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聖痕回収編
ゴンゾウの苦労
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レノは準備を整えて村の入口に向かうと、丁度勇者たちが村から去ろうと馬車に乗り込むのを発見し、ゴンゾウだけが全員分の荷物を馬車の後ろに繋がれた荷台に乗せている姿が見えた。
「今度の行き先は「トウキョウ」だ。また道を間違えて遅れるなよ!!」
「ごめんね~」
それだけを告げると、勇者たちを乗せた馬車は走り出し、ゴンゾウ1人だけが取り残される。どうやら彼を運べるほどの乗り物は存在せず、ゴンゾウはそれを見送るとゆっくりと馬車の後を追うように歩みだした。それを見て今が好機だと判断し、レノはゴンゾウに話しかける。
「ゴンちゃん」
「ん……?」
後ろから声を掛けると、ゴンゾウは振り返りレノの存在に気が付くが、すぐに不思議そうな顔を浮かべる。現在、レノは「ハーフエルフ」だとばれない様に魔術師のように全身をフードで覆っており、すぐにフードから顔を取りだすと、
「……レノ?」
「久しぶりゴンちゃん」
彼の顔を見た瞬間、ゴンゾウは衝撃を受けた様に固まり、恐る恐るレノの顔に大きな掌を差し出し、彼の顔をよく確認する。そして、すぐに強面の顔を喜色満面に変え、
「レノぉおおおおおっ!!」
「そうくると思った!!」
瞬時に「アクセル(肉体強化)」を発動させ、力強く抱きしめてくる腕に耐える。心境的にはプロレスラーに抱きしめられている感覚だった。巨人族のゴンゾウが締め上げる腕力は半端ではなく、肉体強化されたレノでさえも相当に苦しいが、耐えられない事ではない。そのままゴンゾウはレノの身体を持ち上げ、彼の頬の大粒の涙を流れる。
「俺、心配してた!!」
「はは……相変わらずだなぁ……」
久しぶりの再会にレノも嬉しいが、それよりも聞きたいことが山ほどある。ゴンゾウの肩に久しぶりに乗ると直接尋ねてみる。
「一体何してんだ?さっきの人たちは一体……」
「俺、今、学園辞めた」
「……何?」
学園を辞めたというゴンゾウの顔に視線をやると、彼は心なしか表情を暗くさせ、これまでの出来事を語り始める。
――学園が閉鎖され、ゴンゾウはポチ子と共に実家に帰ることになったのだが、彼の家もポチ子同様、下手をしたらそれ以上に貧困であり、彼は自分の巨体と腕力が合った「冒険者」の職業に就く。
「冒険者ギルド」の中でも大手である「赤虎(あかとら)」や「火竜(ヒドラ)」に応募したが、鳳凰学園に通っていたという実績だけでは相手にしてくれなかったという。
仕方なく、地元の弱小ギルドに所属したらしいが、最初の内は魔物の「活性化」として魔物討伐の仕事が多く回り、ゴンゾウも討伐のために遠方の地方にまで駆り出されたらしいが、この地方に移動してから「ある仕事」が舞い込んでくる。
偶然、この地域に訪れた勇者たちが巨人族であるゴンゾウの姿を目にし、彼がまだ若い(こう見えてもレノと1つ違いの14才)ながらに巨体で力強く、大型の魔物相手にも負けない勇猛さに勇者の1人がスカウトしたらしい。
その後、勇者たちの指示で共に行動し、活性化で獰猛性と凶暴性を増した魔物たちを相手に戦い続けたらしいが、どうも最近は「荷物持ち」の役割を押し付けられているらしい。並の馬や牛よりも腕力があるゴンゾウだからこそ、途轍もない量の荷物(武具や防具、食料品以外にも「ハニーベアー」のような価値のある魔物の死骸など)を運び込まされる。
ここ最近、ゴンゾウの扱いはさらに過酷となり、酷いときはこのような場所に置き去りにされ、1人で帰らなければならないとか。
「そんなのさっさと辞めればいい……何て簡単な話でもなさそうだな」
「うむ……俺、お金いっぱい貰っている」
普通のギルドの仕事よりも、体力的にはきついが勇者たちの供をする方がより多くの金銭が入手し、家族のためにも辞めるわけには行かないらしい。ゴンゾウは元々家族と供に山に暮らしていたらしいが、彼の母親はゴンゾウが子供の頃に重い病にかかってしまい、死亡してしまったという。
その後、父親が1人でゴンゾウとその妹を養っていたそうだが、数年前に父親も病にかかってしまい、治療のために聖導教会で入院している。彼は入院代と妹の生活費を稼ぐため、どうしても大量の金銭が必要らしい。
「なるほどね……お父さんが病気……」
「俺、もう家族失いたくない。妹もまだ小さい……放って置けない」
「そうか……」
「レノ、お前、今までどしてた?」
「あ~……まあ、それはおいおい話すよ……」
ゴンゾウに逆に問いただされ、レノは曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す。まさか、世間では天獄島と名高い「放浪島」に飛ばされ、2年間も雪に包まれた北部山岳で暮らしていたなど話せるはずがない。
その後は「トウキョウ」へ戻るゴンゾウと別れなければならず、途中でポチ子もまだ残っているかもしれないことを話すと彼は嬉しそうな顔を浮かべる。そして、別れ際にゴンゾウがレノがどこに向かっているのか尋ね、彼が闘人都市の方角に向かっていると答えると、
「……レノ、俺、ユウシャ様から聞いた」
