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45-【ダメ見本】我慢のしすぎはいけません。

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 もういい。もう知らない。これ以上こんなことを続けてたら頭がおかしくなる。
 本来の目的だとか、羞恥の最後の欠片だとかが、のぼせた思考の片隅で淡く白く霞んでいく。かわりに頭のなかを占領したのは、爛れたみたいに熟れきったアナルのことだけだった。
 重く腫れたような内側の粘膜。むなしく寂しい奥の空隙。どんなに食い締めても、そこに欲しいものはないというこの現実。

 そんな諸々を自覚した途端、堪らなくなった。
 せつなさに迫られて、大悟の手のすぐ下をくぐり、真っ直ぐに指を伸ばす。消えたと思った羞恥心がわずかにぶり返したけど、それを引きちぎって睾丸の向こうの会陰に触れた。

 指先が先走りで濡れる。それをぬるりと広げる。もうそれだけで、会陰も指も気持ちいい。
 甘い溜め息をつきながら、さらにその奥へ。期待が過ぎて「あぁぁ」と蕩けた声が無意識にこぼれた。

 ついに触れたそこは、ふくりとやわらかでよく解れてる。指先のぬるぬるを塗りつけると、じんと馴染みの快感が沸きあがった。
 これだよ。やっぱりこれじゃなきゃ……。


 早く早くと、身体の奥から声がした。興奮しすぎたアナルがきつく窄まる。それを無視して、指を二本揃えて捻じ込んだ。
「ふ、ぅん」
 滑りが足りない。たっぷり塗ってもらったはずのワセリンは、皮膚に吸収されたか、シーツで拭われたかしたらしい。もっと奥へと焦る指が表の皮膚を巻き込んだ。そのせいで、引き攣れたような痛みが鋭く走る。

 べつにいい。痛くても構わない。みちりとそこを塞げるなら、もうなんでも。
 指を増やす時間も待てなくて、痛みを連れたまま指をさらに押し込んだ。

「く、ぅ、」
 痛い。でも気持ちいい。
 苦痛と快感とに眉根を寄せると、ぎゅっと瞑った目蓋の裏にチカチカと火花が散った。

 それでもまだだ。まだ足りない。
 どこまでも欲しがる身体につられて、さらに奥へと指を伸ばした。でも、どうしてもこれ以上の深みには届かない。指と一緒に押し込んだ皮膚がつっぱって、それを許してはくれなかった。

 くそ、焦れったい。
 苛つく気持ちに任せて指をバラバラに動かしたら、
「ああッ」
 粘膜を掻かれて顎があがる。前立腺を掠めて息が荒れる。気持ちよければいいほど、もっと寄越せとせがまれる。

 けど、せがまれたってどうしようもない。
 だって、本当に欲しいものは指じゃない。たとえ望む深みにこの指が届いたって満たされるわけがないんだ。


 せつないほどの飢餓感にせっつかれて、指をアナルに含ませたまま手を強く握り締めた。
「いッ、あっ」
 こんなにしてもアナルは傷つかない。浅いところもその奥も、もう十二分にやわらかいからだ。

 それが腹立たしかった。
 身体も心もここまでできあがってるのに、目の前に、手の届くところに欲しいものがあるのに、なんでいまさら自分の指なんかで。

 閉じていた目を薄く開け、欲してやまない相手を見遣る。
 大悟は伏せていた上体を起こして、俺を見おろしていた。まだ俺のペニスに触れてはいても、手を動かすのも忘れた様子だ。急にアナニーを始めた俺を見つめるその視線だけが、やけに熱かった。

「ふ、」
 大悟に見られてる。そう思ったら、いっそう気持ちが昂ぶった。火照った頬にも首にも、じわりと汗が浮いてくる。
 どうしよう。引きちぎったはずの羞恥が舞い戻ってきた。
 でも、いやな感じはしない。シャツを脱いだときのように怯むどころか、むしろもっと見られたい気分だった。

