関白の息子!

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大戦1

正式な赦免

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 大阪城に着けば、また大名達を一堂に集めての会議となる。言いたいことはもう言ってしまったが、お千達に正式に恩賞を与える必要があるからだ。

「さて、お千。報告を」

「はい。我々南京攻略軍は上海要塞での敵軍の撃退に加え、明の旧王都・南京より明軍を討伐し占領いたしました。またその際、敵軍の将・張居勝を味方に引き入れ、南京城を無傷で手に入れました」

 やはり、勝報と言うのは何回聞いても良いものだ。これで南京には日本式の城を建設し・・・・・・。

「待て! 今、南京城を無傷で手に入れたと言ったか!?」

「は、はい」

 お千は逆に驚いているが、それは異常なことだ。

「どういうことだ井頼!?」

 井頼が出した早馬での報告ではあくまで南京を制圧したと言うだけだった。それが無傷でとなれば色々と話が変わってくる。

「はっ! 皇后様がおっしゃられた通りでございます。降将・張居勝殿は上海に攻め寄せた明軍の副将格で、一計により我らを城内に招き入れ敵大将――

「ま、待て。そもそも何で敵の副将格が降る! 事前に何の調略も無く敵の副将が明国を裏切り城まで献上してきたと言う気か!?」

 井頼の異常な報告についつい頭がどうかしてしまったのかとさえ疑ってしまう。

「全ては皇后様のご人徳の為すことでございます」

「井頼、お前大丈夫か?」

 信頼していた相手だけに悲しくすらなってくる。

「へ、陛下! 勝手に敵将の降伏を認めましたこと誠に申し訳ありません」

 お千が慌てて頭を下げようとする。だが、そうじゃない。

「お千、そんな事はどうでも良い。国力に優る国の高官がどうして降った上に城を明け渡す。意味が分からん」

 場の雰囲気を見れば大名達も同様の表情。連戦連勝、武神の如く南京を攻め滅ぼしてきた、ならまだ分かる。無傷で手に入れたはいくら何でもおかしい。

「順を追って某から説明いたします」

「ああ、頼む。出来る限り要点をまとめてな」

 そして、前に進み出た井頼が今回の戦について話し出す。



「皇后様率いる三万の軍は陛下の命を受け、上海に攻め寄せる明軍迎撃並びに南京錠制圧の任に就かれました。上海に渡り先ず行ったのは上海要塞の建設。加藤殿が既に行われていましたが、それを補助することから始めました」

 少なくともそこまでは俺と福岡城で話した通り、全く問題ないので首肯し次を促す。

「攻め寄せた明軍は三十万にも及ぼうと言う大軍でしたが、全軍一致団結し、また、陛下の考案された策によってこれをほぼ被害もなく撃退いたしました」

 ・・・・・・別に俺の考案ではない。だが、周りにこれだけ大名がいるので持ち上げてくれたのだろう。

「その後南京に向け軍を発したのですが、皇后様は戦禍に晒された途上の村の遺体を供養するように指示を出されました」

「ちょっ、待て待て何を言っている!?」

 どう聞いても拙速を尊ぶ軍隊のする事じゃない。そうでなくても今回は期限もある戦いだったはずだ。

「実は明軍は南京より上海に向かう際、途上の村から徹底的な略奪・虐殺を行っていました。皇后様はそれにより野に晒されたままだった村人の遺体を憐れに思われたようにございます」

 う、嘘、だろ? そんな軍隊聞いた事がない。僧兵達だってせいぜい手を合わせて終わりだろうに。

「降将・張居勝殿は常々、明の政治や行動に疑問を持たれており、この皇后様の行いに感銘を受け我が軍に降り、また南京を内より破る策を献じられました」

「それで、内と外より南京を攻め、城は無傷で手に入れた、と?」

「それだけではございません。張居勝殿は南京において支持者の多い方で、多くの市民や商人をこちら側に引き入れることに成功しております」

 井頼は自信満々に言うが、お千の方は何と言われるかとこちらをチラチラと覗き見ている。軍を遅らせたことを怒られるとでも思っているのだろうか? 確かに今回は結果オーライだっただけで、本来であればいたずらに軍を危険に晒したことを怒らなければいけない。遅延だけじゃない、兵を疲弊させ、敵に付け入る隙を与えたことを。

「・・・・・・へ、陛下?」

 何を言われるかと怯え、ビクビクと覗き込んでくるお千は可愛い。・・・・・・じゃなく、結果良ければ、だ! もうここまで来て最高の成果を上げてきたお千に他に何を言う!?

「よくやった!」

 そう、精一杯の笑顔で褒めてやる。そう、俺の対明戦略が多少ズレようと、お千は最高の結果を残したのだ。今はそれだけが重要で他はどうでも良い。

「お千の下で活躍した者達には相応の褒賞を約束しよう。だが、先ずはお千。お前の口からお前の望む褒賞を言ってみろ」

「はい! では、徳川家の全面的な赦免を」

「分かった。徳川家について、今回の家康の件の罪を全面的に許し、今後再びこの件で責任を問うことはしない。皆、それでよいな!?」

 高らかに宣言し、自分の座る畳の隣を叩く。

「おい、座布団を持ってこい。皇后の座は皇帝の横と決まっている!」
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