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捕まった後のお話
47.謝りました。 <大谷>
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「ごめんなさい」
私はテーブルに手を付いて、直ぐに頭を下げた。顔を上げると少し寂しそうに見えるものの、若干スッキリとした表情の水野君がいた。
「……もしかして今、彼氏いる?」
「うん」
ほんの二ヵ月前からですが……まさにタッチの差なんです、と言う言葉は飲み込んだ。もし丈さんと付き合って無かったら……『ごめんなさい』では無く『ありがとう』って答える選択肢も、もしかしてあり得たのかな?
「そっか。なんか大谷さん、綺麗になったからそうなのかな?とは思っていたんだけど」
なんて言われて、ちょっとだけ素直に嬉しく感じた。
だけどきっと。もしお世辞じゃ無く私が綺麗になったとしたら……それは丈さんと出会ったからだ。だからやっぱり今『ごめんなさい』と言う以外の展開は、あり得なかったのだろう。
「ありがとう……そう言って貰えて、嬉しいよ」
ニッコリ笑うと、一瞬ポカンとして。
水野君は私の顔を穴が開くほどジッーと見つめて―――数秒後、漸く口を開き。
「やっぱ惜しいコトしたなー!」
と、大袈裟に頭を抱えて見せたのだ。
そんな場合じゃないんだけど、その口調の軽さについ笑ってしまう。
「水野君、会わない間に口が上手になった!もしかして、彼女いたでしょう?」
「あ、うん」
照れくさそうに頭を掻いてソッポを向く。
やはりね。周りの女の子が彼を放って置かないでしょう!なんて得意げに考えてしまうのは……すれ違いながらも、昔確かに気持ちが重なっていた時間があったと言う事実を知ってしまったからなのか。
「もしかして、相談を受けたって言う……同僚のあの彼女?」
何となく思った。『相談』って心を許している相手にしか出来ないよね?と言う事は彼女は水野君を信頼していた訳で……もうその時点で彼に好意を持っていたのかもしれない。……鈍い水野君は気が付いて無かったのかもしれないけれど。
するとバッチリ図星だったようで、水野君は気まずげに頭を掻いた。
「あー……うん。暫く後に告白されて」
ウンウン、と大仰に頷いてしまう。
もしかすると、彼女の方は『相談』と称して水野君を落とそうとしていた可能性もある。恋愛小説ではよくある展開だよね……!考え過ぎかな?
「でも誓って……あの時は付き合って無かったよ」
「うん、それは信じるよ。あ、でも……もう別れちゃったの?」
水野君の性格から言って、彼女がいるのに私に告白するなんてあり得ない。
「うん……」
何だか歯切れが悪いのは、時期はズレていたとは言っても結局私が誤解した通りの展開になってしまったからだろうか。
「そうなんだ。でも水野君ならモテるから、すぐ次の彼女できると思うけど」
「モテる?そうかな?……そうだとしても好きな相手に好かれなきゃね」
「余裕あるなぁ~……私なんかまるでモテないから、そんな台詞口から出ないよ!」
「俺今、振られたばかりだけどね」
軽く睨まれてしまう。でもその視線に重さはなくて……水野君が冗談めかしてくれた事に感謝する。
思い込みでも無く、私にも素敵な『元カレ』がいたのだ。と言っても厳密には思いが通じ合っていなかったから、違うのかもしれないけれども。そして今時……高校生の方がずっとずっと深い付き合いをしているかもしれないけれだけど。
私はテーブルに手を付いて、直ぐに頭を下げた。顔を上げると少し寂しそうに見えるものの、若干スッキリとした表情の水野君がいた。
「……もしかして今、彼氏いる?」
「うん」
ほんの二ヵ月前からですが……まさにタッチの差なんです、と言う言葉は飲み込んだ。もし丈さんと付き合って無かったら……『ごめんなさい』では無く『ありがとう』って答える選択肢も、もしかしてあり得たのかな?
「そっか。なんか大谷さん、綺麗になったからそうなのかな?とは思っていたんだけど」
なんて言われて、ちょっとだけ素直に嬉しく感じた。
だけどきっと。もしお世辞じゃ無く私が綺麗になったとしたら……それは丈さんと出会ったからだ。だからやっぱり今『ごめんなさい』と言う以外の展開は、あり得なかったのだろう。
「ありがとう……そう言って貰えて、嬉しいよ」
ニッコリ笑うと、一瞬ポカンとして。
水野君は私の顔を穴が開くほどジッーと見つめて―――数秒後、漸く口を開き。
「やっぱ惜しいコトしたなー!」
と、大袈裟に頭を抱えて見せたのだ。
そんな場合じゃないんだけど、その口調の軽さについ笑ってしまう。
「水野君、会わない間に口が上手になった!もしかして、彼女いたでしょう?」
「あ、うん」
照れくさそうに頭を掻いてソッポを向く。
やはりね。周りの女の子が彼を放って置かないでしょう!なんて得意げに考えてしまうのは……すれ違いながらも、昔確かに気持ちが重なっていた時間があったと言う事実を知ってしまったからなのか。
「もしかして、相談を受けたって言う……同僚のあの彼女?」
何となく思った。『相談』って心を許している相手にしか出来ないよね?と言う事は彼女は水野君を信頼していた訳で……もうその時点で彼に好意を持っていたのかもしれない。……鈍い水野君は気が付いて無かったのかもしれないけれど。
するとバッチリ図星だったようで、水野君は気まずげに頭を掻いた。
「あー……うん。暫く後に告白されて」
ウンウン、と大仰に頷いてしまう。
もしかすると、彼女の方は『相談』と称して水野君を落とそうとしていた可能性もある。恋愛小説ではよくある展開だよね……!考え過ぎかな?
「でも誓って……あの時は付き合って無かったよ」
「うん、それは信じるよ。あ、でも……もう別れちゃったの?」
水野君の性格から言って、彼女がいるのに私に告白するなんてあり得ない。
「うん……」
何だか歯切れが悪いのは、時期はズレていたとは言っても結局私が誤解した通りの展開になってしまったからだろうか。
「そうなんだ。でも水野君ならモテるから、すぐ次の彼女できると思うけど」
「モテる?そうかな?……そうだとしても好きな相手に好かれなきゃね」
「余裕あるなぁ~……私なんかまるでモテないから、そんな台詞口から出ないよ!」
「俺今、振られたばかりだけどね」
軽く睨まれてしまう。でもその視線に重さはなくて……水野君が冗談めかしてくれた事に感謝する。
思い込みでも無く、私にも素敵な『元カレ』がいたのだ。と言っても厳密には思いが通じ合っていなかったから、違うのかもしれないけれども。そして今時……高校生の方がずっとずっと深い付き合いをしているかもしれないけれだけど。
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