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序章 突然異世界トリップ迷惑編
2.やるなら徹底的に!!戻って来られても困るだろ?
しおりを挟む耳に届いた騒ぎに、慌ててそちらへ目をやると、花畑の一角が激しく荒れている。
「何だ?」
目を凝らしてみると、ギャアギャアけたたましく鳴いてるのは、あのトカゲもどき鳥。三羽ぐらいが集まって、どうやら何かを襲ってるようだ。
「うわぁ~、弱肉強食とはいえ、目の前でスプラッタは勘弁してほしい」
顔をしかめつつ、俺がトカゲもどき鳥達の中心部に目をやると、襲われてたそれと目が合った。
白にラベンダーがかった羽の小さな鳥。黒くつぶらな瞳で可愛らしい鳥だった。
「キュイーー!!」
俺と目が合った鳥は、俺に向かって助けを求めるかのように必死に鳴いてきた。
はっきり言って、憐れ度MAXだ。
「助けろってか?マジかよ」
トカゲもどき鳥、顔怖いし爪すごいし、正直言ってやなんだけど、小さい生き物に縋られたら無視もできない。
自然界の掟に逆らうのもどうかと思うが、一匹に対して三匹で、かかってるしな。多勢に無勢は良くないな。
つーワケで…
「やーめーろー!!」
ホントは棒っきれがあればよかったけど、なかったため、俺は着ていた制服のブレザーを脱ぎ、両手で広げて振り回した。
突然乱入した俺に、トカゲ(もどき鳥って長いし、メンドいから、もうトカゲでいいや)どもは、グギャッと妙な奇声をあげて、パッと散り散りになった。
慌てて駆け寄った俺の目に、その姿が映る。
やばい。可愛い。
見上げてくるのは、クリクリとしたつぶらな黒い目。背丈の高い花が密集してたおかげで、わずかに血が滲んでいるが、どうやらトカゲの爪による深手は負っていないようだ。
白にラベンダーがかった羽根は、所々フワフワしている。
どうやら、独り立ちしたばかりの雛鳥のようだ。
「大丈夫か?」
答えるわけはないが、とりあえず話しかけた俺に、雛は小首を傾げて見つめてきた。
ヤバす!乙女でもないのに、キュンキュンしてしまいそうなくらい、可愛すぎる。
「えー…と、とりあえず触るな?何もしないから、頼むから噛み付くなよ?」
言い置いてから、そっと、恐る恐る手を差し出す俺を見つめたまま、だが、雛は暴れたり噛み付いたりする事なく、俺の手の中に収まった。
「軽ッ…、それにめっちゃフワフワだ~」
持っていたブレザーで雛をそっと包んだ。
「キュイッ!!ピルルルッ!!」
「どうし…ゲッ!?」
急に鳴き出した雛に、俺は後ろを振り返って絶句する。
いつの間にか、追い払ったはずのトカゲが、ざっと十匹ばかり、俺たちを囲むように迫っていた。
ギーギー鳴き声をあげ、明らかに敵意丸出しの臨戦態勢。
「おいおい、囲まれてるよ。確かに、お前らの食事の邪魔したかもしれないけど、多勢に無勢だろ?」
ブレザーで包んだ雛を潰さないよう、でも、しっかりと抱えて、ジリジリと後退るが、四方ぐるりと囲まれてるためあまり意味ないかも。
どうするよ?俺。
もう一歩下がった俺は、石か何かに足を取られバランスを崩した。
機を逃さず、トカゲどもが一気に飛びかかってきたのを目端に捉え、俺は同時に捉えた奴らの鋭い爪を認めて、次に来るだろう痛みを覚悟し、雛を守るように抱え込んで、ギュッと目を閉じた。
ーー『ーーーーーー』!!
一瞬の静けさの後、次に襲ったのはオレンジと赤の光。
そしてーー
熱だった…ーー
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