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第十章 ダンジョンの外で待つ一騎当千の脅威(第一部終章)

4、闇ギルドVSプリン堂夫婦☆ブランカ&アリアの戦い

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 闇ギルドの二人が出てくる。
 ブランカさんマリアさんが出ようとすると、空野家夫婦が声を上げた。

「ならば、僕達夫婦が出るよ。子供にだけ戦わせておくというのも、まずいだろ?」

『マジシャンとしての勘なんだが、出来るだけ残りの敵に、手の内を見せない方が良い気がする。
 それに、最悪でも敵がボク達に止めを刺す事はないだろ?』

 マジシャンとしての勘はともかく、残りの面子に出来るだけ手を見せない方が良いというのは当たっているだろう。
 ブランカさんマリアさんも頷いている。

「手品師、空野和弘! どちらが相手かな?」
「専業主婦、空野花織! 相手になります!」

「闇ギルド、ペドロ」「闇ギルド、エルナンド」

「……ん? ジョブを名乗ってしまうと自信が無いのかな?
 ご存知の様にプリン堂と言う甘味屋の者です。……私達を相手にまさかですよね?」

 おどけるように、バカにするように、煽りながら喋る和弘さん。

「くっ、魔法使い土使いのペドロ!」
「ふんっ。黒豹、黒豹のエルナンドだ!」

『くろひょう?』

『アニマルジョブです。身体能力が高く、ジョブ名の動物への変化スキルを覚えます。身体強化のスキルも覚え易い比較的に珍しいジョブです』

 手品師と専業主婦って、名乗っても相手に分からないだろうに。和弘さんは、闇ギルドの二人を煽って情報を引き出した。
 何というか、闇ギルドの二人……ちょろいのか?

 エルナンドが、吼え声を上げて獣化していく。
 ペドロから土煙が上がりだす。エルナンドの相手は、和弘さん。ペドロの相手は花織さんだ。

 人型の獣にエルナンドは変化していた。
 全然かわいくはない。黒い体毛が体を覆っているようだが、アレはモフモフを汚すものだ。

 和弘さんは、駆け寄るエルナンドを幻影の壁で阻む。二つ目の壁を避けた時に、触れた手の手応えの無さに、幻影である事に気がついたようだ。         

「止められるものなら止めてみよ!」

 全速力で、一直線に迫っていく。力なく消える幻影に、笑いながらトップスピードで突っ込んで行った。ドガッ! 衝突音と共にエルナンドは鼻血を撒き散らした。
 しかし意識を保ち、本能なのか跳び下がった。追撃に投げられた和弘さんのナイフは避けられた。

 無数に舞い飛ぶトランプのカード、実体となるのは避けきれず当たるカード数枚。
 やっと捕らえたと思えば、幻影の姿が掻き消える。

 エルナンドは、身体能力では和弘さんを上回っていたのかも知れない。だが、その力は発揮されることなく空回りし続けた。


 ペドロの起こした土煙が、花織さんの周りで消されていく……。お掃除のスキルで、やっているらしい。
 ペドロは近接戦をするつもりは無いようで、近づかずに土魔法で遠距離攻撃をしている。

「今度は、こちらの距離でなぶり殺しにしてくれる!」

 いや、殺してはダメだと言われていませんか? 必死に避けながら弓で応戦している様子。だが、花織さんから、無数の幻影の糸がペドロに向かって伸びていた。
 この家族、演技派揃いなのか……?

 突然、足下から幻影の糸がペドロに絡みついていく。

「仮縫い……」

 ペドロの服やローブが拘束具と化していた。足も地面に縫い付けられて、その場を動けない。
 そして、ペドロに幻影の刃が迫る……。

「断裁!」    

 お裁縫スキル、恐るべし……。
 この世界で、専業主婦はバリバリの戦闘系ジョブかもしれない。

 二人は一方的に戦を終わらせた。
 もしかして、このまま二人に戦ってもらった方がいいんじゃないか……。
 一瞬、そんな風に思ってしまう無双ぶりだ。


「闇ギルドも質が堕ちたかな……。弱いと思っていたが、ここまでとは」

 黒装束の男が呟くように言った。

「知ってる奴らが出払ってたらしいが、二線級を送ってきやがったかな?
 どうするお前らやるか? 俺が終わらそうか」

 カーク・スチュアートが、黒装束の男に答える。ついで、ふくめて残りの仲間に尋ねた。
 黒装束の静かな男と、荒々しい気配を放つ男が参戦を表明する。

「ちょっと、体を動かしてくるわ!」
「……殺るよ」


「次は、私達が出ますね」
『闇ギルドの二人より、格上のようです。任せてください』

 ブランカさんとマリアさんが前に出た。和弘さん花織さんが帰ってくる。


 ブランカさんの相手が、変化を始める。この男もアニマルジョブの持ち主だったようだ。
 一見、リザードマンのようにも見える変化だった。

「ヘビ? トカゲでしょうか?」

「ドラゴンだ! 俺はいつか、最強のドラゴンへ完全変化する力を得る!」

「なら、今は不完全なトカゲレベルですね」

「……グォラアーッ!」

 ブランカさんとトカゲ男が、剣の打ち合いを始めた。


 黒装束の男が消える。その姿は、三匹にさえ捕らえられなかった。

『……きえた?』『いるハズなのに、いない』
『カイト、黒いのきえた』

 マリアさんから霧が噴出していた。その霧は攻撃手段でありレーダーの役目もしている。
 霧がたち込めて行き、マリアさんの目に男を浮き上がらせる。

 つめていた距離を取り直し黒装束の男が呟くように言葉を発する。

「……この勝負、降りる。この仕事から手を引こう。
 カーク、自分はこのままココを去る」

「おぅ、隠身が効かなきゃ、そうなるか。いい勝負にはなると思うが? 手前の命はかけないか、相変わらず冷静だねぇ」

 そして、黒装束の男は遠ざかり、完全に気配が消えた……。


 ブランカさんとトカゲ男の攻防は、続いている。
 付与魔法で輝く武器の差だろうか? 徐々にブランカさんが優勢になっていく。

『カイト、あいつ何かたくらんでいる~』
『あやし~』『あそこから、何かするつもり?』

 カークのほかにもう一人いた猿顔の男が、離れた場所からブランカさんとトカゲ男の勝負を見ている。
 三匹の注意を受け、ボクはスキル戦術眼を向けて猿顔の男を観察する。

 何をするつもりなのか? なかなか分からない。戦術眼は、そこまで便利なスキルでもないのだ。

 目の運び、体の動き、位置取り……観察を続ける。
 何をするつもりか読めたのは、相手と同じスキルを持っていたおかげかも知れない。

 ブランカさんとトカゲ男の勝負がつきかけていた。

 勝負がついた瞬間に猿顔の男は空間を跳んだ……。
 そして、いきなりブランカさんの背後に、その姿を現した。

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