63 / 163
カイト帝国へ行く
しおりを挟む
領都での屋敷になる建物を土魔法で造り上げる。
最早それは屋敷ではなく、城と呼ばれる規模ものだった。
「うん、多少和洋折衷な感じは否め無いけど、上出来だな」
内装や細かな部分は、大工や職人任せだが、だいたいの部分は魔法で造りあげた。
敷地は広く、周りに濠が掘られ、有事の際に住民が避難出来る広さを確保してある。
「スーラ、屋敷の魔導具は頼めるかな」
「浄化魔法を刻んだ魔石は、まだ有るから大丈夫なのです。水の魔導具や魔導コンロも任せるのです」
最近のスーラは魔導具製作の腕も上がり、大体の作業は任せられる様になっている。浄化の魔法もその内習得するだろう。
「じゃあ頼むよ。少し遠出して来るから」
「どこに行くのでありますか?」
「ちょっと帝国で、斥候職の人材を探して来るよ」
「珍しいのです。カイト様お一人で行くですか?あゝ、帝国ですか」
何時も遠出する時は、必ず誰かと一緒に出掛けていたので、スーラが不思議そうに聞いたが、直ぐに理由が分かったようだ。
ゴンドワナ帝国は、ローラシア王国に輪をかけて人族至上主義の国だ。それに対して、俺の仲間や嫁は、純粋な人族はいない。エルですらエルフの血が入っている。
ランカスや騎士団の人員には、人族も居るが、現在、騎士団、守備隊共に忙しい。
「そう言う事、そんなに長く留守にしないよ」
「ルキナが淋しがるです」
「まぁ、出来るだけ毎日転移で帰って来るよ」
そう言って俺は帝国に向かう。
先ず、以前帝国が侵攻して来た場所まで、転移で移動する。
「さて、ここからは気配を消しながらノンビリ行こうか」
サーメイヤ王国とゴンドワナ帝国の国境から、歩いて帝国の大きな街を目指す。
戦争中の敵国に進入するので、勿論密入国だ。
「一人で遠出するのは久しぶりだな。いや、エルと会ってからは、初めてかもな」
こうして一人で歩いていると、俺をこの世界に転生させた神様が、何を俺に望んでいるのかを考えてしまう。
目覚めた場所も、師匠に会わなきゃ抜ける事が出来ない魔物の領域だし、むしろ師匠と出会う事も含めて神様がセッティングしたモノだと考えてしまう。
そこで俺の現状を考えると、生きるのさえ精一杯で、未開拓の土地が多いこの大陸で、種族間差別や争いが蔓延している現状を打破させようとして、転生させたのかもしれない。
まぁ、だからって俺が、ゴンドワナ帝国やローラシア王国の体制にまで影響力を及ぼす事が出来るのかという話もあるが。
「おっ、結構デカイめの街が見えて来たな」
ゴンドワナ帝国の街に近付き、門を通らずに進入を試みる。
斥候系職業も高レベルなカイトは、難なく街への進入を成功させる。
国境に近いこの街の名前は、トロル。チラーノス辺境伯領の副首都に位置付けされる街だ。
「(しかし、見ていて気持ち良いもんじゃないな)」
俺の見た帝国の街は、胸糞悪い光景が広がっていた。
人族と獣人族の割合は、サーメイヤ王国と余り変わらない。しかし、あきらかに違う箇所がある。それはエルフやドワーフ族が居ない事、そして一番の違い、獣人族は奴隷しか存在しないという事。
今もカイト目の前を、粗末な貫頭衣を着た獣人が、首輪を付けて主人であろう人間の後ろを歩いている。
奴隷となっている獣人達に共通しているのは、目が死んでいる事だ。
この国では、獣人族というだけで、生まれた時から奴隷以外の選択肢がないと言う。
この国やローラシア王国で、エルフやドワーフの奴隷を余り見かけない理由は、エルフの国サーリット王国やドワーフの国ガウン王国を敵に回すことになるからだ。だからエルフやドワーフの奴隷は、違法奴隷しか存在しない。獣人族も奴隷狩りで連れて来られる違法奴隷も後を絶たない。
ローラシア王国は、獣人族イコール奴隷ではないが、差別は根強くあり、決して住み易いとは言えない。
気を取り直して奴隷商を探す。
俺の気持ち的には、犯罪奴隷以外の全員を買って、解放してあげたい気持ちが強いが、偽善でしかない事も、根本的な解決にはならない事は分かっている。
「さて、この奴隷商はどうかな」
店の外から気配を探る。魔物も人も、強い個体はある程度察知する事が出来る。
「一人かな」
一軒の奴隷商の前で気配を探ると、比較的強い気配を感じる事が出来た。
この国では、いくら優れた素質を持っていても、獣人族である限り報われないのだろう。だから、ローラシア王国に居る獣人族や、未開拓地で暮らす獣人族と比べ、ゴンドワナ帝国の獣人族は、どんなに素質がある人もジョブレベルやスキルレベルの成長していない。逆に言えば、まともに成長していないのに、この程度の気配を感じるならば当たりかもしれない。
俺は一軒目の奴隷商に入って行く。
