64 / 163
黒豹のフーガ
しおりを挟む
最初入った奴隷商で、俺は斥候系の冒険者として使えるという条件をリクエストする。
ただ、あいにくその奴隷商には、鉱山労働者や力仕事に向く、熊人族や牛人族が多く、ネコ科の獣人は一人しか居なかった。
NAME フーガ 黒豹人族
AGE 28
JOB アサシンLv.5
HP 260/260
MP 180/180
JOB
戦士Lv.10 狩人Lv.5 盗賊Lv.20
アサシンLv.10
ほとんどの奴隷達がジョブレベルもスキルレベルも低いなか、このフーガだけは中級職に就いていた。年齢も30前って事は、きっと訳ありなんだろう。
ほぼ買うつもりだったが、一応面接することにした。一度の面接で人となりが分かる訳がないけど、話してみて感じる事もあるだろう。
店主が出て行った部屋の中で、二人で話をする。
「あなたはどうして奴隷に、元から奴隷だった訳じゃないでしょう」
「…………国に仕えていた」
フーガがボソリと答える。
「それはゴンドワナ帝国?それともローラシア王国?」
「……ローラシア王国だ」
成る程、何となく分かったかな。
「ローラシア王国の諜報組織で働いていたんだな」
「……ふぅ~、貴方にはごまかせませんか。鑑定スキルですか、珍しいですね。
そうです、私はローラシア王国の諜報組織に属していましたが、仕事中に同僚に裏切られて、ゴンドワナ帝国に売られたのです。同僚は、獣人族が小隊長に就いているのが赦せなかったのでしょう」
どこか諦めた様に言うフーガだが、他の奴隷に比べれば、フーガの瞳には力があった。
「それで他の奴隷と違い、中級職に就いているんだな。でもそのステータスじゃ俺の所じゃ通用しないかな。だいぶ鍛える事になるけど、俺の所に来るか?」
「……貴方は?」
そう言えば自己紹介していなかった。
「あゝ、ちょっと待って」
部屋に遮音結界を張る。
「俺の名前はカイト。サーメイヤ王国では、カイト・ビスコント・フォン・ドラークと呼ばれる事もある」
「!!」
さすがに諜報組織で働いていただけに、俺のことは知っていたみたいだ。
「サーメイヤの厄災!」
なんか厨二病臭い二つ名がついてるの?
「その呼ばれ方は初めて聞いたけど、俺のことは知っているみたいだな」
「ゴンドワナ帝国とローラシア王国の諜報組織で、『サーメイヤの厄災』を知らぬ者はいません。
我等もゴンドワナ帝国のチラーノス辺境伯領内で情報収集致しましたから、ほぼ正確に何が起こったのか把握しています」
「それで俺の所へ来るのに問題は無いか?」
俺がそう聞くと、フーガは少し言いづらそうに、ローラシア王国に残してきた、妻と子供の身の安全を心配している事を俺に言った。
「……一月は長いか、10日でフーガを鍛えてローラシア王国に忍び込んで、フーガの家族を確保する。時間がないから、厳しい訓練になるけど、家族の為なら耐えれるだろう」
「お願いします!私を購入して下さい。妻と子供を助けてください!お願いします!」
「10日あれば、斥候系に絞って鍛えれば、何とかなるだろう」
俺はフーガを買うと、ドラーク領に転移して戻り、ユーファンとサンクにフーガを預け、毒蛇王の森で、5日間の訓練をさせるよう頼んだ。
俺は帝国に戻り、大きな街の奴隷商を巡り、斥候に向く種族の確保をした。
結局、年若い猫人族が3人、狐人族が2人、豹人族が2人の7人を購入した。
全員、ジョブレベルもスキルレベルも低いので、ランカスとバルデスに預けて、先ずは基礎訓練を受けて貰っている。
そして5日後、ユーファンとサンクに預けていたフーガをピックアップして、深淵の森での訓練を始める。
「……深淵の森で訓練をするのですか」
フーガが森に転移したところで、少し怯えたように俺に聞いて来た。
「大丈夫だよ。奥に行かないとS級の魔物は出て来ないから。それにルキナやエルもこの森で鍛錬して強くなったんだから」