「……何を?」
「あっちの方角に、変な盗賊が現れた」
盗賊という単語に、レノは反応し、
「……獣人族の女盗賊。強くはないが、逃げ足が速いらしい」
「今度の行き先は「トウキョウ」だ。また道を間違えて遅れるなよ!!」
「ごめんね~」
それだけを告げると、勇者たちを乗せた馬車は走り出し、ゴンゾウ1人だけが取り残される。どうやら彼を運べるほどの乗り物は存在せず、ゴンゾウはそれを見送るとゆっくりと馬車の後を追うように歩みだした。それを見て今が好機だと判断し、レノはゴンゾウに話しかける。
「ゴンちゃん」
「ん……?」
後ろから声を掛けると、ゴンゾウは振り返りレノの存在に気が付くが、すぐに不思議そうな顔を浮かべる。現在、レノは「ハーフエルフ」だとばれない様に魔術師のように全身をフードで覆っており、すぐにフードから顔を取りだすと、
「……レノ?」
「久しぶりゴンちゃん」
彼の顔を見た瞬間、ゴンゾウは衝撃を受けた様に固まり、恐る恐るレノの顔に大きな掌を差し出し、彼の顔をよく確認する。そして、すぐに強面の顔を喜色満面に変え、
「レノぉおおおおおっ!!」
「そうくると思った!!」
瞬時に「アクセル(肉体強化)」を発動させ、力強く抱きしめてくる腕に耐える。心境的にはプロレスラーに抱きしめられている感覚だった。巨人族のゴンゾウが締め上げる腕力は半端ではなく、肉体強化されたレノでさえも相当に苦しいが、耐えられない事ではない。そのままゴンゾウはレノの身体を持ち上げ、彼の頬の大粒の涙を流れる。
「俺、心配してた!!」
「はは……相変わらずだなぁ……」
久しぶりの再会にレノも嬉しいが、それよりも聞きたいことが山ほどある。ゴンゾウの肩に久しぶりに乗ると直接尋ねてみる。
「一体何してんだ?さっきの人たちは一体……」
「俺、今、学園辞めた」
「……何?」
学園を辞めたというゴンゾウの顔に視線をやると、彼は心なしか表情を暗くさせ、これまでの出来事を語り始める。
――学園が閉鎖され、ゴンゾウはポチ子と共に実家に帰ることになったのだが、彼の家もポチ子同様、下手をしたらそれ以上に貧困であり、彼は自分の巨体と腕力が合った「冒険者」の職業に就く。
「冒険者ギルド」の中でも大手である「赤虎(あかとら)」や「火竜(ヒドラ)」に応募したが、鳳凰学園に通っていたという実績だけでは相手にしてくれなかったという。
仕方なく、地元の弱小ギルドに所属したらしいが、最初の内は魔物の「活性化」として魔物討伐の仕事が多く回り、ゴンゾウも討伐のために遠方の地方にまで駆り出されたらしいが、この地方に移動してから「ある仕事」が舞い込んでくる。
偶然、この地域に訪れた勇者たちが巨人族であるゴンゾウの姿を目にし、彼がまだ若い(こう見えてもレノと1つ違いの14才)ながらに巨体で力強く、大型の魔物相手にも負けない勇猛さに勇者の1人がスカウトしたらしい。
その後、勇者たちの指示で共に行動し、活性化で獰猛性と凶暴性を増した魔物たちを相手に戦い続けたらしいが、どうも最近は「荷物持ち」の役割を押し付けられているらしい。並の馬や牛よりも腕力があるゴンゾウだからこそ、途轍もない量の荷物(武具や防具、食料品以外にも「ハニーベアー」のような価値のある魔物の死骸など)を運び込まされる。
ここ最近、ゴンゾウの扱いはさらに過酷となり、酷いときはこのような場所に置き去りにされ、1人で帰らなければならないとか。
「そんなのさっさと辞めればいい……何て簡単な話でもなさそうだな」
「うむ……俺、お金いっぱい貰っている」
普通のギルドの仕事よりも、体力的にはきついが勇者たちの供をする方がより多くの金銭が入手し、家族のためにも辞めるわけには行かないらしい。ゴンゾウは元々家族と供に山に暮らしていたらしいが、彼の母親はゴンゾウが子供の頃に重い病にかかってしまい、死亡してしまったという。
その後、父親が1人でゴンゾウとその妹を養っていたそうだが、数年前に父親も病にかかってしまい、治療のために聖導教会で入院している。彼は入院代と妹の生活費を稼ぐため、どうしても大量の金銭が必要らしい。
「なるほどね……お父さんが病気……」
「俺、もう家族失いたくない。妹もまだ小さい……放って置けない」
「そうか……」
「レノ、お前、今までどしてた?」
「あ~……まあ、それはおいおい話すよ……」
ゴンゾウに逆に問いただされ、レノは曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す。まさか、世間では天獄島と名高い「放浪島」に飛ばされ、2年間も雪に包まれた北部山岳で暮らしていたなど話せるはずがない。
その後は「トウキョウ」へ戻るゴンゾウと別れなければならず、途中でポチ子もまだ残っているかもしれないことを話すと彼は嬉しそうな顔を浮かべる。そして、別れ際にゴンゾウがレノがどこに向かっているのか尋ね、彼が闘人都市の方角に向かっていると答えると、
「……レノ、俺、ユウシャ様から聞いた」
「……何を?」
「あっちの方角に、変な盗賊が現れた」
盗賊という単語に、レノは反応し、
「……獣人族の女盗賊。強くはないが、逃げ足が速いらしい」
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