最早それは屋敷ではなく、城と呼ばれる規模ものだった。
「うん、多少和洋折衷な感じは否め無いけど、上出来だな」
内装や細かな部分は、大工や職人任せだが、だいたいの部分は魔法で造りあげた。
敷地は広く、周りに濠が掘られ、有事の際に住民が避難出来る広さを確保してある。
「スーラ、屋敷の魔導具は頼めるかな」
「浄化魔法を刻んだ魔石は、まだ有るから大丈夫なのです。水の魔導具や魔導コンロも任せるのです」
最近のスーラは魔導具製作の腕も上がり、大体の作業は任せられる様になっている。浄化の魔法もその内習得するだろう。
「じゃあ頼むよ。少し遠出して来るから」
「どこに行くのでありますか?」
「ちょっと帝国で、斥候職の人材を探して来るよ」
「珍しいのです。カイト様お一人で行くですか?あゝ、帝国ですか」
何時も遠出する時は、必ず誰かと一緒に出掛けていたので、スーラが不思議そうに聞いたが、直ぐに理由が分かったようだ。
ゴンドワナ帝国は、ローラシア王国に輪をかけて人族至上主義の国だ。それに対して、俺の仲間や嫁は、純粋な人族はいない。エルですらエルフの血が入っている。
ランカスや騎士団の人員には、人族も居るが、現在、騎士団、守備隊共に忙しい。
「そう言う事、そんなに長く留守にしないよ」
「ルキナが淋しがるです」
「まぁ、出来るだけ毎日転移で帰って来るよ」
そう言って俺は帝国に向かう。
先ず、以前帝国が侵攻して来た場所まで、転移で移動する。
「さて、ここからは気配を消しながらノンビリ行こうか」
サーメイヤ王国とゴンドワナ帝国の国境から、歩いて帝国の大きな街を目指す。
戦争中の敵国に進入するので、勿論密入国だ。
「一人で遠出するのは久しぶりだな。いや、エルと会ってからは、初めてかもな」
こうして一人で歩いていると、俺をこの世界に転生させた神様が、何を俺に望んでいるのかを考えてしまう。
目覚めた場所も、師匠に会わなきゃ抜ける事が出来ない魔物の領域だし、むしろ師匠と出会う事も含めて神様がセッティングしたモノだと考えてしまう。
そこで俺の現状を考えると、生きるのさえ精一杯で、未開拓の土地が多いこの大陸で、種族間差別や争いが蔓延している現状を打破させようとして、転生させたのかもしれない。
まぁ、だからって俺が、ゴンドワナ帝国やローラシア王国の体制にまで影響力を及ぼす事が出来るのかという話もあるが。
「おっ、結構デカイめの街が見えて来たな」
ゴンドワナ帝国の街に近付き、門を通らずに進入を試みる。
斥候系職業も高レベルなカイトは、難なく街への進入を成功させる。
国境に近いこの街の名前は、トロル。チラーノス辺境伯領の副首都に位置付けされる街だ。
「(しかし、見ていて気持ち良いもんじゃないな)」
俺の見た帝国の街は、胸糞悪い光景が広がっていた。
人族と獣人族の割合は、サーメイヤ王国と余り変わらない。しかし、あきらかに違う箇所がある。それはエルフやドワーフ族が居ない事、そして一番の違い、獣人族は奴隷しか存在しないという事。
今もカイト目の前を、粗末な貫頭衣を着た獣人が、首輪を付けて主人であろう人間の後ろを歩いている。
奴隷となっている獣人達に共通しているのは、目が死んでいる事だ。
この国では、獣人族というだけで、生まれた時から奴隷以外の選択肢がないと言う。
この国やローラシア王国で、エルフやドワーフの奴隷を余り見かけない理由は、エルフの国サーリット王国やドワーフの国ガウン王国を敵に回すことになるからだ。だからエルフやドワーフの奴隷は、違法奴隷しか存在しない。獣人族も奴隷狩りで連れて来られる違法奴隷も後を絶たない。
ローラシア王国は、獣人族イコール奴隷ではないが、差別は根強くあり、決して住み易いとは言えない。
気を取り直して奴隷商を探す。
俺の気持ち的には、犯罪奴隷以外の全員を買って、解放してあげたい気持ちが強いが、偽善でしかない事も、根本的な解決にはならない事は分かっている。
「さて、この奴隷商はどうかな」
店の外から気配を探る。魔物も人も、強い個体はある程度察知する事が出来る。
「一人かな」
一軒の奴隷商の前で気配を探ると、比較的強い気配を感じる事が出来た。
この国では、いくら優れた素質を持っていても、獣人族である限り報われないのだろう。だから、ローラシア王国に居る獣人族や、未開拓地で暮らす獣人族と比べ、ゴンドワナ帝国の獣人族は、どんなに素質がある人もジョブレベルやスキルレベルの成長していない。逆に言えば、まともに成長していないのに、この程度の気配を感じるならば当たりかもしれない。
俺は一軒目の奴隷商に入って行く。
76
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる