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7巻

7-3

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 ここから二、三時間くらいずつ走ると休憩所や村、町があるという。
 休憩所以外で休憩したり泊まったりできる場所は、村や町だそうだ。そういった場所で買い物をして、お金を落とすことも貴族の役割のひとつなんだって。なるほど~。
 休憩は一時間ほど。その間に侯爵夫妻とたくさん話をした。
 邪険じゃけんにされるようなこともなく、お二人とも私の質問に丁寧に答えてくれたり、私もお二人からの質問に答えたりして、終始和やかな雰囲気で話すことができた。
 休憩をしている間に寒さを凌ぐ準備をしたりしないといけないんだけど、話している途中で気になったことが……

「エアハルトさん、侯爵様たちに温石おんじゃくと湯たんぽのことを教えてあげたらどうですか? なんだか夫人の顔色が悪いです」
「そうだな。二人とも寒いのは苦手というほどではないんだが、いつも以上に顔色が悪い気がする。チャイのことも含めて、俺たちが普段している対策のことを話してくる」

 自分の親を気遣ってくれたのが嬉しかったのか、エアハルトさんが破顔して私の頭を撫で、侯爵様たちがいる馬車に近づいていく。
 そして近くにあった石を拾って焚き火の中に入れたり、革袋の水筒にお湯を入れたりと、いつもの対策を実演している。
 他にもチャイの話をしたのか、フォルクスさんが鍋とポットを用意して、紅茶こうちゃれていた。
 たぶん、チャイの効能は旅にも使えるということを話したんだろう。侯爵家にはチャイのれ方を教えているし、詳しい説明をしなくてもわかってくれたみたいだ。
 侯爵夫妻は休憩の間にチャイを少し飲んだようで、ようやく夫人の顔に赤みが差してきた。
 おお、よかった!
 そして私兵たちも侯爵夫妻の真似をして、フォルクスさんがれてくれたチャイを水筒に入れて飲んでいる。防寒しているとはいえ、やっぱり馬での移動は寒いもんね。
 それに温石おんじゃくは、一時間弱だけとはいえ、直接炎の中に石を入れればかなり温まる。次の休憩地である町まで三時間かかるというし、ちょうどいいと思う。
 侯爵様ご夫妻だけではなく、護衛の私兵たちにも温石おんじゃくを配ったエアハルトさん。やっぱり優しいんだよね。
 いい人と巡り会えてよかったなあ……とほっこりしつつ、出発の準備をする。
 私たちの分の温石おんじゃくとチャイは、アレクさんが用意してくれていた。

「よし、行こう。今度は俺が御者ぎょしゃをする」
「ありがとうございます、エアハルト様」
「交代でするのが鉄則だろう?」

 御者ぎょしゃについて話すエアハルトさんとアレクさん。相変わらず仲良しだなぁ。

「でしたら、わたくしにも教えて欲しいですわ、兄様」
「それは僕がお教えいたしましょう」
「ありがとうございます、アレク様」

 御者ぎょしゃのやり方を教えてほしいというナディさんに、自分が教えると答えるアレクさん。
 きゃっきゃうふふと嬉しそうに話をする二人に、つい生温い視線を送ってしまう。
 ここは二人きりにしたほうがいいよね……と気をつかい、エアハルトさんの横に座らせてもらった。

「私も御者ぎょしゃができるように作業を覚えたほうがいいですか? というか、今だけでもやってみたいです!」
「リンは薬師だから覚える必要はないが……まあいいか。スヴァルトルたちは賢いから、ほとんどやることはないんだけどな」

 そんなことを言いながら、手綱たづなの持ち方や動かし方を教わり、一時間ほどやらせてもらった。
 二頭同時に指示を出さないといけないのが難しいと感じたけど、そこは軍馬であるスレイプニル。
 とても賢くて、私がやることはほとんどなかったです。
 そこからはエアハルトさんが御者ぎょしゃをして、町に着く。
 ここでお昼を食べたあと、次の町に向かって出発するという。
 必要なものがあれば買い物をしてもいいと侯爵様に言われたので、できれば特産物が欲しいかもと、ご飯を食べたあとで町を見て回ることにした。
 案内として、エアハルトさんが一緒に来てくれる。

