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カイト帝国へ行く
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領都での屋敷になる建物を土魔法で造り上げる。
最早それは屋敷ではなく、城と呼ばれる規模ものだった。
「うん、多少和洋折衷な感じは否め無いけど、上出来だな」
内装や細かな部分は、大工や職人任せだが、だいたいの部分は魔法で造りあげた。
敷地は広く、周りに濠が掘られ、有事の際に住民が避難出来る広さを確保してある。
「スーラ、屋敷の魔導具は頼めるかな」
「浄化魔法を刻んだ魔石は、まだ有るから大丈夫なのです。水の魔導具や魔導コンロも任せるのです」
最近のスーラは魔導具製作の腕も上がり、大体の作業は任せられる様になっている。浄化の魔法もその内習得するだろう。
「じゃあ頼むよ。少し遠出して来るから」
「どこに行くのでありますか?」
「ちょっと帝国で、斥候職の人材を探して来るよ」
「珍しいのです。カイト様お一人で行くですか?あゝ、帝国ですか」
何時も遠出する時は、必ず誰かと一緒に出掛けていたので、スーラが不思議そうに聞いたが、直ぐに理由が分かったようだ。
ゴンドワナ帝国は、ローラシア王国に輪をかけて人族至上主義の国だ。それに対して、俺の仲間や嫁は、純粋な人族はいない。エルですらエルフの血が入っている。
ランカスや騎士団の人員には、人族も居るが、現在、騎士団、守備隊共に忙しい。
「そう言う事、そんなに長く留守にしないよ」
「ルキナが淋しがるです」
「まぁ、出来るだけ毎日転移で帰って来るよ」
そう言って俺は帝国に向かう。
先ず、以前帝国が侵攻して来た場所まで、転移で移動する。
「さて、ここからは気配を消しながらノンビリ行こうか」
サーメイヤ王国とゴンドワナ帝国の国境から、歩いて帝国の大きな街を目指す。
戦争中の敵国に進入するので、勿論密入国だ。
「一人で遠出するのは久しぶりだな。いや、エルと会ってからは、初めてかもな」
こうして一人で歩いていると、俺をこの世界に転生させた神様が、何を俺に望んでいるのかを考えてしまう。
目覚めた場所も、師匠に会わなきゃ抜ける事が出来ない魔物の領域だし、むしろ師匠と出会う事も含めて神様がセッティングしたモノだと考えてしまう。
そこで俺の現状を考えると、生きるのさえ精一杯で、未開拓の土地が多いこの大陸で、種族間差別や争いが蔓延している現状を打破させようとして、転生させたのかもしれない。
まぁ、だからって俺が、ゴンドワナ帝国やローラシア王国の体制にまで影響力を及ぼす事が出来るのかという話もあるが。
「おっ、結構デカイめの街が見えて来たな」
ゴンドワナ帝国の街に近付き、門を通らずに進入を試みる。
斥候系職業も高レベルなカイトは、難なく街への進入を成功させる。
国境に近いこの街の名前は、トロル。チラーノス辺境伯領の副首都に位置付けされる街だ。
「(しかし、見ていて気持ち良いもんじゃないな)」
俺の見た帝国の街は、胸糞悪い光景が広がっていた。
人族と獣人族の割合は、サーメイヤ王国と余り変わらない。しかし、あきらかに違う箇所がある。それはエルフやドワーフ族が居ない事、そして一番の違い、獣人族は奴隷しか存在しないという事。
今もカイト目の前を、粗末な貫頭衣を着た獣人が、首輪を付けて主人であろう人間の後ろを歩いている。
奴隷となっている獣人達に共通しているのは、目が死んでいる事だ。
この国では、獣人族というだけで、生まれた時から奴隷以外の選択肢がないと言う。
この国やローラシア王国で、エルフやドワーフの奴隷を余り見かけない理由は、エルフの国サーリット王国やドワーフの国ガウン王国を敵に回すことになるからだ。だからエルフやドワーフの奴隷は、違法奴隷しか存在しない。獣人族も奴隷狩りで連れて来られる違法奴隷も後を絶たない。
ローラシア王国は、獣人族イコール奴隷ではないが、差別は根強くあり、決して住み易いとは言えない。
気を取り直して奴隷商を探す。
俺の気持ち的には、犯罪奴隷以外の全員を買って、解放してあげたい気持ちが強いが、偽善でしかない事も、根本的な解決にはならない事は分かっている。
「さて、この奴隷商はどうかな」
店の外から気配を探る。魔物も人も、強い個体はある程度察知する事が出来る。
「一人かな」
一軒の奴隷商の前で気配を探ると、比較的強い気配を感じる事が出来た。
この国では、いくら優れた素質を持っていても、獣人族である限り報われないのだろう。だから、ローラシア王国に居る獣人族や、未開拓地で暮らす獣人族と比べ、ゴンドワナ帝国の獣人族は、どんなに素質がある人もジョブレベルやスキルレベルの成長していない。逆に言えば、まともに成長していないのに、この程度の気配を感じるならば当たりかもしれない。
