種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

アクアの謎

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「まあ、長々と話しましたけど理解できましたか?」
「だいたいは……しかし、お前とあの人は別人なのか」
「いやいや……幾らご先祖様だからって、あんなふざけた人と一緒にしないで下さいよ……こんな世界を作り出すなんて私にはできません」
「だろうね……」


前世の記憶は今でも残っているが、この世界で過ごしてから15年の月日が経過し、もう当時の詳細はあまり思い出せない。しかし、それでも前世の自分という存在を作り出した「アイリス」という女性の事だけは忘れられない。

アイリスは偽名であり、本名があったはずだがレノは既に忘れてしまっている。たった一度だけ聞いたことがあるのだが、アイリスという名前の方が根強く記憶に刻み込まれている。


「にしても……前世のレノさんとうちの家系はどうにも縁があるんですかね、貴方の記憶を読んだときは度肝を抜かされましたよ」
「俺の家系……?」
「霧咲家……まあ、これは別の物語で語られる内容ですから、ここでは言う必要ありませんし、今のレノさんはこの世界で生を受けた存在ですからね。霧咲家とは一切関係ありません」
「はあ……?」
「この話は置いといて……そろそろ頃合ですね」


アイリィは何かを確認するように瞼を閉じると、レノはこの空間に訪れてから随分と時が経っている気がするが、だが、元の世界ではせいぜい10分間程度しか経っていないのだろう。


「これからレノさんは半年以内に聖痕を回収してください。ホノカさんの転移の聖痕は最後でいいので、今は「水」と「磁力」の回収に集中してください」
「さっき、距離的に探知出来ないって言ってなかった?」
「そうなんですけど……どうやら水の聖痕の持ち主が都市に訪れているみたいです。というか、レノさんも知ってる人ですよ」
「……誰?」


彼女は面倒そうに頭を搔きながらレノに視線を向け、


「……人魚族のお姫様「アクア」さんですよ」
「はっ!?」


人魚族の種族代表である女王の一人娘であり、一応は母親(基本的に人魚族は女性であり、単為生殖で子孫を生み出す)の代理として闘人都市に訪れており、ラビット(アイリィ)と共に試合の実況を行っているアクアがまさかの「水の聖痕」を所持していたという事実に驚きを隠せない。

実際、レノの紋様は複数の聖痕を吸収したことで探知能力が強化されており、数日前に訪れた聖痕所持者の残滓まで感じ取れるほどに優れている。だが、アクアと直接対面したことは無いが大会期間中に闘技場で何度か彼女を見かけており、今の紋様ならば1キロ圏内ならば聖痕の力を感じ取れるはずだが、アクアからは聖痕の気配は感じ取れなかったはずだが。


「私も最初は気付かなかったんですけど……あの人と触れた時、確かに私の聖痕の力を感じました。ですけど、どうにも力の反応が弱すぎるんですよね……特殊な術式で抑えている可能性があります。今までのように触れただけじゃあ奪えない可能性がありますね」
「おいおい……どうすればいい?」


触れるどころか近づく事さえ難しい相手であり、しかも今までの方法では聖痕が回収できない以上、打つ手が無いように思えるが、


「仕方有りませんね……あの人に関しては私が何とかします。適当に呼び寄せて、拘束した後に強奪して置きますから安心してください」
「どうする気?」
「術式の解放に時間が掛かりますからね……まあ、何とかしますよ。もしかしたらレノさんの力を借りるかもしれません」
「それはいいけど……これから俺はどうしたらいい?」
「とりあえずは大会は棄権してください。というか、これ以上目立つのは危険です。あいつ等の気配も感じますから……」
「センチュリオンが?」


確かに今大会には前大会回以上の「実力者」や「優勝賞品」が集まっており、センチュリオンが彼らを狙って現れる可能性も高い。だが、今回は六種族が共同の元で最大限の警備体制が敷かれているはずだが、


「肉体の完全復活には膨大な魔力が必要ですからね。だから勇者さん達を誘拐したり、魔力容量が多い人間を攫っているんです」
「そうなのか……なあ、1つ聞きたいことがあるんだけど……」
「召喚された旧世界の人間たちの事ですね?何で「勇者」と呼ばれる人たちだけが魔法を扱えて、普通の一般人は魔法を扱えないのかとかですか?」
「王国からは勇者には精霊の加護を受けるから、魔法が使えるとは聞いたけど……そもそも魔法の原理ってどうなってるんだ?」
「さあ……私のご先祖様なら知ってるんでしょうけど……少なくとも今の世界には本当に「精霊」とか「悪魔」という存在は実際にいます。勇者さん達が魔法を扱えるのは特別な召喚方式で呼び出したから……としか言いようがありませんね」
「そうか……ちなみに時空召喚された人間って、旧世界ではどう扱われてるんだ?さっき言っていたように神隠し扱い?」
「う~ん……そこの所は私も流石に分かりかねますが……多分、存在その物が無かったことになってるかも知れません。最初からいなかったという風に歴史が改変されたのかも……」
「怖いな……」


今まではこの世界とレノが知る現実世界がこことは違う異世界だと思い込んでいたが、彼女の話が事実だとしたらもう二度と勇者達はあの世界に戻る事は出来ない。

レノとしてはアイリィが肩る旧世界(現実世界)に戻りたいとは思わないが、それでも気にかかる事はあり、自分が死んだあと本当に「役立った」のかである。だが、今ではもう確かめるすべはなく、自分が死んだことで「あの子」が助かったのかは分からない。


「……まあ、いいか」
「それじゃあ、明日辺りまた会いましょうね~」


今更考えたところで戻れる場所でもないので、レノは徐々に意識が薄れて行き、アイリィに手を振られながら「現実」へと意識が目覚める――
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