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過去

ずっと好きだった

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 静まり返り、周りがみんなこちらを見る。もちろんマスターも、目を丸くしてこちらを見ている。
 そりゃそうだ。
 公開プロポーズなんて、何かの罰ゲームだろうか。
「恭平?」
「あのさ、大学で、すごいウワサになっててさ」
「知ってるよ」
 だから休学届け出したんだから。
「で、その…お前が、子供、産むって聞いて」
「うん」
「結婚してって言いに来た」
「……うん?」
 ちょっと待て。話が…文脈がわからないのだが。
「…ちょっと待って。なんで結婚?」
「お前が好きだから」
「…………んん?」
 今、この男はなんて言った。

 好きだから?

「…好きって、誰を?」
「お前を」
「誰が?」
「俺が」
「いつから?」
「高校の時から」
「……ちょ、待って」
 確かに恭平とは高校からの付き合いだけれど。
「…なんで?」
 やはり分からない。
 なんで俺を好きになった?というか、今までそんな素振りもなかったのに。
「なんでって…そんなの、分かんねーよ。ただ、お前が男と付き合ってて同棲してるって聞いて、物凄く嫌だって思ったけど」
「…それ、ずいぶん前の話じゃないか」
「そーだよ。ずっと前から好きだった」
 何故それを言わない。ていうか、プロポーズの後に告白って…。
「…あのさ、知ってると思うけど。俺の子供、元彼の子供ね。結婚て…」
「俺が養うし、面倒見る」
「アホか」
「ちゃんと自分の息子として可愛がるから」
「お前まだ大学生な」
「来年卒業だ」
「バカなこと言うな。他の男の子供を妊娠したまま、お前のところへ行けるか」
「俺がいいって言ってる」
「俺は良くない」
「…じゃあ、どうするんだよ。ずっと一人で育てるのかよ」
「俺は中途半端な覚悟なんてしてない」
「限界があるだろ」
「なんでお前にそんなこと、」
「お前が好きだからって言ってるだろ!っ……だから言ったんだよ、社会人なんてやめとけって、何回も!」
 そういえば言っていた気もする。
 修也が浮気するたび、恭平に愚痴を吐いていたのだ。
 それを見兼ねてと思っていたが、俺を好きだったとは知らなかった。
「…お前って物好きなのな」
「知ってる」
「お前の親兄弟が許さねーよ」
 自暴自棄になっていたのもあるかもしれない。
 この頃は不安というものが心にズシンと乗りかかっていたのだ。
「俺の親にはもう言った。相手が了承するならそれもいいって言ってた。兄弟は翔平…お前も何度か会っただろ。お前ならいいと思うってさ」
「…見返りはなに?」
 捻くれた言い方にも、恭平は気にしなかった。
「特に要らないけど、欲しいのはお前」
「…………」
 もう二度と恋愛なんてしないと誓ったけれど。けれど、この男なら…一応マジメだし、忠実だし、優しいし。
 もう一度、恋愛できるかと思ったのだった。
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