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第40話・フューネの祝日・前夜祭の1日前

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フューネの祝日は全3日間、開催されます。
前夜祭、当日、後夜祭と言った感じです。
王城の舞踏会も3日連日行われますが、王様は前夜祭と後夜祭は挨拶程度。
当日に王様を含む王族の方々が、総出で出席されるので欠席は許されてません。

今まで私は欠席してたけど、それは子供だったから。
結婚してなきゃ、今年も欠席したんだけどね~。


そして今日はその前夜祭の前日です。

今日のお仕事は王城と王都に張られてる結界の確認作業です。
要所に設置された魔玉(魔力を貯蓄出来る魔道具)を確認して、魔力を補充して、更にその魔玉を守る結界を張ると言う……。

めんどいね!

王城も王都も広いので馬で回る事になる筈だったのに、何故持ってるのか?団長がスケボー出して来て、魔玉の場所が記されてる地図と一緒に渡されました。

え~、こう言う地図って機密とかじゃ無いの~。

と思ったら、1番重要な所は載ってないそうです。
そこは団長の仕事で1番魔力を使うらしいです。

へ~、ちゃんと仕事するんですね!!でも、禿げろ~!



任された仕事ですから、真面目にやりますよ?
守護結界なんて、王都に住む人々の平和な生活が掛かってますからね!!
さっさと王城内を終わらせます!
流石にフューネの祝日前って事で、あの、お父様も現在進行形で軍務大臣の執務室に居るのです!!
何でも訓練所に行こうとするお父様を、秘書官、侍従、騎士数名で押さえてるとか……。

ご苦労様です!頑張って下さい!と、心の中でエールを送っときます。

で、魔玉ですが「柱」「木の幹」「彫像」と言ったあらゆる物の裏に隠されてます。
地図が無ければ分からないでしょうね。

手引きに従って、指に魔力を纏わせ指示通りに動かせば……パカリと小さい扉が開きます。
中には両手で包むと少し余る位の赤い魔玉が入ってます。
魔力を注げば、くすんだ赤から煌々と輝く赤へと変わります。
扉を閉めて、「柱」に結界を張れば終わりです。

結構、魔力持ってかれたわ~。
回復するから構わないけど、疲れるんだよねぇ。
城だけで残り4ヶ所、街が12ヶ所…………1日掛かるんじゃない、コレ!!

はぁ~、頑張ろ……。



頑張った!
私、凄く頑張った~!!
今は15時位かな?
終わりましたよ!結界の確認作業。
この後は騎士団の図書室漁るんだ~♪
また、隠し通路とかそれこそ魔導書とか見つけちゃうかもね~♪
ふひひ!


スケボーに両足揃えて乗って風魔法でのんびり進んでいたら、

「…………!!」

「…………」

何やら横道から人の争う様な声が聞こえます。
ちょっとだけ顔を覗かせて…………。

誰も居ませんね。

気のせいかと思ってたら、また声が聞こえました。
横道から入って更に曲がった所から聞こえてる様です。

スーーーと進んで、また顔だけ出して見てみます。

私よりちょっと年上くらいの男の人が、3人の如何にも破落戸って人に囲まれてます。

良くあるヤツですね。
御愁傷様です!
私は何も見てないですよ!

「あああああ!そこの人!立ち去らないで!せめて人呼んで下さいよ~!」

むむ、見つかってしまいました!

仕方無く前に出ます。
まぁ、人助けは仕事の内かなぁ?

体格が1番良い破落戸さんが

「何だぁ?お嬢ちゃん1人か。」

「…………(一応、確認)悪いのどっち?」

ひょろっとした破落戸さんが

「ちょ~っと、この兄ちゃんにお金を工面してくんねぇかなって相談してただけ何だよ?」

「この兄ちゃん」が慌てて喋ります。

「いきなりここに連れ込まれて!金出せって殴られたんだよ~!」

「勝手に話してんじゃねぇ!」

と言って破落戸(めんどいので)Aに蹴られる「この兄ちゃん」。

B「お嬢ちゃんが一緒に遊んでくれれば、お金要らないかも?」

A「そうだなぁ、この兄ちゃんあんま金持って無さそうだし、お嬢ちゃん、遊ぼうぜぇ。」

C「ばばばばば、ばか!良く見ろ!マント~!魔法師団のマント着てるぞ、この娘!?」

AB「…………」

ABC「さ!さいなら~~~~~!!」

慌てて走り去ろうとする3人。
私は溜め息を吐いて、一言

「…………天誅。」

道端の草が伸び3人の足に絡まると、重なる様に転ぶ破落戸達。
そこに、拳大の石がそれぞれの頭を直撃して……終わりました。

うん、良い仕事した!
めんどいから破落戸は放置で、さぁ帰ろう!

としたら、いつの間にか側に「この兄ちゃん」が居て、腕を掴まれてました。

「助けてくれてありがとう!破落戸に絡まれるのってテンプレだと思って絡まれて見たんだけど~ネット小説に美少女に助けられて恋に落ちる話し有ったんだよね~。マントで見えないけど、君は美少女だと見た!コレって運命の出会いじゃ無いかな~?て事でデートしよう!!」

「この兄ちゃん」は一気に喋ってニコニコしてます。
と言うか……「テンプレ」「ネット小説」とか言いました?
まさか、この人も転生者?
それに殴られて蹴られたのにピンピンしてます。
近づかれたのにも気付きませんでした。

……何故か背筋に悪寒が走りましたよ。
全力で関わりたく無い!!

「…………仕事中、無理。」

「あはは~仕事中なら仕方無いよね~!うん。運命の出会いなら、きっとまた会えるよね!ほんと、ありがとね!じゃ、またね~。」

そう言って「この兄ちゃん」は、ブンブンと手を振って走り去って行きました。

……軽!!

転生者か召喚されたのか、はたまた転移者か……分からないけど、嫌だけど、全力で嫌だけど!!

どこかで会うんだろうなぁ。
そんな気がする。はあぁ。







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