THE NEW GATE

風波しのぎ

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18巻

18-1

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 竜皇国キルモントに押し寄せる、かつてない規模のモンスターの大群に対し、巨大な防壁を建設しつつ迎撃する作戦に挑んだシン一行。
 シンと仲間たちの活躍により戦闘の終わりが見えたころ、中立的な動きをしていた不定形モンスターの集団が、他のモンスターを排除しながらシンの前にやって来る。
 そして、群れを率いる巨大なスライム状のモンスター・ゲルゲンガーは、オールバックの白髪の老紳士へと姿を変えた――。


「お初にお目にかかります。主の命を受け、シン様をお迎えに上がりました」
「俺を迎えに来ただと?」

 頭を下げる老紳士、ゲルゲンガーを油断なく視界に収めながら、シンは問う。
 いくら不定形とはいえ、元の大きさと違いすぎる。
 言葉を話すのはできたとしても、見た目が完全に人にしか見えない今のゲルゲンガーはシンの知識にはないものだ。警戒しないほうがおかしい。

「我が主が、シン様とぜひ話をしたいとおおせです。しかし、我が主は定められた場所より動くことのできない身。大変恐縮ではございますが、シン様にご足労そくろう願えないかと、こうして参上したしだいです」
「お前たちは、聖地からあふれる魔力で生まれたと聞いてる。とくに今回は、大量発生したモンスター同士で殺し合いをしてたって話だが?」

 ゲルゲンガーの言う主とやらが迎えを寄越よこした。そう解釈するには、今回のモンスター大量発生は物騒すぎる。

「つきましては、まずどのような経緯で我らが生み出されたのかを、ご説明する必要がございます。少々長くなりますので、お時間をいただくことになりますがよろしいでしょうか?」
「かまわない。話してくれ」

 シュバイドとセティはまだ戦闘中だが、不定形モンスターたちの援護もあって、もう危険はない。
 今までの動きから、何か仕掛けてくるにしても狙われるのは自分だろうと考え、シンは近くまで来ていたシュニーに姿を消した状態で待機するように指示を出した。

「まず、皆様が戦ったモンスターの系統が3種類に分かれていたのは、すでにご存知かと思います。その理由ですが、皆様が魔力の発生源としているあちらの孤島の中には、さらに3つの都市、皆様の言う聖地が存在しております。今回発生したモンスター群は、それぞれの聖地の勢力に分かれていたというわけです。私の主は、3つの聖地の内、ひとつを統括している方なのです」
「聖地が3つか」

 そんな話は聞いてないぞと、シンは内心困惑していた。
 シュニーやシュバイドに心話で確認するが、調査時はひとつしか確認できなかったという。
 ただ、調査は大陸から近い場所を基点にして行われているので、孤島の半分も調査できていない。残りふたつが見つかっていなくても、おかしくはないと返事があった。

「主についてですが、シンさまには『境界の守護者』といえば、おわかりいただけるかと思います」
「あれか。でも、今まであったやつらは、ほとんど問答無用でこっちを殺そうとしてきたぞ?」

 とくにイシュカー、正確にはイシュカーを操っていた守護者はシュニーたちを戦場に入れないように隔離してまでシンを狙っていた。
 ゲルゲンガーの言うように、話をするなどという和やかな雰囲気など一欠片かけらもなかったのだ。
 ゲルゲンガーの主が同じ『境界の守護者』なのだとすると、やり口に違和感がありすぎる。
 実際に行ってみたら実は罠で即戦闘なんてことになっても、むしろ納得してしまう確信がシンにはある。

「我が主は守護者の中では異端なのです。隣り合っているふたつの聖地から、攻撃を受けることも珍しくありません」
「どういうことだよ」

 てっきり『境界の守護者』は共通して、自分を敵視しているものだとシンは思っていた。
 出会ったが最後、全力で殺しにくるので会話どころではないし、情報もほとんどない。もし、何か情報が得られるならば、話を聞くのもやぶさかではないとシンは思う。

「『境界の守護者』とは、この世界そのものを守る存在。プレイヤーと呼ばれる者たちの流入もよくは思っていなかったようですが、まだ許容できるだけの要因がありました。しかし、シン様だけは別なのです。他のプレイヤーの方々と何が違うかは、すでに認識しておられるはず。異物と認識されるのは不本意でありましょうが、これはある種の本能のようなものなのです。とはいえ、行動範囲が限られるため、直接襲うことはまず不可能。本人たちからすれば、歯がゆいことでしょう。問答無用で襲ってくるのは、そのせいもあるかと思います」

