種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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腐敗竜編

迷宮内の再会

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「「一体どういうことだ!?」」
「わうっ……」
「わぅんっ!?」


通路について早々にアルトとリノンはレノに詰め寄り、ポチ子のような呻き声を上げて彼女を驚かせる。ゴンゾウについては先ほどまでポチ子とレノを掲げて喜び勇んでいたが、今はジャンヌを背負っている。彼女の魔力はレノのお蔭で回復したが、まだ体力の方は戻っていない。

ちなみにミカはレノを見て「隠しキャラきたーー!!」などと小声で呟いていたが、アルトとリノンに阻まれて声を掛けられずにいた。


「レノ……今まで何処に……」
「それよりも、君は何故ここにいるんだ?」


心の底から心配していたリノンは涙目で問い詰めるが、アルトの方は彼女を阻んで不審げに問い質す。彼は以前にレノを「センチュリオン」の一味ではないかと疑っているため、何故このような地下迷宮にレノが居るのかが気にかかる。

もしや、彼の目的が自分たちのように「エクスカリバー」や「カラドボルグ」などの聖剣であるのなら、自分たちの邪魔をする気なのかと睨み付ける。だが、当のレノは面倒気に欠伸しながら、どう説明すればいいのか考え、


「何でと言われてもね……閉じ込められたというか」
「閉じ込められた……?一体誰に?」
「井戸を覗き込んだら、そのまま落ちた」
「ふざけるな!!」
「わうっ……」
「わふぅっ……」


レノの答えにアルトは激昂するが、またもや彼はポチ子のような呻き声を上げる。当のポチ子はピコピコと耳を震わせ、複雑な表情を浮かべる。


「どうしたアルト?何をそんなに興奮してるんだ?」
「……なんでもない」


リノンは妙に突っかかるアルトに違和感を覚えながらも、彼を落ち着かせる。流石にアルトの方も冷静さを欠いたのを理解したのか、気まずい表情を浮かべて離れる。一方でレノとしては何故ここまで彼に言い詰められるのか分からない。


「説明しろと言われても……実際に落ちてここに閉じ込められたのは本当だよ」
「落ちて……いや、その前にどうやってこの島に……」
「……犯罪でも犯してこの島に幽閉でもされていたのかい?」
「アルト!!」


アルトは不審げにそのような言葉を告げ、リノンが怒ったように顔を向けるが、彼としてはどうしてもレノがこの迷宮内に来た経緯を知らなければならない。彼は面倒そうに頭を搔きながら、色々と考え込む。素直に話したところで信じてもらえるわけも無く、かと言って適当な嘘で誤魔化せるとは思えないが。ならば敢えて真実と虚実を交えて話す。


「そうだな……4年前に学園であのヴァンパイアに攫われた後、上手く逃げ出したと思ったらこの島に居た。あとはずっとここで暮らしてたんだけど、2年前に一度この島から抜け出した。それで、その後は色々とあってまたここに攫われた」
「くぅんっ……?」
「抜け出したって……この島はどれほど地上と離れていると思ってるんだ?それに島の周囲には常に「嵐」の結界が張られているはず。君が「転送」の魔法を使えたとしても、脱出は容易ではないはず」
「転移魔方陣を使えば問題ないんじゃない?」
「……馬鹿を言うな。転移魔方陣は膨大な魔力を必要とする。それに地上に移動するための魔方陣を用意して置かなければ転移できない」


アルトの言う通り、通常の「転移魔方陣」は単体では起動しない。アイリィの場合は聖痕同士の共鳴で無理やりレノを呼び出すことは出来るが、普通は二つの魔方陣を用意して置かなければ転移できない。

ちなみに「転移」の魔法は複数存在する。以前にレノが使用していた「転送」のように魔方陣無しで移動したり、魔石を使用して「瞬間移動」などの高等転移魔法も存在する。レノは面倒そうに黒衣の左腕を見せつけ、全員が不思議そうにその腕を見ると、


「ほりゃっ」


ジャララララッ……!!


「「うわっ!?(くぅんっ!?)」」


黒衣の包帯の間から「銀の鎖」が出現し、一瞬で地面を抉り込んで「転移魔方陣」の紋様を生み出す。すぐに鎖を回収し、地面に出来上がった魔方陣の上にレノは手を置くと、


「せぇのっ……!!」


ボウッ……!!


「なっ……!?」
「これは……」
「何て魔力……!?」


レノが触れた個所から魔力が送り込まれ、転移魔方陣が光り輝く。本来、魔方陣を発動させるには人間の魔導士が数十人がかりで魔力を送り込まなければならないのだが、全種族の中で一番の魔力容量を誇るハーフエルフである彼にとっては問題ない。魔方陣から手を離すと、レノは光り輝く魔方陣の上に乗り込み、


「とりあえず場所移動しようか……ここは何かと危険だし」


彼の言葉に全員が顔を見合わせ、恐る恐るアルトは尋ねる。


「……ど、何処に転移する気だ?」
「地下二階の中心にある大広間。あそこに家、ていうか住処がある」
「地下二階……?」
「いいから早くしてくれ……あと10秒ぐらいで消えちゃうから」
「くっ……」
「ど、どうするんですかぁ?アルト様……」
「悩んでいる暇はないだろう。私は行くぞ」
「わ、私もです」
「私も行きます……命の恩人を疑いたくはありません」
「……俺も、レノを信じる」
「あっ、ゴンちゃんは少し待っててね。流石に乗り切れないから、後で迎えにいく」
「……うっす」


アルトとミカ以外の者が魔方陣に乗り込もうとするが、ゴンゾウだけは魔方陣の傍で控える。そんな彼らにアルトは頭を悩ませ、


「……もしも不審な行動を起こしたら、容赦しない」
「アルト……いい加減に」
「話してないで早くしてっ」
「くっ……!!」
「は、はい!!」


2人が魔方陣に乗り込むと、地面の魔方陣の発光が強まり、一瞬で周囲の景色が変化した――
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