姉らぶるっ!!

此葉菜咲夜

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【本幕・第1章】暴気の鈴がりんりんりんっ

1.空手少女のパンツからハミ出てますっ!

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まえがき
※この話から本幕(本編)に入ります。
 ここから読むと意味が解らなくなるかもしれません。
 1話が短いので、未読の方は是非最初から読んでみてください。
_______________________________

 五月七日、午前七時半。
花穂姉ちゃんからのメールで眼を覚ます。
どうやら生徒会の仕事で加奈子さんと先に登校したようだ。

「――加奈子さん……」

 昨日、加奈子さんの家を出るときには、二人とも笑顔に戻っていた。
今考えてみると、加奈子さんが俺を弟君と呼ぶのは青山姉妹の弟だからではなく、というそのままの意味だったのだ。
それに、姉たちも昔から知っていて、黙っていたというわけだ。

(――いつか父さんと母さんが話してくれるか……)

 俺がいつ、どんな理由で結城家から青山家に来たのか。
両親が切り出すまでしばらく封印することにしよう。

「ん? 玄関で音がする」

 玄関をドンドンと叩く音がする。
この家にはモニターつきの立派なインターホンがあるというのに……

 こんな馬鹿なことをする奴はあいつしかいない。
早く行かないと、玄関に穴を空けられてしまう。
早足で階段を駆け下りて、玄関を開錠してドアを開く。

「おい! インターホン鳴らせよな! スズ!」
「あっ、インターホン忘れてた……花穂ちゃんはもう学校?」
「生徒会の仕事で早めに行った。お前、家から逆走してどうすんだよ?」

 目の前に朝っぱらから騒がしく登場した女。
荒木鈴あらき りん、同じ小中学校に通った同級生でこの近所に住んでいる。
鈴という名前だが、りんだと可愛いので昔から俺はと呼んでいる。

「アオにちょっと話したいことあって……」

 そして、俺も蒼太の蒼の読み方を変えてと呼ばれている。

「ちょっと待ってろ。すぐ用意して出るから」

 顔を洗って、歯を磨いて、着替えて……
朝食を花穂姉ちゃんが用意してくれているが、食べる時間はなさそうだ。
玄関から出て行くと、落ち着きなさそうな様子でスズが待っている。

「なんだ? モジモジして、おしっこか?」
「違うっ! 行くぞっ!」

 早足で通学路を進んでいくスズのあとを追いかけた。

「それで話ってなんだ?」

 さっきからずいぶんと早足で歩いている。
朝はのんびり歩いてほしいものだ。

「紗月師匠が空き巣捕まえただろ?」

 スズは空手をしている。紗月姉の後輩だ。
自称紗月姉の弟子として、変態を信奉している馬鹿なのだ。

「捕まえたけど? お前、連休に会って、直接聞いてるだろ?」
「うん、聞いた。で、そのあとの平日に痴漢に遭った……この道で」

 空き巣と痴漢は毛並が違うと思うのだが……
そもそも、こいつは痴漢に遭って驚くタイプではない。

「え? ボクっ娘に痴漢するって、趣味変わってるよな……」

 スズの髪型はベリーショート、男の子に間違えられそうな外見である。
だから、女友達というより俺と里志の男友達に近い感覚だ。

「誰がボクっ娘だよ……あたしはどう見ても女だろ?」
「お前のその短いスカートから見える生足はきれいもんな!」

 スズのスカートはミニスカを超えて短い。
何度か生活指導の先生や、風紀委員から注意されているのを見たことがある。




 しばらく歩いていると曲がり角で里志と合流した。

「うっす、蒼太! 鈴!」
「おは。里志!」

 スズは手刀のように手をあげて挨拶をしている。

「おはよう、里志」
「紗月さん、空き巣捕まえたんだろ!? すげえな!」

 なんだ、このちょっと時間を置いてから拡散する武勇伝。
あれはもう先月末の話だったはずだ。俺も忘れかけていた。
それに、里志とは昨日会っているが、そんな話は出なかった。

「やっぱり師匠はあれっしょ? バーンッとハイキック一発で!」

 そう言いながら、華麗にハイキックの真似をするスズ。
ピシッと伸びた長い足、めくれた短いスカート、はみ出るブルーのパンツ。
足のつけ根とパンツに黒いものが見えている。

「スズ、パンツ丸見え! 今日は青か……マン毛もちょっと出てるぞ!」

 俺がそう突っ込むと、里志はたまらない顔をして吹き出した。

「うぐふっ! 蒼太……パンツはいいとして、陰毛はスルーしろよっ!」
「うわ……もうアオも里志も最っ低っ!!」
「それで、スズ。さっきの痴漢の話は?」

 先程の痴漢の話が途中だった。もう学校に着いてしまう。
里志は教室へ入る前にトイレに向かった。

「アオ、今日いっしょに帰ってくれない? 痴漢防止!」
「は? 痴漢ぐらいお前がぶっ飛ばせよ」
「それがダメだから頼んでるんだろ!」
「はいはい……今回は全然メリットがない頼まれごとか……」
「ある! 報酬にパンツあげる!!」

 スズの甲高い声と、意味のわからない発言が全員の注目を集める。
昨日は四条先輩の使用済みスイムサポーターをナマ脱ぎで頂戴した。
物凄く興奮して、昨夜は自家発電工場長となってしまった。

 なんと、今日はボクっ娘が、パンツをくれると言うではないか!
ハイキックの時に陰毛ごと丸見えになった、あのブルーのおパンツだろうか。

 ――――全然、いらねー!!
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