 ゲルゲンガーはずいぶんと饒舌じょうぜつだった。変身するところを見ていなければ、人と見分けがつかない。

「今の話からすると、『守護者』は全員、行動範囲が決まってるのか?」
「私が知るかぎりでは、間違いなく。聖地にいるものは、大抵聖地から離れられません。最初に申しましたとおり、我が主がシン様の前に直接姿を見せられないのも、それが一番の理由でございます」

 話に矛盾はない、ようにシンには思えた。実際に体験したことと一致する部分も多い。
 ゲルゲンガーの話を信用するかどうかは一旦保留だ。

「なら『氾濫はんらん』……そっちでいうところの、モンスターの大量発生。あれはどうなんだ? あれのせいでこっちはずいぶんと被害が出ている。まさか、俺を探すためのもの、なんて言わないよな?」

 同士討ちしているのは確認済み。
 そうでなくても、大量に放って見つけようとしたなどという言い訳を聞く気はなかった。

「誤解されないよう先に申し上げておきますと、聖地からもれる魔力によって起こるモンスターの大量発生、こちらでは『氾濫』と呼ばれているそれは、すべてを各聖地の主が意図的に起こしているわけではないということを、ご理解いただきたいのです」
「どういうことだ?」

『意図的に起こされる氾濫』と『偶発的に起こる氾濫』があるということだろうかと、シンは眉根を寄せながら先を促した。

「聖地からもれる魔力は、皆様が生きている間に、無意識のうちに周囲に放出している魔力と同じなのです。もちろん、ある程度は抑えることも可能ですが、そうすると聖地の守護に当てているモンスターの数も減ってしまうため、攻め込まれる恐れがあります。そのため、ある程度は魔力を放出していなければなりません。普段、皆様が対処なさっているのは、その魔力の一部が変化したものでありましょう」
「こちらを攻撃する意図はないとでも?」

 どんな理由があるにせよ、モンスターに攻撃される側はたまったものではない。そんな意思を込めてシンがゲルゲンガーを睨むと、老紳士の姿が一瞬ぶるりと震えた。
 その様は、まるで水に映った姿が波紋で揺らいでいるようだ。

「指示はしておりません。ですがどのような理由にせよ、生まれたモンスターが人や他のモンスターを襲うのは事実。ご納得いただけるものではないでしょう。だからこそ、我が主と話をしていただきたい。これは私の推測ですが、我が主の意向しだいで、防衛に当たっている方々の労力やそれに伴う費用をなくすことも不可能ではないと考えております」
「伝言役なんだろ。お前経由で話し合うってのはダメなのか?」

 できるならさっさとしてもらいたい。それがシンの本音だった。

「私が話せることには制限がありますし、与えられた知識も限りがあります。皆様のように離れた相手と即座に連絡を取り合う手段もございません。大変恐縮ではありますが、残りは直接主にお尋ねください」

 いろいろと話をしたが、それでもゲルゲンガーはメッセンジャーでしかないということなのだろう。

「仕方ないか。で、最初に言ってた生み出された経緯っていうのは?」
「はい。我々が出現当初周囲のモンスター同士で戦っていたのはご存知かと思います」
「ああ、だからこうして壁を作ったり罠を仕掛けてたりしたわけだしな」

 シンは視線を横にずらす。
 まさに死屍累々ししるいるいといった光景だったものも、不定形モンスターたちが自身の内部に取り込んで消化していくことで多少は綺麗になりつつある。
 数体ならともかく、異常な数のモンスターの死骸しがいを放置するわけにもいかない。
 ゲルゲンガーたちが来なければ、シンたちがアイテムボックスを駆使して回収することになっていただろう。

「あれは特別なモンスター……私のような個体ですな、それを強くするためのものです。主の直接生み出した特別な個体の周りに、ある程度魔力をまとめて適当なモンスターの集団を発生させ、効率よくレベルを上げる。それがあの大量発生したモンスターの正体です。今回の場合、私と他の特別な個体では、生まれた目的は違いますが」

 パワーレベリングのようなものだろうかとシンは思う。
 意図的にモンスターを発生させられるのならば、そういうことも可能だろう。プレイヤーでも似たようなことはしていた。知性を持つモンスターが同じことをしないとは言えない。

「我が主は少々事情があり、こちらの大陸に住む方々の調査を行っておりました。そして、私たちのような個体を生み出す必要のある情報を得ました」
「情報の内容を聞いても?」
「問題ありません。シン様方にも関わりの深いことですので」

 関わりの深いことと言われて、シンは何があるだろうかと思案する。
 ぱっと思いつくのは瘴魔デーモンか悪魔関連。いろいろと関わっているといえる。
 それ以外となると、『境界の守護者』と呼ばれるものたちが動かなければならなくなるほどのことは思いつかなかった。

