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第四部隊編
筋肉痛
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「……という事があった」
「はあ……」
「何というか……やっぱり兄貴は半端ないっすね」
「……凄い」
単独で死霊使いが操作した3人の死人を倒したレノにバル達は圧倒され、カリナとポチ子は尊敬の表情を浮かばせ、コトミも素直に感心する。
「まあ、自分でも良く勝てたよ思うよ」
覚えたての「魔闘術」が上手く通用したのが幸いだったが、後にレグにこの話を行うと彼女からは軽く注意をされた。まだ完全に習得していない「魔鎧」で「六芒星」の防御魔方陣を突破出来たのは奇跡に近いらしい。
基本的に魔鎧はあらゆる魔法を「打ち消す力」を持つが、決して魔法を「無効化」できるわけではない。
――レグ自身も完全に把握していないが、彼女が扱う魔闘術とは魔法に対抗するため作り出された武術であり、身体を纏わせるように形成した「魔鎧」は外部から衝突した「魔法」に魔力を送り込み、内側から崩壊させる事が出来るという。
だが、この魔闘術にも大きな欠点はあり、自分の身体に魔鎧を形成する間は魔法を発現できない。それは肉体強化も含まれ、仮にレノが身体全体に「魔鎧」を纏わせた場合、他の魔法は一切発現できなくなる。
しかし、レノが死人との対戦で「右腕」だけに「魔鎧」を纏わせる場合などは例外であり、身体の一部だけに魔鎧を発動させた場合は、その他の部分で魔法や肉体強化を使用する事は可能。現にレノも魔鎧を右腕に纏ったまま、両足に肉体強化と嵐属性の魔力重ね合わせて発動させる「瞬脚」を使用する事が出来た。
「まあ……完全に覚えるまでは実戦で使用するなとは注意されてたけど」
「だろうね……にしても、にわか仕込みの魔鎧であのイカれた死霊使いに勝つとはね。成長したんじゃないか?」
「あんな程度だったら、地下迷宮で何回も戦闘してるしな……」
「マジっすか!?本当(マジ)で半端(ぱ)ねえっすね!!」
「あの噂に聞く、天獄島の地下迷宮かい……そう言えば財宝とかは無かったのかい?」
「う~ん……色々と金目の物はあったと思うけど、気絶している間に没収された」
地下迷宮内でレノが集めた殆どの道具は、地下二階層での「ゴーレム・キング」との戦闘の際に「カラドボルグ」を使用して彼が気絶している間、アルト達が全て回収して王国側に管理される。
一応は「地下迷宮」を含む放浪島はバルトロス王国の領土として認められており、地下迷宮内で発見された代物も王国の所有物であるというのが王国側の言い分であり、結局レノが見つけ出した道具の返却は却下された。
最も「カラドボルグ」に関しては選定(本来の所有者はアイリィだが)されたレノにだけ所有権があり、この大聖剣に関してはバルトロス王国は関与できない。第一に回収された所で扱える人間は世界でレノ1人だけであり、それならば彼に任せる事で王国のために使用して貰う事が最良である。
「何だい、つまらないね。あんた英雄なんだろう?無理言って、返却して貰えないのかい?」
「一応は抗議してみたけど、王国に完全に仕えるなら返してもいいとは言われた」
現在のレノは所謂「客将」に近い立場であり、それなりに地位を与えられたが、完全に王国側に忠誠を誓ったわけではない。
「いつつ……」
「……怪我?」
「いや、筋肉痛……だと思う」
唐突に右腕を抑えるレノにコトミが心配そうに話しかけるが、彼女を安心させるように頭を撫でる。どうやら連日の「魔闘術」の訓練で思ったよりも身体が疲労していたらしい。
「少し休むよ……飯は要らない」
「ああ、ならあたしが代わりに晩飯を……」
「それはさせねぇっすよ!?姉御に造らせたら、食中毒患者が続出するっす!!」
「どういう意味だい!?」
「……私が作る」
「わ、私もお手伝いします!!」
バルの料理の腕は最悪であり、ここで居候しているコトミとポチ子もその事は身をもって知っており、すぐに厨房に駆け出す。
「言っとくけどねぇ!!あたしだって昔よりは腕を上げたんだよ!?3回に1回はフライパンを溶解させないようになったし!!」
「それ料理が上達したとか、しないとかいうレベルじゃないっすよねぇ!?どうやったらフライパンを溶かす事態になるんすか!?」
「しょうがないだろう!?ちまちま焼くのは面倒なんだからさ!!一気に焼いた方が楽だろうが!?」
「後片付けするのはあたし等なんすよ!!」
後ろからカリナとバルの言い争う声を聞きながら、レノは階段を登り、無意識に手すりに右腕を回した時、
ビキィイッ!
「ぐあっ……!?」
「「え?」」
突然、右腕に激痛が走り、そのまま雷製を崩して階段下に落下しかけ、カリナとバルが目を見開くが、
「何の!!」
ドォンッ!!