「ここは毛糸を紡いでいることで有名なんだ。だから特産物は毛糸だ」
「そうなんですね! 母へのお土産に買っていこうかな」
「いいんじゃないかな」

 途中にあった商店に入り、毛糸が並んでいる場所へいく。
 すると、日本と同じように、色とりどりの毛糸が並んでいた。太さも様々なようで、その太さごとに纏められ、棚に置かれている。
 ただし、玉ひとつの大きさは日本の倍はあるけどね!
 どの色を買おうか悩み、結局一般的な太さのものを全種類買ってしまった。それぞれを十玉ずつ。
 これだけあれば、セーターやカーディガンを余裕で編めると思う。
 ほくほく顔でリュックにしまい、お店をあとにした。
 そして戻るついでにあちこちお店を覗いて歩いていると、絨毯じゅうたんやひざ掛けを扱っているお店が多いことに気づく。

「エアハルトさん、もしかしてこの町では絨毯じゅうたんも作っているんですか?」
「お、よく気づいたな。ああ。この町は絨毯じゅうたんというより、毛織物で有名なんだ」
「そうなんですね」

 たまたま目に入った毛織物は、花柄だ。他にも動物や幾何学きかがく模様に似たものもあって、見ていて楽しい。
 必要ないからさすがに買わなかったけど、部屋に敷いてもいいかもと思えるくらい、ちょっとだけ気持ちが動いた。それほどに素敵な模様ばかりだったから。
 いつか買ってみたいなあと思いながら戻り、出発の準備をして町から出た。
 途中で雪が舞ったりしたけど概ね順調に馬車は進み、予定よりも早い時間に宿泊する町に着く。警備の関係上、侯爵様たちと同じ宿だ。
 まあ、貴族が泊まる宿なので宿自体の警備もしっかりしているし、侯爵様ご夫妻の警護は私兵が交代でするというので、宿にいる間は私たちがすることはなさそうだ。
 護衛といっても、いろんなパターンがあるんだなあ。
 宿でも侯爵夫妻と一緒に晩ご飯を食べ、ここでもたくさん話をした。
 話すことでお互いがどんな性格かとか、好みはどんなものか、今まで知らなかったようなことを知ることができたのが嬉しい。
 そのあとは各自、指定された部屋で眠る。
 部屋が小さく雑魚寝ざこね状態になるので、従魔たちと眷属たちには小さくなってもらった。


 それから三日かけてシュピナート領へと向かう。
 途中の町や村で買い物をしては、お金を落としていく侯爵様ご夫妻と私。王都では見ない野菜などもあって、ついたくさん買い込んでしまった。
 自宅に帰ってから扱うのが楽しみ!
 そしてついに……シュピナート領に到着した。

「侯爵様、おかえりなさいませ」
「ただいま。なにか問題などなかったかね?」
「大丈夫です」
「そうか。これからも頑張ってほしい」
「「はい!」」

 領都の門には門番が二人いた。すぐに侯爵様の馬車だとわかったのか、簡単なやり取りだけですぐに通してくれた。私たちは白水晶に触って中へと入った。
 気さくな侯爵様に、門番たちが笑顔で対応している。そんな様子を見ただけで、侯爵様は慕われているんだなあと感じた。

「お疲れ様」
「エアハルト様、おかえりなさい」
「ただいま。いつもありがとう」
「そういっていただけるだけで、頑張れます」

 エアハルトさんも門番たちに気さくに声をかけて、彼らも応えている。
 門番たちはエアハルトさんが冒険者になったことを知っているみたいで、あとで話を聞かせてほしいとねだっていた。
 エアハルトさんのことだから、時間があれば訓練もするんだろうなあ……
 躍動やくどうする実用的な筋肉……見たい!
 そんな冗談はともかく。
 門を入ってからも、侯爵様の馬車だと気が付いた町の人たちが手を振って「おかえりなさい」と声をかけてくる。侯爵様ご夫妻もそれに応えて、手を振っているのがとても印象的だった。
 きちんと領地経営をしていないと、ここまで慕われていないよね。
 未来の義父母は凄い人だと改めて思ったよ。
 門を抜けいくつか十字路を曲がったりしているうちに、大きなお屋敷やしきが見えてくる。

