「バカな男子高校生が女子校に入学しました！」

「そうですか…」

と一馬くんは少し残念そうにする。僕は、そんな他人の家庭事情まで首をつっこむつもりは毛頭ないので、この話はここくらいで切ったのだ。そして、話は今日の本題である妹のことに移すことにした。

「実はな、一馬くん」
「はい？」
「今日来てもらったのには、理由があるんだ」
「はいわかってます」

え？わかってるの？
僕は少し驚いた。

「はい、お兄さんが女装していたという話をするためでしょ」

違うんだ、一馬くん。そのことは今日の計画にはもともと入ってなかったんだ。たまたまこういう展開になっただけなんだ。
気がつけば、その秘密の暴露大会で30分以上も時間が経っていた。まるで、今日はこのために来たかのように。

「それじゃなくてだな。今日一馬くんに来てもらったのは、妹のことなんだ」
「千穂ちゃんのことですか？」

と全く何のことかわかっていない様子だった。

「実は、学校で困ってるらしいんだ。一馬くんが、千穂と仲良くしているのを見た女子たちに嫌がらせをされているらしいんだ」
「え！そうなんですか！」

とこのことは今初めて知ったというような顔をする。やはり気づいてなかったらしい。
一馬くんは困った顔で、妹の顔を見る。妹は苦笑いを浮かべていた。一馬くんは妹が苦笑いをしているのを見て、自分が知らずうちに迷惑をかけていたことを知った。

「そうだったんですね…僕はどうしたらいいですかお兄さん」
「…言いづらいことだが、学校ではあまり妹には近づかない方がいいかもしれない」
「そうですね…」

とさっきまでの元気は一馬くんにはなかった。いい人なのはわかる。でも、このまま妹の近くにいれば、僕のかわいい妹に何かが起きるかもしれない。悲しいことだけどここは…
僕も一馬くんも顔を下に向けたままになる。お互い顔が上げづらいのだ。中学生である一馬くんにこんなことを言わなくてはいけない現実が辛い。
そんな時、一馬くんの足元に一つ、二つと涙がこぼれた。