種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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第四部隊編

魔闘術の可能性

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「ふ~ん……予想よりも早かったね~」
「早かった、という事はこうなる事を予測してたの?」
「まあね~私も小さい頃はよく同じように無茶したよ」


翌日、包帯を巻いたレノの右腕を見てレグは笑い声を上げ、彼女は彼の右腕を引き寄せ、筋肉痛で若干痛みはあるが傷自体は完治している。


「治療は終わってるみたいだね~腕のいい回復魔導士が居るの~?」
「まあ、似たようなのが」


昨日の時点でコトミが右腕を治療してくれたが、腫れは引いたのだが筋肉痛が収まらず、腕が動かすだけでも痛い。


「……腕の痛みが治まらないのは魔闘術に関係しているのか?」
「正解~まだ実戦段階じゃないのに無理に「魔鎧」を使用して戦ったからだよ~?」


レグの話によると右腕の負傷の原因は昨日の戦闘で完全に習得していない「魔闘術」を使用したせいであり、右腕の筋肉痛が治まらない理由も関わっているという。


「君の右腕は今、無意識に微量の魔鎧を纏っている状態だね~。だから治癒魔法も受け付けにくいし、痛みもなかなか治まらないんだよ~」
「……何時頃に治まる?」
「それは分からないけど、君が完全に魔闘術を習得していればこんな事態も起きないはずなんだけどね~」
「なら、あとどれくらいで習得できる?」
「う~ん……今の調子だと2週間ぐらいかな~」
「2週間もこの痛みに耐えないといけないのか……」
「そんなに痛いなら治療してあげようか~?」
「出来るの?」
「ほら、手を出して~」


レノの右腕を掴みとり、レグは彼の腕に自分の右人差し指を差し出すと、彼女の腕から魔力が迸る。


「魔闘術はこういう使い方もあるよ~」


そのままレグの右腕に彼女の「魔鎧」が纏われ、人差し指が右腕に触れた瞬間、


「……っ!?」


ずっと痛みを感じていた右腕が唐突に軽くなり、数秒もしないうちに筋肉痛が完全に治まり、彼女が右腕を解放した時には何事もなかったように腕が軽くなる感覚が広がる。


「はい、終わり~」
「おおっ……軽くなった」
「私の魔鎧で君の未熟な魔鎧を打ち消したんだよ~」


昨日からの腕の痛みの原因はレノの右腕の魔力が暴走し、無意識に微弱な魔鎧を形成していたのが原因だったらしい。だが、レグの魔鎧によって右腕の魔力が乱され、上手くレノの魔鎧を崩壊させたという。先ほどと比べると大分右腕も軽くなり、念のために魔鎧を形成してみても特に異変はない。

暴走の原因は昨日の戦闘で無理に魔闘術を使用した事が原因であり、レグのお蔭で乱された魔力も元に戻り、筋肉痛と思われていた痛みも引いた。


「けど、今の段階で魔闘術の戦闘での使用はだめだからね~。これ以上の無理な使用は右腕が使い物にならなくなるよ~」
「分かったよ……けど、色々と用途がありそうだな」
「そうだね~丁度いい機会だから、魔闘術の応用法も教えてあげようか~」


レグは笑みを浮かべると、自分の両腕を差し出し、すぐに彼女の両腕の周囲の空間が揺らぎ始める。


「これが私の魔鎧だよ~触ってみて~」
「あんたの話し方、誰かと似ているような……おおっ」


彼女の両腕に触れようとした途端、素肌に触れる直前でレノの掌に見えない「壁」のような物に阻まれる。まるで彼女の両腕に不可視の「鉄甲(ガントレット)」が纏われているように感じられる。


「君のと違って、私の攻撃型の魔鎧は硬度が高いからね~存分に味わいなよ~」
「俺のとは大違いだな……こっちが欲しい」


レノの「魔鎧」は右腕全体に分厚いゴムを纏ったような感触であり、弾力性が高い。レグの魔鎧の場合はまるで鋼鉄を身に着けているような感覚であり、この状態で打撃を叩き込めばかなりの衝撃を与えられるだろう。


「魔闘術は大きく分けて「攻撃型」と「防御型」に分かれてるのは教えたよね?けど、実は魔闘術には段階があるんだよ~」
「段階?」
「まずは……形状変化」


両腕からレノの腕を引き剥がすと、レグの両腕の空間の揺らぎが変化を起こし、レグは机の上に載っている木製のコップを確認すると、


「とりゃっ」


ズバァアアッ!!


「へえ……」


彼女が右腕を振り払う動作を行っただけで机の上のコップが二つに裂かれる。レノのように嵐属性の魔法を形成して切り裂いた様子ではなく、恐らくは右腕に纏わる魔鎧の形状を変化させ、不可視の「刃」に造り替えたのだろう。


「これが形状変化……まあ、君ならすぐに覚えられると思うよ。三週間目辺りから」
「それでも三週間か……」
「形状変化の次の段階は「硬度変化」だね」
「硬度?」
「文字通り、魔鎧を「硬質化」や「軟質化」できるんだよ。最も、攻撃型は「硬質化」だけで防御型は「軟質化」しか扱えないけどね」



レグの説明によると、より精錬された魔鎧はある程度の「硬度」を自在に変化する事が可能であり、攻撃型の魔鎧ならば極めれば「金剛石並」の硬度に変化できる。逆に防御型の魔鎧は軟度を引き伸ばし、外部からの強い衝撃を受け流せるらしい。



「私が扱えるのは硬質化だけだからね~……軟質化は専門外」
「そうなのか……軟質化ねえ」


現時点での今のレノの魔鎧はゴムのような弾力性を保ち、試しに左腕を鎖の腕に変形させて叩き込んでみた事もあったが、見事に魔鎧の弾力で弾かれた。


「最後に上の段階があるんだけど……これは君には早すぎるからまた今度ね~」
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