ルキナの名前を聞いて、フーガはドン引きしている。
「大丈夫ですよ。カイト様も私もいますから」
今日は、コレットが一緒に来ている。
一日交代で、明日はエル、その次はイリアとルキナ、その次の日はルシエルとローテーションを組んでいる。
フーガは、エルを筆頭に、俺の妻達全員が戦う事に驚いていたが、ルキナまでも戦えるとは思わなかったようだ。
それとルシエルは、何時の間にか側室の仲間入りをしていた。ローテーションを組んで一緒に寝る順番を決めていたらしいが、気付いたらルシエルも混じっていた。
「じゃあ5日で、初級職を幾つか鍛えて、ステータスの底上げと、出来ればアサシンマスターまでいければ安心してローラシアに潜入出来るだろう」
俺がそう言うと、フーガも真剣な表情になる。
「では行きましょうか」
コレットが先頭で森に入って行く。フーガを真ん中にして、最後尾に俺が続き背後の警戒をする。
森を進むと直ぐにオークの群れが見つかる。
「エアカッター!」
「プギィーー!!」
コレットがオークの手足を切り裂く。
俺も走りながら手足を落としていく。
「フーガ!トドメを!」
俺とコレットが手足を落として、行動不能に陥ったオークのトドメをフーガがさしていく。
「……何か、複雑な気分ですね」
ボソリとフーガが呟くのを気にせず、出来るだけフーガの経験になるようにしながら、森を歩き回り、5日の訓練を終える。
フーガは、元々諜報組織で小隊長だっただけあり、途中から今回帝国から連れて来たメンバーと合流しても、上手くチームで動けていた。
夜空に青く輝く3つの月の明かりが、黒い装束に身を包んだ2つの影を照らしていた。
気配を消して、ローラシア王国の王都に潜入するのは、カイトとフーガの2人。
2人は、誰にも気付かれる事なく、王都への潜入に成功する。
王都に潜入を果たした2人は、街の中へ溶けるように消えていった。
ただ、あいにくその奴隷商には、鉱山労働者や力仕事に向く、熊人族や牛人族が多く、ネコ科の獣人は一人しか居なかった。
NAME フーガ 黒豹人族
AGE 28
JOB アサシンLv.5
HP 260/260
MP 180/180
JOB
戦士Lv.10 狩人Lv.5 盗賊Lv.20
アサシンLv.10
ほとんどの奴隷達がジョブレベルもスキルレベルも低いなか、このフーガだけは中級職に就いていた。年齢も30前って事は、きっと訳ありなんだろう。
ほぼ買うつもりだったが、一応面接することにした。一度の面接で人となりが分かる訳がないけど、話してみて感じる事もあるだろう。
店主が出て行った部屋の中で、二人で話をする。
「あなたはどうして奴隷に、元から奴隷だった訳じゃないでしょう」
「…………国に仕えていた」
フーガがボソリと答える。
「それはゴンドワナ帝国?それともローラシア王国?」
「……ローラシア王国だ」
成る程、何となく分かったかな。
「ローラシア王国の諜報組織で働いていたんだな」
「……ふぅ~、貴方にはごまかせませんか。鑑定スキルですか、珍しいですね。
そうです、私はローラシア王国の諜報組織に属していましたが、仕事中に同僚に裏切られて、ゴンドワナ帝国に売られたのです。同僚は、獣人族が小隊長に就いているのが赦せなかったのでしょう」
どこか諦めた様に言うフーガだが、他の奴隷に比べれば、フーガの瞳には力があった。
「それで他の奴隷と違い、中級職に就いているんだな。でもそのステータスじゃ俺の所じゃ通用しないかな。だいぶ鍛える事になるけど、俺の所に来るか?」
「……貴方は?」
そう言えば自己紹介していなかった。
「あゝ、ちょっと待って」
部屋に遮音結界を張る。
「俺の名前はカイト。サーメイヤ王国では、カイト・ビスコント・フォン・ドラークと呼ばれる事もある」
「!!」
さすがに諜報組織で働いていただけに、俺のことは知っていたみたいだ。
「サーメイヤの厄災!」
なんか厨二病臭い二つ名がついてるの?