 大悟を欲しがって身を揉む俺を見せつけたい。本当に欲しいものは大悟だけだと証明したい。やきもち焼きの大悟に、すでに俺は大悟のものだと確信させてやりたかった。


「だいご……」
 求めるままにこぼれた呼び声は期待と焦燥とで上擦って、大悟の耳には届かなかったみたいだ。大悟は大悟で、俺を見つめるのに夢中らしい。これまで浴びたどの視線よりも荒々しい。

 求められてる。その表情をひと目見ただけで、そう確信できた。
 その確信は、大悟の身体を見てさらに深まった。忙しない息遣いを見せる肩。うっすらと汗の浮いた厚い胸板。なによりも、これ以上ないほどにいきり立ったペニスがいい証拠だった。
 さっきは隠れて見えなかったが、相も変わらずデカい。すらりと力強い胴に、はっきりと括れたカリ首に張り出したカリ。亀頭の先からは、透明な先走りが一筋垂れて光っていた。

 剛健で美しいそのフォルムを舐るように見つめていたら、口のなかにじわりと唾液が溢れてきた。
 ああ早く。このペニスをアナルに収めたい。硬いコレを根元まできつく押し込んで、疼く肉の奥深くを割りひらき、熱くて柔い内壁を思うさま擦られたい。
 その瞬間を思い描いただけで、下腹の深い部分がきゅっと甘く悲鳴をあげた。

「だいご、足りない」
 大悟が足りないよ。こんなにも近くに居るのに、写メを待ちわびていた昨夜よりも求める気持ちがとまらない。オナニーの練習なんかもうやめて、早く大悟で俺を満たしてほしい。

「あ、ああ、そうだな」
 重ねて名を呼ばれて、やっと我に返ったらしい。大悟が俺のペニスから手を引いた。
 やっとだ。やっと大悟と……そうして心底安堵したのに、大悟はすぐに覆いかぶさってはこなかった。


「え、はッ、ぁあぁんっ!」
 ふいに、アナルのふちを濡れた指で辿られた。
「こんなに巻き込んで、痛かっただろ」
 引き攣れて薄く伸びた皮膚に、特製ワセリンをまとった大悟の指がぬるりと滑る。たちまち甘い痺れが広がって身悶えた。

「なかにも足しておこうな」
 大悟がそう言うのと同時に、濡れた長い指が俺の指のあいだを割ってアナルに潜り込む。
「あっあッ」
 指の股をぬるぬると行き来された。俺じゃ届かなかった深みまで濡らされた。でも、俺の指が邪魔なのか、欲しい刺激はもらえない。

 もう、熟れきって焦れすぎた身には堪えきれなかった。


「大悟っ、だいごッ、もうっ」
 もう欲しい。大悟が欲しいっ。大悟のペニスがっ。

 大悟の指ごとアナルから指を引き抜いた。早く来てくれと両腕を差し伸べる。なのに……。
「どうした? まだ濡らし足りない?」
 どうした、なんてのはコッチのセリフだ。なんでこんなに焦らすんだ。天然か? それともわざとなのか?
 沸騰しかけの頭じゃ、その判断もつかなかった。

 大悟は俺が欲しくないのか? おまえだって十分すぎるほど興奮してるじゃないか。そのペニスだってこんなにも……。
 アナルを覗き込もうとする大悟を苛々しながら睨みつけると、その肝心のペニスがまた死角になって見えなくなっていた。


「うわっ」
 大悟の慌てる声がする。
 気がつけば、大悟の肩口を片足で蹴り遣ったあとだった。

 もう、ただひとつのことしか頭になかった。
 ベッドからの転落を免れた大悟の上に、すかさず伸しかかる。唖然とする大悟を無視して、その腹の上に座り込む。後ろ手に望みのものを掴んで腰を浮かし、疼いてやまないアナルにあてがった。

「……ゆきなり?」
 戸惑うような声を聞いたけど、いまさらやめられる訳がない。
 そうして俺は、愛しくも硬いペニスの上へと、ひと息に身を沈めていった。
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