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現在

慎也・5歳

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「恭平、慎也。またソファで寝てる……風邪引くよー?」
 まだ朝の五時だが、朝食を作るべく寝室から出てきた零が呆れたように二人に声をかける。
「二人共、またテレビ見ながら寝てるんだから…」
 ふうっとため息をつき、毛布を持ってきて二人にかぶせようとする。
 すると、恭平に腕を引っ張られ、ソファの上へと押し倒される。
「わっ!?」
「おはよ、零」
「恭平、起きてたの」
「お前がこっち来てから起きた」
「そう。…それで?なんで俺は押し倒されたの」
「…昨日さぁ、慎也を適当に寝かしつけてからお前のこと抱く気だったワケ」
「知ってる。だから早く寝たの」
「聞き捨てならないな。…ってことで、今からソレをしようと思います」
「バカなの?」
「バカじゃねーけどさぁ。なんていうかさ、そろそろ二人目欲しいなって」
「バカ」
「慎也は男の子だったからさ、次は女の子だろ?」
 チュ、とキスしてくる恭平に諦め、身体の力を抜く。
「…どうせ言ったって、やめる気ないでしょ」
「正解」
 遠慮なく口腔に舌を入れ、貪ってくる恭平を当たり前に受け入れる。
「…朝ごはん、どーする?」
「後でコンビニで何か買ってくる。今はこっちに集中しろって」
「朝からこんなことして、バチ当たりそう…」
「誰がそんなモン当てるんだよ。てか、を覗いてるヤツいるなら俺が殺すけどな」
 物騒な単語に、顔をしかめる。
「あのね。そういう単語、慎也が覚えたらどうするの」
「いつかは覚えるだろ?」
「今じゃなくていいでしょ」
「僕がどうかしたの?」
 幼い声に、二人で飛び起きる。
「慎也!?」
「お、起きたの…」
「おはよ、パパ、ママ」
「「おはよう…」」
 残念そうな恭平の横で平気で澄ましている俺が、実はほんの少し残念と思っていることは秘密だ。


 五年前、慎也を生んだ。
 一人で産む予定だった俺の隣にいてくれたのは、やはり恭平だった。
 もちろん(こちらの)親には猛反対されたし、何度も説得された。慎也が生まれてからも説得されていた。
 けれど説得に推されそうになった時、いつも恭平は、ハッキリとうちの親に対して言ってくれた。
「俺が零と一緒にいたいんです。子供なら、絶対にちゃんと可愛がります。自分の子だと思ってます。俺は零が愛おしいって思うから、零が愛おしいものも、そう思えるようになります」
 だから、と付け加えた。
「結婚を許してください。お願いします」
 最終的に、恭平の親兄弟までわざわざ頼みに来たものだから、とうとううちの親も認めてくれたのだ。
 だがやはり恭平やその家族には申し訳ないようで、顔合わせの時も少しぎこちなかった。

 その時の言葉を当たり前のように今でも守ってくれている恭平に、いつしか惹かれていた。
 一番悩んだ命名の時も、恭平は率直に言ってくれた。
「いつか、この子に話す気があるのなら、あの男から字を取ってもいいと俺は思うよ。それに、名前なんかで何かが変わるワケじゃないし?」
 笑って言ってくれた彼には今でも感謝している。
 慎也と名付けた自分の息子は、父親を恭平だと信じきっているだろう。
 けれど今は、それでいいと思っていた。だってあの人…実の父親である修也は、二度と自分たちに関わることがないと思っていたからだ。
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