「その呼ばれ方は初めて聞いたけど、俺のことは知っているみたいだな」
「ゴンドワナ帝国とローラシア王国の諜報組織で、『サーメイヤの厄災』を知らぬ者はいません。
我等もゴンドワナ帝国のチラーノス辺境伯領内で情報収集致しましたから、ほぼ正確に何が起こったのか把握しています」
「それで俺の所へ来るのに問題は無いか?」
俺がそう聞くと、フーガは少し言いづらそうに、ローラシア王国に残してきた、妻と子供の身の安全を心配している事を俺に言った。
「……一月は長いか、10日でフーガを鍛えてローラシア王国に忍び込んで、フーガの家族を確保する。時間がないから、厳しい訓練になるけど、家族の為なら耐えれるだろう」
「お願いします!私を購入して下さい。妻と子供を助けてください!お願いします!」
「10日あれば、斥候系に絞って鍛えれば、何とかなるだろう」
俺はフーガを買うと、ドラーク領に転移して戻り、ユーファンとサンクにフーガを預け、毒蛇王の森で、5日間の訓練をさせるよう頼んだ。
俺は帝国に戻り、大きな街の奴隷商を巡り、斥候に向く種族の確保をした。
結局、年若い猫人族が3人、狐人族が2人、豹人族が2人の7人を購入した。
全員、ジョブレベルもスキルレベルも低いので、ランカスとバルデスに預けて、先ずは基礎訓練を受けて貰っている。
そして5日後、ユーファンとサンクに預けていたフーガをピックアップして、深淵の森での訓練を始める。
「……深淵の森で訓練をするのですか」
フーガが森に転移したところで、少し怯えたように俺に聞いて来た。
「大丈夫だよ。奥に行かないとS級の魔物は出て来ないから。それにルキナやエルもこの森で鍛錬して強くなったんだから」
ルキナの名前を聞いて、フーガはドン引きしている。
「大丈夫ですよ。カイト様も私もいますから」
今日は、コレットが一緒に来ている。
一日交代で、明日はエル、その次はイリアとルキナ、その次の日はルシエルとローテーションを組んでいる。
フーガは、エルを筆頭に、俺の妻達全員が戦う事に驚いていたが、ルキナまでも戦えるとは思わなかったようだ。
それとルシエルは、何時の間にか側室の仲間入りをしていた。ローテーションを組んで一緒に寝る順番を決めていたらしいが、気付いたらルシエルも混じっていた。
「じゃあ5日で、初級職を幾つか鍛えて、ステータスの底上げと、出来ればアサシンマスターまでいければ安心してローラシアに潜入出来るだろう」
俺がそう言うと、フーガも真剣な表情になる。
「では行きましょうか」
コレットが先頭で森に入って行く。フーガを真ん中にして、最後尾に俺が続き背後の警戒をする。
森を進むと直ぐにオークの群れが見つかる。
「エアカッター!」
「プギィーー!!」
コレットがオークの手足を切り裂く。
俺も走りながら手足を落としていく。
「フーガ!トドメを!」
俺とコレットが手足を落として、行動不能に陥ったオークのトドメをフーガがさしていく。
「……何か、複雑な気分ですね」
ボソリとフーガが呟くのを気にせず、出来るだけフーガの経験になるようにしながら、森を歩き回り、5日の訓練を終える。
フーガは、元々諜報組織で小隊長だっただけあり、途中から今回帝国から連れて来たメンバーと合流しても、上手くチームで動けていた。
夜空に青く輝く3つの月の明かりが、黒い装束に身を包んだ2つの影を照らしていた。
気配を消して、ローラシア王国の王都に潜入するのは、カイトとフーガの2人。
2人は、誰にも気付かれる事なく、王都への潜入に成功する。
王都に潜入を果たした2人は、街の中へ溶けるように消えていった。
68
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる