種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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第四部隊編

参加証の争奪戦

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――ネクロマンサーによる襲撃から数日が経過し、剣乱武闘の階さ今で残り日数が20日を切る頃入ると、世界中の冒険者が闘人都市に終結し、さらには各種族から腕利きの戦士たちも収集される。今までの歴史上、今回の剣乱武闘の参加希望者の数が歴代記録を更新した。


だが、事前に大会の参加者の内「300名」は既に選出されており、残りの参加人数は700名と限定されている。大会開始前15日前から参加証の販売される予定だが、既に大勢の有力貴族や冒険者ギルドの冒険者や武芸者が予約を争っており、大会の参加希望者は血眼になって「参加証」を得るために動き出す。


レノ達は既に大会参加が決まっており、参加証は用意されているが、ここで1つ大きな問題が生じた。大会前に訪れた王国側の使者から事前に選定された「300名」の「参加証」を狙う者達が続出しているという報告が入る。

一度、大会の参加者が参加証である「メダル(魔道具)」に登録を行えば、例えどのような偽造を試みようと登録を行った人物以外の人間は検査をと通らない仕組みになっている。だが、どういう訳か今回の剣乱武闘に関しては特別規則が急遽追加された。



――早朝、黒猫酒場ではレノ達が開店前に朝食を行っている最中に唐突に王国からの使者としてカゲマルが訪れ、今回の大会の特別規則を伝えるためにわざわざ彼女自身がやってきたという。。



「……参加証の争奪戦?」
「そうでござる。他の種族からの要望を受け入れ、今回の剣乱武闘に限り、予選開始前の特別規則として参加証の争奪戦が公式に認められたでござる」
「争奪戦ってどういう意味だい?まさか、地下闘技場みたいに参加証を賭けて試合でも行えってのかい?」
「場合によってはそうなる可能性もあるでござる……詳しく説明すると――」



カゲマルの説明によると、今回の300名の事前に選定された者達は常時「参加証」を所持する事を義務付けされ、より正確に言えば1日の内に総合で「15時間」の間を参加証を自分の肉体の1メートル圏内に置いておかなければならない。

仮にこの15時間着用の規則を破った場合、その参加者は大会参加資格を剥奪され、参加証は大会側に強制返却となり、新たな選定者が選ばれる仕組みになっている。

だが、仮に参加者が参加証を他人の手に渡った場合のみ、先の15時間の規則を破った者から参加証を新たに入手した人間に権利が与えられる。分かりやすく言えば「参加証」が誰の手も届かずに紛失した場合は大会側に回収され(メダル型の魔道具には発信機を行う役割の機能も搭載されている)、もしくは他者に譲渡・強奪をされた場合はその人間に大会参加の資格が与えられる。

これはあくまでも先に選定された300名の選別された者達だけに課せられる特別規則であり、他の700名の参加者に関しては除外される。



「また七面倒な規則を追加したねぇ……何の意味があるんだい?」
「大会参加者達により一層に緊張感を与えるためと聞いているでござる……が、本来の目的は恐らく別だと思うでござる」
「……どういう意味?」
「この規則を提案したのは森人族(エルフ)でござる。目的は恐らく……」
「俺?」


カゲマルがレノに視線を向け、全員が納得する。恐らく、この参加証の争奪戦の特別規則を利用して大会参加者である彼を狙う気なのだろう。


「参加証を得るためにレノ殿のメダルを奪う……という目的の元、恐らくは森人族の刺客を送り込む手筈でござる」
「おいおい、大会参加者を殺したら大問題だろう?」
「前年の大会ならそうでござるが……今回は各種族の協力の下で行われるため、王国側もあまり強く発言できないでござる。恐らく、レノ殿が死んだとしても冒険者の凶行として処理する気でござろうな……」
「酷いね……」
「わぅっ……あんまりです」
「レノは俺が守る……!!」
「……絶対に手を出させない」
「そうっすよ!!兄貴はあたいたちが護衛するっす!!」


全員が憤る中、レノだけは黙って考え込み、このまま酒場に通い続けて魔闘術の訓練を行うのも危険である。今回の特別規則を利用して大勢の森人族が自分を狙ってくるのは間違い無く、このままではバルたちどころかレグまで巻き込んでしまう。

一番手っ取り早い方法は人気がない場所(ゴブリン達が生息している「枯葉の森」など)に移動して大会開始まで大人しく訓練を行うのが一番なのだろうが、やはり指導者がいない場所で1人で訓練を行うのは効率が悪い。だからと言って、わざわざレグに頼み込んで自分と一緒に同行してもらうのも気が引ける。


「拙者としてはレノ殿は王国側で保護した方がいいと思うでござる。この酒場に居続けるのも危険でござるし……テンペスト騎士団の訓練場ならば一番安全でござるよ?」
「何だい?あたしたちがこいつ1人を守り切れないと思っているのかい?」
「別にそういうわけではござらぬが……このままでは無関係な人間も巻き込んでしまうでござるよ?」
「それは困るっすね……」


カゲマルの言葉にも一理あり、この黒猫酒場に残ればバル達だけでなく、酒場に通う常連客達も危険に巻き込む可能性が高い。


「……レグに一声かけてから、大人しく避難するよ」
「それが良いでござる……あ、そうそう、ホノカ殿からレノ殿宛に手紙を預かっているでござるよ」
「ホノカから?」


カゲマルは何処からともなく手紙を取り出し、レノに手渡す。その内容を後方から皆に見られるのを感じながらも確認すると、


「これは……都合がいいな」


先日、彼女が闘人都市を去り際に頼んだ内容に関わる事であり、丁度いい具合に間に合ったと言える。
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