俺は一軒目の奴隷商に入って行く。
最早それは屋敷ではなく、城と呼ばれる規模ものだった。
「うん、多少和洋折衷な感じは否め無いけど、上出来だな」
内装や細かな部分は、大工や職人任せだが、だいたいの部分は魔法で造りあげた。
敷地は広く、周りに濠が掘られ、有事の際に住民が避難出来る広さを確保してある。
「スーラ、屋敷の魔導具は頼めるかな」
「浄化魔法を刻んだ魔石は、まだ有るから大丈夫なのです。水の魔導具や魔導コンロも任せるのです」
最近のスーラは魔導具製作の腕も上がり、大体の作業は任せられる様になっている。浄化の魔法もその内習得するだろう。
「じゃあ頼むよ。少し遠出して来るから」
「どこに行くのでありますか?」
「ちょっと帝国で、斥候職の人材を探して来るよ」
「珍しいのです。カイト様お一人で行くですか?あゝ、帝国ですか」
何時も遠出する時は、必ず誰かと一緒に出掛けていたので、スーラが不思議そうに聞いたが、直ぐに理由が分かったようだ。
ゴンドワナ帝国は、ローラシア王国に輪をかけて人族至上主義の国だ。それに対して、俺の仲間や嫁は、純粋な人族はいない。エルですらエルフの血が入っている。
ランカスや騎士団の人員には、人族も居るが、現在、騎士団、守備隊共に忙しい。
「そう言う事、そんなに長く留守にしないよ」
「ルキナが淋しがるです」
「まぁ、出来るだけ毎日転移で帰って来るよ」
そう言って俺は帝国に向かう。
先ず、以前帝国が侵攻して来た場所まで、転移で移動する。
「さて、ここからは気配を消しながらノンビリ行こうか」
サーメイヤ王国とゴンドワナ帝国の国境から、歩いて帝国の大きな街を目指す。
戦争中の敵国に進入するので、勿論密入国だ。
「一人で遠出するのは久しぶりだな。いや、エルと会ってからは、初めてかもな」
こうして一人で歩いていると、俺をこの世界に転生させた神様が、何を俺に望んでいるのかを考えてしまう。
目覚めた場所も、師匠に会わなきゃ抜ける事が出来ない魔物の領域だし、むしろ師匠と出会う事も含めて神様がセッティングしたモノだと考えてしまう。
そこで俺の現状を考えると、生きるのさえ精一杯で、未開拓の土地が多いこの大陸で、種族間差別や争いが蔓延している現状を打破させようとして、転生させたのかもしれない。
まぁ、だからって俺が、ゴンドワナ帝国やローラシア王国の体制にまで影響力を及ぼす事が出来るのかという話もあるが。
「おっ、結構デカイめの街が見えて来たな」
ゴンドワナ帝国の街に近付き、門を通らずに進入を試みる。
斥候系職業も高レベルなカイトは、難なく街への進入を成功させる。
国境に近いこの街の名前は、トロル。チラーノス辺境伯領の副首都に位置付けされる街だ。
「(しかし、見ていて気持ち良いもんじゃないな)」
俺の見た帝国の街は、胸糞悪い光景が広がっていた。
人族と獣人族の割合は、サーメイヤ王国と余り変わらない。しかし、あきらかに違う箇所がある。それはエルフやドワーフ族が居ない事、そして一番の違い、獣人族は奴隷しか存在しないという事。
今もカイト目の前を、粗末な貫頭衣を着た獣人が、首輪を付けて主人であろう人間の後ろを歩いている。
奴隷となっている獣人達に共通しているのは、目が死んでいる事だ。
この国では、獣人族というだけで、生まれた時から奴隷以外の選択肢がないと言う。
この国やローラシア王国で、エルフやドワーフの奴隷を余り見かけない理由は、エルフの国サーリット王国やドワーフの国ガウン王国を敵に回すことになるからだ。だからエルフやドワーフの奴隷は、違法奴隷しか存在しない。獣人族も奴隷狩りで連れて来られる違法奴隷も後を絶たない。
ローラシア王国は、獣人族イコール奴隷ではないが、差別は根強くあり、決して住み易いとは言えない。
気を取り直して奴隷商を探す。
俺の気持ち的には、犯罪奴隷以外の全員を買って、解放してあげたい気持ちが強いが、偽善でしかない事も、根本的な解決にはならない事は分かっている。
「さて、この奴隷商はどうかな」
店の外から気配を探る。魔物も人も、強い個体はある程度察知する事が出来る。
「一人かな」
一軒の奴隷商の前で気配を探ると、比較的強い気配を感じる事が出来た。
この国では、いくら優れた素質を持っていても、獣人族である限り報われないのだろう。だから、ローラシア王国に居る獣人族や、未開拓地で暮らす獣人族と比べ、ゴンドワナ帝国の獣人族は、どんなに素質がある人もジョブレベルやスキルレベルの成長していない。逆に言えば、まともに成長していないのに、この程度の気配を感じるならば当たりかもしれない。
俺は一軒目の奴隷商に入って行く。
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