種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

グリフォン討伐戦

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『――グェエエエエエエッ‼』


空に群がる推定1000匹のグリフォンが、地上に墜落したフライングシャーク号に下降を開始し、手始めに地上で倒れているレノに視線を向ける。先ほどは打って変わり、魔力枯渇現象が生じたレノは彼等の獲物として狙われた。


「ウオォオオオオオンッ‼」


ズゥウウウンッ‼


だが、彼の前には一匹の巨狼が立ちはだかり、グリフォン達に咆哮を上げる。1000匹のグリフォンを相手に堂々と立ち尽くし、主人を守らんとばかりに牙を剥き出し、最初に突っ込んできたグリフォンに前脚を放つ。


「グェエッ‼」
「フンッ‼」
「ギャウッ⁉」


ゴキィイッ‼


先走って襲い掛かってきたグリフォンを薙ぎ倒し、ウルはそのまま頭を噛み砕く。恐ろしいまでの咬筋力でグリフォンの頭部を一噛みで引き千切り、飲み込む。放浪島の地上の頂点に立つ白狼種であるウルにとって、地上のグリフォンなど餌でしか過ぎない。


「「グェエエエッ‼」」
「ガァアアアアアアッ‼」


それでも圧倒的に数の差があり、グリフォン達は数体でウルの足止めを行い、その隙にレノに向けて襲い掛かろうとするが、


「はあ‼」
「グェエッ⁉」
「おっ?」



ズバァアアンッ‼



レノに乗りかかろうとしたグリフォンの羽根に鮮血が走り、彼が視線を向けるとそこにはミアが剣を構えており、どうやら救ってくれたようだ。


「この人は……殺させません‼」
「ありがとう……その隙に」


倒れているレノはもう大部分の魔力を消費しており、殆ど魔力は残っていない。それでも最後の力を振り絞りながら一枚の紙を取り出し、アイリィから渡された「転紙」を地面に張り付ける。


「召喚‼」


ボウッ……‼


地面に張り付けた紙から魔方陣が浮き上がり、そのまま転移魔方陣が誕生する。但し、転移するのは自分たちではなく、こちら側に数多くの人間達が転移してきた。


「うおおっ⁉」
「本当に転移しました~」
「これは便利だな‼」
「レノ‼無事か‼」
「レノさん‼はっ……⁉ し、死んでる……⁉」
「殺すなっ」


最初に出てきたのは各部隊の隊長達と、リノンとポチ子であり、続いてホノカやヨウカ達も出現する。


「ぼ、僕の船が……許さん、許さんぞ貴様等ぁっ‼」
「ほ、ホノカちゃんが本気で怒った⁉」
「まあ、また直せばいいだけの話なんだけどね」
「と、思ったらあっさりと元に戻っちゃった‼」
「だが、許さない事に変わりはない‼」


ホノカが無残にも墜落したフライングシャーク号を確認すると、自分の飛行船を壊されたことに激怒しながら指輪を向け、グリフォン達に向けて転移魔方陣を発動させ、


「今こそ、封印を解く‼クサナギィイイイッ‼」
「なんか、テンション高くない?」
「ホノカちゃん、結構シャーちゃん気に入ってたから……」


全員の視線がホノカの元に集まり、遂に彼女が所有する聖遺物「クサナギ」を取り出すのかと見守ると、


「ん? あれ?」
「ど、どうした?」
「いや……あれ~?」


転移魔方陣は発動しているが、いつもならばクサナギが出現するにも関わらず、何故か出現しない。彼女は不思議に思いながら転移魔方陣を覗き込み、掌を突っ込む。どういう原理なのかは不明だが、彼女はごそごそと漁る素振りを行い、首を傾げる。


