行ってみたいな異世界へ

香月ミツほ

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行ってみたいな異世界へ

閑話 眠れない夜

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ティスside

どうしよう。私の寝間着のシャツだけを着たタケルの破壊力が凄まじい。

なぜ昨夜あれを着せなかったのか?あの姿のタケルを抱き寄せて‥‥抱きしめて‥‥

無理だ。絶対、眠れなかっただろう。
理性と欲望の狭間で悶絶する一夜。耐えられただろうか?

‥‥と言うか今夜ストゥは耐えられるのか?

布団に入るため両手ををついて四つん這いでベッドに乗るタケルの後ろ姿‥‥足の裏とは思えない滑らかな薄紅色の踵、血管が透けるほど薄い膝裏の肌、白く滑らかな腿はきっと少し吸っただけで花びらを散らすだろう。タケルは快楽に震えるのだろうか?

ほんの一瞬の光景が目に焼き付いた。

あの足が手の届くところにあって触れずにいられるはずがない。

私よりは理性的だと思っていたストゥが手を出したほどの色香に為すすべがあろうはずがない。明日の晩は残念だがちゃんとしたサイズの寝間着を着せよう。

眠れず悶々としていたらストゥがごそごそと起き出し、シャワーに行った。きっとそこそこ時間がかかるだろう。

少しだけ、少しだけ。

ストゥのベッドに潜り込みタケルに向かい合って横になる。緩くカールしたふわふわの髪と黒い長いまつ毛が薄明かりにもくっきりと見える。昨夜は後ろから抱き抱えてしまって寝顔が見られなかった。柔らかな髪を撫で、開襟のシャツの胸元から見える鎖骨を、堪えきれず軽くなぞるように指を這わせると擽ったいのかもぞもぞと身をよじる。

「‥‥ ん ‥‥」

小さなタケルの声に起こしてはいけないと、残念に思いながらベッドを降りようとするとタケルが動いて私に片脚を乗せてきた!!!

実はこれを期待してズボンを脱いでいた私の太ももの外側にタケルの内腿が密着する。しっとりとして滑らかなキメ細かい肌に触れてもいない自身が痛いほど張り詰める。早くベッドを降りなくては‥‥

そう思うのに体が言う事を聞かない。
理性のブレーキは欲望の暴走を完全に抑える事ができず、手がゆっくりとタケルの足に向かって近づいて行く。えもいわれぬ腿の裏の肌の感触に誘われ双丘に向かって滑る手のひら。

理性が切れる!!

「おい。」

腿と臀部境目に触れ、理性が切れるその直前にストゥの押し殺した低い声が聞こえ咄嗟に身を引き、ベッドから転がり落ちる。

「あ‥ぁ‥‥う‥‥」

動揺して言葉にならない声を出しているとストゥが静かに言った。

「頭、冷やしてこい。」

無言で頷いてフラフラとシャワーを浴びに行く。私は何をやっているんだ‥‥。




私がシャワーから戻ってもストゥは起きていた。やはり眠れないらしい。

2人で顔を見合わせ、ため息をつく。

告白したとして、どちらが受け入れられるのか、どちらも断られるのか。

重い沈黙が訪れる。

どちらからともなく横になる。
例え寝付けなくても、体は休めよう。

ストゥがもう1度シャワーに行った。私もまた行くかも知れない。



**********************



ストゥside

昨日俺がつい手を出してしまったからティスがタケルと一緒に寝ると言い出し、タケルもそれを了承した。その時は自分の理性が言う事を聞かなかった事に衝撃を受けて止めもしなかったが、今になって思えば冷静な判断などできていなかった。

そして今日、昨日のティスに嫉妬して俺と一緒に寝るようタケルに頼むと拒む気配すら見せなかった。
嬉しいが心配になる。

昨日と同じように服のまま寝ると思っていたのにバカティスが余計なことを言う。寝間着に着替えろと。

深く考えていなかった俺の目の前にティスの寝間着を借りて着るタケル。ズボンは長いし腰紐をいくら絞めてもずり落ちるので諦め、シャツだけを着て立つその姿は魅了の魔術が見せる幻かと疑った。

長い袖を捲って強調される細い手首、1番上のボタンを止めてもなお、広い襟が隠しきれない鎖骨。そして何よりすらりと伸びる白く細い足。皮膚が薄く触ると身を捩って笑みをこぼす、瑞々しい果実の様な薄紅色の踵。

先にベッドに入った俺を追って両手をついて前屈みになると襟元からのぞく森の王との契約印、そしてその隣にある小さな蕾は奥ゆかしい。

俺は情欲を誤魔化し、保護者のように頭を撫でる。嬉しそうにおやすみなさいと言うタケルにおやすみ、と返す。

背を向けるのもタケルに向かうのも憚られ、並んで仰向けに寝る。

俺達の為の料理は客人まろうどからすればかなり多いようだから疲れたんだろう。もちろん魔術の勉強も疲れたと思う。タケルからすやすやと規則正しい寝息が聞こえてくるまでにそれほど時間はかからなかった。

そしてこれ幸いと寝顔を見つめる。整った幼い顔立ちは柔らかな黒髪に縁取られ滑らかな白い肌を強調している。昨日貪った唇は柔らかく、口内を蹂躙され戸惑う小さな舌は経験の少なさを露にする。深い口づけなんてほとんど経験がないのではないか?自分が初めてなら良いのに、と埒もない事を考える。

仰向けに寝ていたタケルが寝返りを打ち、正面から寝顔を見る。
正面から見る寝顔は目を瞑っているからか普段より更に幼く見えて己の欲望に罪悪感が増す。

だがすでに成人で‥‥昨日吐き出した白濁は大人である事を証明した。

「むにゃ‥‥」

寝ぼけたのか小さな声を出して擦り寄ってくる。俺の鎖骨と顎に額を擦り付け、小さな手で俺の胸板を確かめるように撫で回し、満足そうに微笑む。

そして!!
俺の曲げた片脚に片脚を乗せる!?
少し体温の低い滑らかな太腿がするりと俺の内腿を擦り、際どい所で止まる。

理性を総動員させて固まるも胸に置かれた手が触られて固くなった胸の粒を摘まむ。触られた事のない場所への刺激は予想外に強く、自身の中心が堪えられない程張り詰めた。

理性の限界を感じた俺は処理をするためシャワーに行く。

1度で収まらず2度放ってようやく落ち着きを取り戻し部屋へ戻るとティスが俺のベッドに入ってやがった。しかも毛布の中を動くその手は尻を目指しているように見えた。

「おい。」

声を掛けると慌てたティスがベッドから転がり落ちる。

「頭を冷やして来い。」

そう言って入れ替わりに再びタケルの横に滑り込むがやはり眠れない。

少しして戻ったティスと顔を見合わせため息をついて頷き合い、眠ろうとしたが寝ぼけたタケルに首筋を甘噛みされ、もう1度シャワーに行った。

恋人になりたい、と切に願う。
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