「あれが領主館だ」

 建物を指さすエアハルトさん。

「さすがは侯爵家ですわね。我が家よりも大きいですわ!」
「そうですね。それにしても、久しぶりに見ます」
「……」

 ナディさんもアレクさんも普通に話しているけど……領主館と呼ばれた建物は、王都にあるお屋敷やしきと同じかそれ以上に大きい!
 あまりの大きさに、ついぽかーんと口を開けてしまった。

「リン、口を閉じたほうがよろしいですわよ? ……お気持ちはわかりますけれど」
「あ、はい。すみません」
「そろそろ着くぞ。宿を探しに行こう」
「「「はい」」」

 エアハルトさんもナディさんもアレクさんも、侯爵夫妻の身内や使用人としてではなく、護衛の冒険者として来ているからね。
 今回は領主館に泊まるのではなく、自分たちで宿を探すのだ。
 もちろん私もお客さんとして来ているわけではないから、当たり前ではある。
 あとは侯爵様から受領印をもらって冒険者ギルドに提出すれば、この依頼は終わるそうだ。
 だけど、侯爵様たちが家の中に入るまで、気が抜けない。
 あれですよ、おうちに帰るまでが遠足なのと同じ理屈だと思う。
 まあ、結局は無事に家の中に入って、領主館を取り纏めている執事さん経由で受領印をもらったんだけどね!

「エアハルト様もナディヤ様も、こちらにお泊まりになればよろしいのでは……」
「それはダメだ。俺たちは護衛の冒険者として来たから」
「そうでございますか……。できれば一度はこちらにおいでになってください」
「ああ。そうさせてもらうよ」

 泊まっていけばいいと言ってくれた執事さんだったけど、エアハルトさんはきっぱり断っていた。そんな彼の態度に、残念そうに顔を曇らせ目を伏せる執事さん。
 それでも最後は笑顔で見送ってくれた。

「よし、行くぞ」
「まずは冒険者ギルドですね」
「それから宿ですわね」
「町の散策もしたいです!」

 従魔たちに小さくなってもらい、馬車に揺られて移動しながら、冒険者ギルドを目指す。
 五分くらい走ると冒険者ギルドに着いた。
 エアハルトさんが代表で依頼達成の報告をしている間に、アレクさんとナディさん、私でギルドの掲示板を見る。お昼どきなので人がほとんどおらず、ゆっくり見ることができた。
 私は掲示板をじっくり見るのが初めてなので、二人に説明してもらいながら眺める。
 ちなみに、護衛として右肩にラズ、左肩にスミレがいるからなのか、ギルド内にいた冒険者が寄ってくることはなかった。
 掲示板の一番上にランクが書かれていて、その下にランクに見合った依頼が貼り出されている。
 Fランクは主に町中の掃除やお店のお手伝いの依頼が中心だ。それらを経験してから薬草採取、それからダンジョンに潜る、というふうに段階を踏んでいくのだという。
 それ以上のランクの依頼になると、森での魔物の討伐依頼や、ダンジョンでの薬草採取、個人からの欲しい素材採取の依頼などが増える。
 もちろん、ダンジョンでの討伐依頼もある。
 その中で、Aランク以上の依頼が数件、掲示板の下のほうに残されていたので首を傾げる。
 Aランク以上の依頼は、緊急性が高いものや報酬ほうしゅうも良いものが多いから、もっと目立つところに貼られていてもおかしくないのに。

「これって、どうして下のほうにあるんですか?」
「ああ、こちらは言わば疑わしい依頼とでもいいますか」
「依頼内容の割に、報酬ほうしゅうが高すぎたり低すぎたりするような依頼ですの」
「低い分にはまだわかるのです。払うお金がない場合、どうしても低くなりがちですから。まあケチっているだけの場合もありますが、その場合はたいてい受付の段階ではねられます。依頼者の懐具合や、その魂胆こんたんをギルドの人々は見抜きますからね」
「けれど、高すぎる依頼は裏があるのではないかと、疑われてしまうのですわ」
「なるほど~」