「「おおっ!?」」
獣人族のように空中で一回転して体勢を整えると、見事に床に着地を決める。その動きにカリナとバルが感心した風に拍手を行うが、
「あたたたっ……」
「ちょっ……」
「大丈夫っすか兄貴!?」
すぐにレノが右腕を抑えるのを見て慌てて二人が駆け付ける。バルが彼の右腕を確認すると、右腕が異様なまでに赤く腫れていた。
「こいつは……筋肉痛なんてレベルじゃないね。カリナ!!コトミを呼んできな!!」
「了解っす!!」
――厨房で料理を始めようとした時にコトミを呼び出され、すぐにレノの治療を行う。幸い、怪我自体は軽く、回復魔法で完治は出来たが筋肉痛までは魔法では治せないため、レノは今日一日はゆっくりと休むことにした。
「はあ……」
「何というか……やっぱり兄貴は半端ないっすね」
「……凄い」
単独で死霊使いが操作した3人の死人を倒したレノにバル達は圧倒され、カリナとポチ子は尊敬の表情を浮かばせ、コトミも素直に感心する。
「まあ、自分でも良く勝てたよ思うよ」
覚えたての「魔闘術」が上手く通用したのが幸いだったが、後にレグにこの話を行うと彼女からは軽く注意をされた。まだ完全に習得していない「魔鎧」で「六芒星」の防御魔方陣を突破出来たのは奇跡に近いらしい。
基本的に魔鎧はあらゆる魔法を「打ち消す力」を持つが、決して魔法を「無効化」できるわけではない。
――レグ自身も完全に把握していないが、彼女が扱う魔闘術とは魔法に対抗するため作り出された武術であり、身体を纏わせるように形成した「魔鎧」は外部から衝突した「魔法」に魔力を送り込み、内側から崩壊させる事が出来るという。
だが、この魔闘術にも大きな欠点はあり、自分の身体に魔鎧を形成する間は魔法を発現できない。それは肉体強化も含まれ、仮にレノが身体全体に「魔鎧」を纏わせた場合、他の魔法は一切発現できなくなる。
しかし、レノが死人との対戦で「右腕」だけに「魔鎧」を纏わせる場合などは例外であり、身体の一部だけに魔鎧を発動させた場合は、その他の部分で魔法や肉体強化を使用する事は可能。現にレノも魔鎧を右腕に纏ったまま、両足に肉体強化と嵐属性の魔力重ね合わせて発動させる「瞬脚」を使用する事が出来た。
「まあ……完全に覚えるまでは実戦で使用するなとは注意されてたけど」
「だろうね……にしても、にわか仕込みの魔鎧であのイカれた死霊使いに勝つとはね。成長したんじゃないか?」
「あんな程度だったら、地下迷宮で何回も戦闘してるしな……」
「マジっすか!?本当(マジ)で半端(ぱ)ねえっすね!!」
「あの噂に聞く、天獄島の地下迷宮かい……そう言えば財宝とかは無かったのかい?」
「う~ん……色々と金目の物はあったと思うけど、気絶している間に没収された」
地下迷宮内でレノが集めた殆どの道具は、地下二階層での「ゴーレム・キング」との戦闘の際に「カラドボルグ」を使用して彼が気絶している間、アルト達が全て回収して王国側に管理される。
一応は「地下迷宮」を含む放浪島はバルトロス王国の領土として認められており、地下迷宮内で発見された代物も王国の所有物であるというのが王国側の言い分であり、結局レノが見つけ出した道具の返却は却下された。
最も「カラドボルグ」に関しては選定(本来の所有者はアイリィだが)されたレノにだけ所有権があり、この大聖剣に関してはバルトロス王国は関与できない。第一に回収された所で扱える人間は世界でレノ1人だけであり、それならば彼に任せる事で王国のために使用して貰う事が最良である。
「何だい、つまらないね。あんた英雄なんだろう?無理言って、返却して貰えないのかい?」
「一応は抗議してみたけど、王国に完全に仕えるなら返してもいいとは言われた」
現在のレノは所謂「客将」に近い立場であり、それなりに地位を与えられたが、完全に王国側に忠誠を誓ったわけではない。
「いつつ……」
「……怪我?」
「いや、筋肉痛……だと思う」
唐突に右腕を抑えるレノにコトミが心配そうに話しかけるが、彼女を安心させるように頭を撫でる。どうやら連日の「魔闘術」の訓練で思ったよりも身体が疲労していたらしい。
「少し休むよ……飯は要らない」
「ああ、ならあたしが代わりに晩飯を……」
「それはさせねぇっすよ!?姉御に造らせたら、食中毒患者が続出するっす!!」
「どういう意味だい!?」
「……私が作る」
「わ、私もお手伝いします!!」
バルの料理の腕は最悪であり、ここで居候しているコトミとポチ子もその事は身をもって知っており、すぐに厨房に駆け出す。
「言っとくけどねぇ!!あたしだって昔よりは腕を上げたんだよ!?3回に1回はフライパンを溶解させないようになったし!!」
「それ料理が上達したとか、しないとかいうレベルじゃないっすよねぇ!?どうやったらフライパンを溶かす事態になるんすか!?」
「しょうがないだろう!?ちまちま焼くのは面倒なんだからさ!!一気に焼いた方が楽だろうが!?」
「後片付けするのはあたし等なんすよ!!」
後ろからカリナとバルの言い争う声を聞きながら、レノは階段を登り、無意識に手すりに右腕を回した時、
ビキィイッ!
「ぐあっ……!?」
「「え?」」
突然、右腕に激痛が走り、そのまま雷製を崩して階段下に落下しかけ、カリナとバルが目を見開くが、
「何の!!」
ドォンッ!!
「「おおっ!?」」
獣人族のように空中で一回転して体勢を整えると、見事に床に着地を決める。その動きにカリナとバルが感心した風に拍手を行うが、
「あたたたっ……」
「ちょっ……」
「大丈夫っすか兄貴!?」
すぐにレノが右腕を抑えるのを見て慌てて二人が駆け付ける。バルが彼の右腕を確認すると、右腕が異様なまでに赤く腫れていた。
「こいつは……筋肉痛なんてレベルじゃないね。カリナ!!コトミを呼んできな!!」
「了解っす!!」
――厨房で料理を始めようとした時にコトミを呼び出され、すぐにレノの治療を行う。幸い、怪我自体は軽く、回復魔法で完治は出来たが筋肉痛までは魔法では治せないため、レノは今日一日はゆっくりと休むことにした。
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