコを片手に追いかける女性陣から逃げるべく、ギルドエリアを脱走。そのツヴァイを追いかけるべく、大半の女性陣もギルドエリアから出て行き……ギルドエリアは一気に静かになった。

「やれやれ、毎年の事とはいえ、年々ひどくなるばっかりだな」

 一部始終を見届け終わり、ため息交じりでレイジがチョコレートを口にする。レイジにチョコを渡したのは、彼のリアルの彼女でもあるコーンポタージュである。そんなレイジの言葉に、コーンポタージュも苦笑い。

「よくもまあ、毎年毎年飽きませんよね。見ている方も面白いと言うよりは疲れてきますし」

 カザミネはカナからチョコレートを貰っていた。共に戦場に立つことも多く、頼りになる相棒となっているカザミネとカナの二人なので、過去に女性問題を抱えた事があるカザミネであってもカナからのチョコは素直に受け取ることが出来ていた。

「愛が重すぎるってのも問題だよね。ボクみたいにあげる人が居ないってのは、ある意味気楽でいいのかもね。義理と言えどツヴァイに渡したらあの子達の反応が怖いし、レイジやカザミネはボクからの義理チョコなんて要らないでしょ?」

 ロナの問いかけに、レイジもカザミネも頷く。レイジは彼女に誤解される可能性が生まれるし、カザミネは過去の経験から女性に対する苦手意識のような物が潜在的にある。そこから導かれる答えは、義理チョコなんか基本的には邪魔でしかないと言う一言になる。

「ま、あの子達はあの子達なりの楽しみ方をしてるんだから、アタシはそれでいいと思うけどさ。さて、ちょうど六人が残った事だし、どっかのダンジョンにでも行く? このバレンタインデー限定ダンジョンなんてのも確かあったわよね? せっかくだから一回ぐらい試しに入っても悪くないと考えてるんだけど、どう?」

 ノーラがナイフの手入れをしながら、ギルドエリアに残ったメンバーに一つの提案を投げかけた。

「それも良いかもしれませんね。ギルドマスターは今日一日使い物にならないでしょうし、イベントと言ってもこの世界の事です。やり応えのある難易度である可能性は十分ありますから、出かけてみる価値はあるかと」

 と、カナがその提案に乗っかる。

「メンツもバランス良いし、私もノーラ姐さんの提案に乗るわ。レイ君とカナちゃんの二枚タンカーが揃ってるし、油断しなければだいじょぶだと思う〜」

 コーンポタージュも提案に乗ったが、そこですかさずノーラが「コンポちゃん、お願いだからアタシの名前に姐さんをくっつけるのはやめてよ……」とややげんなりした反応を示していた。バレンタイン中のブルーカラーは、比較的平和であったと言えよう。ギルドマスターのツヴァイを除いて、だが。

「俺に平和な時間をもっとくれー!!」

 あ、それは無理です。


 三つめ アース

「そう言えば、今日がバレンタイン当日だったな……すっかり忘れてた」

「相変わらずマイペースじゃな、周囲がこれだけ舞い上がっておると言うのに。貰ったの貰わなかったなどの話で、殺気もあちこちで飛び交っておるぞ?」

 突如やってきた龍ちゃん。そうして渡されたチョコレートから、今日がバレンタインデーであると思いだした様子である。チョコは色々とあって苦手だが、投げ捨てる訳にもいかないのでアースはアイテムボックスの中にしまう。

「で、何を企んでる?」

 と、アースは疑いの目を龍ちゃんに向ける。が、そんな視線を浴びても龍ちゃんは平然としていた。

「いやいやいや、何も企んではおらぬよ。別のたくらみはあったが、すでにそちらは策が成っておるしの。今日訪れた目的は、のんびりと話の一つもできればよい。それだけじゃ」

 龍ちゃんの言動に引っ掛かりを覚えるアースであったが、これと言ってやりたい事も無く、急ぐ用事も無かったのでこの日はそのまま龍ちゃんとの会話に一日を費やした。そして……その一方で。


「あのバカ妹! 来年を覚えていなさいよー!!! 絶対にやり返してあげるんだからー!!」

 妖精城の中で、フェアリークィーンの絶叫が響き渡った事をアースは知る由も無いのであった。
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