「……おかしいな、いつもならここに……あっ‼」
「どうしたのホノカちゃん?」
「いや……そういえば昨日の夜、暑かったから涼しみがてらにクサナギを使用してたんだけど……元の場所に戻すのを忘れて砦に置いたままだ」
「貴様、そんな事のために伝説の武具を使ったのか⁉」
「というか、この状況で置いてくんな‼」
「いや、うっかりしてたよ。はははっ……」
「「グエェエエエエッ‼」」


ホノカのまさかの発言に全員が驚愕し、その間にもグリフォン達が襲撃してくる。すぐに全員がレノを守るように円陣を組み、全員が武器を構える。


「レノたんの事は任せて‼」
「仕方ない、ここはアイギスを使うよ」
「全員、油断するな‼相手は第一級危険種指定されているグリフォンだ‼」
「くそったれ‼やってやらぁっ‼」
「わふぅうううっ‼」
「がんばっ」
「……きつい」


ホノカが聖遺物であるアイギスを取り出し、結界を発動させてヨウカとレノを包み込む。この防具は絶対防御を誇る聖遺物であり、生半可な攻撃は通さない。その間にも地上に降り立つグリフォン達にリノン達が応戦する。


「爆炎剣‼」



ドゴォオオオンッ‼



「ギャアァッ⁉」


リノンの刀身に炎が発生し、そのままグリフォンを斬り付けた瞬間に爆発する。通常の火炎剣を変化させた技であり、炎でグリフォン達を薙ぎ払う。


「和風連牙‼」


ズババババババッ‼


「「グエェエエエエエエッ⁉」」


ポチ子の場合は空中に跳躍すると、和風牙の応用版で次々とグリフォン達を斬り裂く。通常よりも回転が増していた。


「獣王連斬‼」
「「グアッ……⁉」」


ライオネルは鋭い爪を使用し、グリフォン達の頭を真っ二つに切り裂く。彼が腕を振るう度に爪型の斬撃が飛び、グリフォン達を切り刻む。


「俺も負けていられねえ‼」
「てや~‼」
「私達も続きますよ‼」
「「おぉおおおおおおっ‼」」


ダイアとラッキーも負けずに武器を振るい、転移魔方陣から続々と調査部隊の隊員たちが転移してくる。数はグリフォン達が勝るが、この調査部隊は各種族が選出した精鋭達が集められ、グリフォンを相手にも怯まずに応戦する。

皆が奮闘する中、コトミは地面に耳を押し当て、彼女は何かを確かめるように瞼を閉じると、杖を握りしめる。



「……水脈を感じる」



コトミは杖の柄を勢いよく地面にめり込ませるほどに強く叩き付け、師匠であるセンリでさえも知らない新しい魔法を発動させる。



「……水柱」



ドパァアアアアアアアンッ‼



「うわぁっ⁉」
「な、何だ⁉」
「間欠泉か⁉」



唐突に周囲の地面から水柱が噴出し、誰もが驚愕する。コトミはそのまま杖を空に飛んでいるグリフォン達に向け、



「……水連撃」



ズドォオオオオンッ‼



「「グァアアアアアアッ……⁉」」



無数の水柱が放出され、空中に滞在しているグリフォン達を飲み込む。咄嗟の事にグリフォン達は避けきれず、全身をずぶ濡れにされ、さらには両翼に大量の水分が付着してしまい、そのまま飛行を保てずに墜落していく。


「さ、流石は聖天魔導士見習い……‼」
「……照れる」
「だが、今ので奴等を本気にさせたようだぞ」



グエェエエエエエエエエッ――‼



次々と仲間達が倒されていく光景を目の当たりにしたせいか、コトミの水柱を避けたグリフォン達が雄叫びを上げ、そのまま全ての個体が地上に向けて一気に下降しようとした時、


「レーヴァティン‼」
「セイント・アクアフォース‼」



――ドガァァアアアアアンッ‼



『グギャァアアアアアアアアアッ――⁉』



飛行船の方角から放たれた真紅の炎と、青く光り輝く光線によってグリフォンの大半が飲み込まれ、凄まじい爆発が生じた。
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