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紹介をしましょう。

餌付けですかね?

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 公式でアズライト様に出会うのは、私がクラスター王国内にある学園に入った後の事です。しかも、普通科・特進魔法科・貴族科・騎士科とある中で、アズライト様は騎士科。私は魔法が使える設定でしたから、特進魔法科となり接点は無いのですが、出会うための最大の接点が此方のジャスパー様です。お兄様→ジャスパー様→アズライト様と言うのが、アメーリアヒロインでの出会い方。もう一人のヒロインでは違った出会いになりますが、正直にいいまして、アメーリアの出会いの方が早く長く逢えるんです。

「あの、僕、アズライト=グラッシュラーです。グラッシュラー伯爵家の二男です」
「ご丁寧にありがとうございます、私アメーリア=アトランティと申します、アトランティ侯爵家の長女ですわ。アリアとお呼び下さいませ」

(てっきり学園に通うまで逢えないと思ってたよ、もう友達になってたなんてお兄様最高!)

「本当、悪い。グラッシュラー伯爵からは言われてたんだが…、まさか女性の香水の匂いで逃げると思わなかったんだ」
「ああ、今日は令嬢の気の入り方が違うからね」
「獣人は鼻が良いですからね、強過ぎる匂いは苦手だとお聞きしていますわ」
「き、気持ち悪くなっちゃって、ちょっと抜け出すつもりが、獣化しちゃって」

 しゅんと項垂れるその頭を撫で撫でしたい!いじけた様にくるくると身体に巻きつく尻尾弄りたい。手を伸ばしたら届くのに、既にやらかしてるから動けないっ
 まるでラーヴァを見る瞳になっていたのか、アイクお兄様がにっこりと笑顔で私を止めてきます。いつも笑顔の優しいアイクお兄様ですが、威圧感がある時は怖いんです、魔王様です。此処は我慢ですよ私。
 獣化してしまった説明を聞いていると、ぎゅるるると聞こえて来るお腹の音。確かに今日はお茶会で、お昼頃に集められたけど、香水の匂いで逃げていたなら何も食べていないのは仕方無い。リス王子にお渡しした分と他にもクッキーの包みを持っていたので、繋ぎにと出す事にした。

「アズライト様。お口に合うかは解りませんが、此方をどうぞ」
「お菓子だ!甘いの?いいの?」
「はい、どうぞ」
「え、こんなのあった?」
「ジャスパー、アズライトを捜してたんじゃないの?」

 にっこり笑顔をお兄様に向けられて、すかさずジャスパー様が顔を背けました。視線じゃないですよ、顔を背けましたよこの方。迷子になっても暫く放置してたな。キラッキラの瞳とニコニコしながらお菓子を頬張るのは、リス王子とそっくりですが、ゆらゆらと楽しげに揺れる白黒の尻尾を見ていると、癒し度アップです。
 ジャスパー様はアイクお兄様とは同じ歳とは思えないくらい、大人っぽく見えるのですが、中身はそうでもないかもしれませんね。まだ成長中だからかもしれませんが、公式のジャスパー様は豪快で俺様な性格だったと思います。騎士科なので身体つきとかも大きくて、アイクお兄様と並ぶと差が本当に凄い。

(イケメンと美女ならぬ、イケメンと美少女か)

 前世では腐った見方もあったこのゲーム、基本的にはヒロインのどっちかと攻略対象なんだけど、アズライト様を推していた私にとっては圧倒的に数が少ない。ヒロインとのNLだろうが、話が腐ってようが物が無いので何でもこいだった。趣味の合う友達もいましたしね、私一人で盛り上がりの欠ける現状ではそうは言ってられません(なんたって、見つかったらアイクお兄様が怖い)が、心の中で盛り上がるだけなら許して欲しい。

「あ、あ、…あの、アメーリア様」
「はい、何ですかアズライト様」
「お菓子美味しかったです、ありがとー。またくれる?」
「勿論です!いつでもお作りしますわ!」
「え?アメーリア様が作ってるんですか!?」

 ニコって無邪気に見せる笑顔に、息するのを忘れたかと思った。アズライト様の笑顔の破壊力といったら!うちの天使兄弟にも勝るとも劣らないです。私が作ってるのは内緒にしてたのに、勢いで言っちゃいましたよ。

(うっ、アイクお兄様から冷気がくる!?) 

「アリア」
「は、はい…」
「今度、僕も持って行きたい場所があるんだけど、いいよね?」
「はい!勿論ですわ」

 お父様が国王様に上げてしまってからは、リス王子に渡す為か侯爵家でのお茶会でのみにしていたこのお菓子。ラーヴァとアイクお兄様のおやつはもっとバリエーションがありますが、きっとアイクお兄様がこの前気にいっていた、ジンジャークッキーとかを持っていくんでしょうね。

(屋敷に帰ったら、温室に見に行きましょう)
 
 こっそりと溜息を吐いている私を見ているアズライト様の視線に気がつき、微笑みを浮かべると恥ずかしかったのか、目を逸らされてしまいました。うーん残念。次に逢ったら、またモフモフさせてくれるかなぁ。





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