 王都にある冒険者ギルドにもそういう依頼が貼り出されているそうだ。
 儲け度外視で低い報酬ほうしゅうを受けるというボランティア精神の持ち主でもない限り、皆このような依頼は受けないという。だから、低い報酬ほうしゅうのものはそのままになっているんだって。
 まあ、場合によってはギルド側が冒険者を指名して依頼するそうなので、いつまでも残ることはないそうだ。
 そういったことも、高いランクの人に課せられた仕事のひとつでもあるんだって。
 だけど高い金額の依頼の場合は、実際に犯罪に関わっていたことが過去にあったそうで、現在はギルド側の調査が終わるまでは貼り出すものの、黒だとわかると引き下げるんだとか。
 高い報酬ほうしゅうを払ってでも欲しいという素材などもあるから、一概に犯罪に関わっているとは言えない、らしい。
 たしかに、私だってどうしても欲しいものがあったら、相場よりも高い値段の報酬ほうしゅうで依頼を出すかもしれないもんな。

「まあ、もしも犯罪に関わるものであれば、期限がくる前に剥がされますし、カウンターでも注意喚起をされるので、トラブルになることはあまりないのです」
「その見極めもできますものね、Aランク以上であれば」
「まあ、それができないと、Aランクにもなれませんが」

 常に命をかけている職業だからこそ、そういった危険察知ができないと、Aランクに上がるのは難しいと話すアレクさんとナディさん。
 個人の能力に応じたレベルがあるとはいえ、レベルだけでは計り知れないものがあるんだね。
 いくら戦闘能力があってレベルが高いとしても、考える力や見極める力がなかったらランクは上がらないんだろう。
 そんなことを話していたら、職員が掲示板のほうに来て、下のほうに貼ってあった依頼をいくつか剥がしていった。
 そのどれもが高額報酬ほうしゅうのもので、アレクさんとナディさん曰く「怪しい依頼」のものだった。
 貼り出し期限はかなり先だったのに剥がされたということは、黒と判定されたものなんだろう。
 そして職員と入れ替わるようにエアハルトさんが来たので、馬車停めに戻り、今日泊まる候補の宿へ向かった。
 そこはエアハルトさんが知っている宿で、ある程度のお金がないと泊まれないところらしい。もちろん従魔たちOKの宿だ。
 ギルドから馬車で十五分。私たちが入ってきた門に近い場所にその宿はあった。
 三階建てで、周囲の建物と比べると、かなり大きい。

「空いているかどうか聞いてくる」

 御者ぎょしゃをアレクさんと代わり、宿の中に入るエアハルトさん。
 五分もしないうちに戻ってくると、がっかりした顔をした。

「どうされましたか? エアハルト様」
「満室だそうだ。他に宿はないか聞いたら、どこも同じ状況らしい」
「まあ。どうしましょう、兄様」
「はあ……仕方ない。俺個人で持っている屋敷やしきに行こう」

 宿がどこもいっぱいなのは、ここ数日雪が降り続いていて、商人たちが足止めされているかららしい。今も雪が降っているから、その中を移動するのは危険ということなんだろう。
 というか、エアハルトさんってば、個人で持っている屋敷やしきって……
 さすがは元貴族で侯爵家の長男だね!
 エアハルトさんがまた御者ぎょしゃをして、中心部のほうへと向かう。
 そのまま真っ直ぐ行くと侯爵家の領主館に着くんだけど、途中で右に曲がり、さらに私たちが入ってきたのとは別の門の方向へと移動する。
 五分ほど走ると、馬車が停まった。

「ここだ」

 エアハルトさんが綺麗なお屋敷やしきを指さした。

「結構大きいですわね」
「まあ、それなりにな」
「本来であれば――」
「アレク、それは終わったことだ」
「……はい。申し訳ございません」

 アレクさんの言葉を珍しく遮るエアハルトさん。
 ……ここはたぶん、前の婚約者と住む予定だったお屋敷やしきなんだろう。
 そう考えたら胸がチリッと傷んだけど、今の婚約者は私だし、過去の話だからと考え直す。
 お屋敷やしきの外観は綺麗だけど、中はどうなっているのかな。
 普段の管理は侯爵家がしてくれているそうで、樹木などが枯れたりしていることはない。
 家の鍵もエアハルトさんが持っている分ともうひとつ侯爵家にあるそうで、わざわざ取りにいかなくてもいいという。
 さっそくエアハルトさんが門の鍵を開けて中へと入り、すぐに閉めてまた鍵をかける。
 ゆっくりと走り出した馬車の窓からうしろを見ると、降り積もった雪に馬の足跡と馬車のわだちができていた。かなり積もっているみたいで足跡とわだちは深い。
 車輪が半分埋まっているからなのか、スヴァルトルたちが移動に苦労している……なんてことはなく。そこは八本脚のスレイプニル、難なく玄関のところまできた。

「よし、手分けしてやるか。アレクはナディとリンに指示を出して、部屋の掃除や暖炉だんろの火入れを頼む。俺はこのまま厩舎きゅうしゃに行って、スヴァルトルたちを放してくる」
「かしこまりました」
〈一緒に行って、我が雪をどかそう〉
「助かる、ロキ」
〈〈我らが薪を運ぶにゃー〉〉
〈〈手伝うにゃー〉〉
「ありがとう。薪の場所は厩舎きゅうしゃに行く途中にあるから、そこまで案内しよう」

 ロキとレン一家がエアハルトさんを手伝うと言って一緒に外へ行く。
 寒いのに大丈夫かなあと心配になるけど、手伝うと言った以上大丈夫なんだろう。
 他のメンバーでお屋敷やしきの中へと入り、アレクさんの案内でまずは二階へと行く。
 二階には、主人の部屋や執務室の他に、ゲストルームがあるんだって。
 上から順番に掃除しないとほこりが下に落ちてしまうから、上から順に掃除をすることに。
 私とナディさんで両端から各部屋や廊下、窓をお掃除魔法の【ゴミ集め】で掃除する。
 ちなみに、アレクさんはサロンを担当している。
 それが終わると一階へと行き、食堂やキッチン、残りのゲストルームを掃除した。
 掃除が終わったところで、どこに寝泊まりするか相談したんだけど……
 四人プラス従魔たちしかいないので、ゲストルームは一階にある分だけで事足りてしまう。
 長くても一週間しか滞在しないそうなので、みんな揃って一階で寝泊りすることになった。
 部屋決めはあとでいいからと、まずは持っている薪や細い枝を使って、使用することになる四つの部屋の暖炉だんろに火を熾す。
 作業をしていたら、エアハルトさんとロキ、レン一家が薪を持って戻ってきたので、さらに薪をくべて室内を暖めた。
 その後、食堂とサロンの暖炉だんろにも火を入れ、そのまま厨房へいき、魔道具のコンロに魔力を補充した。それからやかんを出してお湯を沸かし、チャイをれる。

「部屋はどうする?」
「私は最後に選ぶのでいいです」

 広さに違いがあるわけでもないし、こだわりは特にない。どうやら私以外の三人も同じ意見だったようだ。

「なら、俺がそれぞれの部屋を決めていいか?」

 エアハルトさんの提案に全員で頷く。
 角部屋がエアハルトさんで、その隣は私、ナディさん、アレクさんといった並び順になった。
 まずは宛てがわれた部屋に行って、旅装を解いてから食堂に集まる。
 暖炉だんろに薪を足してからお昼ご飯の仕度をした。
 今回は全員でやったよ~。夜はアレクさんが作ってくれるというので、今から楽しみ!
 寒いのもあって、たっぷりの野菜とベーコンが入ったスープと蒸し野菜のサラダ。ホーンディアのステーキは、従魔たちがおかわりできるよう大量に焼かれている。
 飲み物はユーレモ水で、あとはまあるく焼かれた白いパンにバターと各種ジャムが置かれている。

「温かいうちに食べようか」

 エアハルトさんの音頭でご飯を食べ始める。
 まずはスープを食べてみると、野菜の甘さとベーコンの旨みがスープに溶け出していて、とても美味しい!
 しかも、根菜はホクホクで噛むとホロホロと崩れ、あっという間に口の中で溶けていく。
 ステーキもいい塩梅でとても柔らかいし、温野菜も火の通りが抜群。白いパンもそのまま食べると仄かに甘みを感じられ、バターもジャムも必要ない。


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