「特殊な情報というのは、世界樹のことなのです。世界樹を失ったことによる世界の自浄作用、リフォルジーラの出現が感知されました。あれはこの世界のシステムに由来するものですが、一歩間違えばこの世界を破滅させるものでもあります。それゆえ、何が起こっているのか調査することを我が主は決めました」
「え……」

 予想外の内容に、シンはつい声を漏らしてしまう。
 思いっきり関わっていた事柄だったことも驚きだったが、それ以上に驚いたのはその対応の遅さ。ラナパシアの園での出来事は、数日前どころの話ではない。
 同じようなことを考えたのだろう。フィルマとユズハがちらりとシンを見た。とりあえず続きを聞こうと、心話で伝える。

「他の聖地の主も立場は違えど同じ考えに至り、調査することになったのですが、大々的な調査をする方法は眷族けんぞくを放つ以外になく、それが今回の騒動へと繋がったのです。聖地からもれる魔力によって発生したモンスターに対処している皇国と話を付けられればよかったのですが、我が主以外は人そのものにあまり関心がないのでいかんともしがたく。モンスターを放つ時期を合わせることができただけでも、僥倖ぎょうこうという状態なのです」

 シンが声を漏らしたのが、リフォルジーラ出現の情報を聞いたからと判断したのか、ゲルゲンガーはそのまま話を続けた。
 シンたちとしては、もう少しやり方があったのではと思ってしまうところだ。

「得た情報は共有するという約定やくじょうのもと、私を含めたモンスターは放たれました。しかし、向かった先にシン様がいたため、調査から攻撃へと命令が切り替わってしまったのです」
「世界を破滅させるリフォルジーラの調査より、俺を倒すことのほうが重要だっていうのか?」

 もともとシンを見つけたら攻撃するようになっていたとゲルゲンガーは言うが、いくらなんでも優先順位が間違っているだろうといわざるを得ない。

「世界が滅ぶと申しましても、それはすべての生き物が死滅するということではありません。けがれを使い果たしたリフォルジーラは新たな命の苗床なえどことなり、新しい世界が形作られていきます。調査を決めたといいましたが、それはリフォルジーラを倒す、もしくは行動を停止させるといった行為のためではないのです。どこに出現して何をしているのか、それを知るためのものでした」

 リフォルジーラの出現は、世界の自浄作用。
 それが起こるほどに穢れた世界ならば、滅んでもかまわないと守護者は考えているようだ。
 いわば世界のリセット。
 リフォルジーラによって今の世界が滅んでも、また新しい生命が生まれ、次の世界を形作っていく。それを守護者たちは容認しているらしい。

「だからこんなにのんびりしてたのか」
「はい。守護者は人の味方ではありません」

 世界は守るが、その世界で生きるものにまで手は差し伸べないというスタンスのようだ。

「なのに、お前の主は俺を呼んでいると」
「はい。最初に申しましたとおり、我が主は他の守護者とは少々異なる考えを持っておりまして。シン様の存在も否定しておりません」

 守護者にとって不倶戴天ふぐたいてんの敵のような認識をされているシンを否定しない。確かにそれは、他の守護者から攻撃される理由になるだろうとシンは思った。

「否定しない理由を聞いても?」
「申し訳ありませんが、それについては知らされておりません」
「なら、ここの防衛にかかる手間を省けるかもしれないというのは?」
「それは簡単です。我が主が他の守護者の聖地を支配下におけば、防衛のためのモンスターを発生させる魔力を放出する必要がなくなります。そうなれば当然、こちらの大陸に流れてくる魔力もなくなります。聖地からの魔力がないのならば、モンスターが大量発生することもないということです」

 ゲルゲンガーの主は皇国とも交渉する気らしい。
 皇国としても、防衛にかかる費用をなくすことができれば、国庫金の負担が大きく減る。それだけ周囲の開発や民衆への政策に使える費用も増える。
 モンスターの影響で開発できそうな土地が使えなかったが、それにも手を付けられるだろう。皇国側に利益がありすぎるのではないかという懸念すら出そうだ。

『もし可能ならば、皇国にとってはよいことだとは思うが』

 心話でゲルゲンガーからの情報を共有しているシュバイドが、考え込むように言葉を切った。

『気になることでもあるのか?』
『モンスターが発生しなくなるのならば、様々な意味で喜ばしいことではある。しかし、仮にも世界を守るという存在を倒すのは本当によいことなのか?』

 シンを狙うのは許容できないし、襲ってくるなら倒すのもやむなし。しかし、守護者というからには何かからこの世界を守っている。
 そんな疑問をシュバイドはシンたちに投げかけた。一定範囲から出られないのならば、近づかなければいいだけでもある。
 攻撃される側のシンは守護者を倒すことにそこまで消極的ではなかったが、シュバイドの指摘で少し頭が冷える。
 ゲルゲンガーはプレイヤーの流入なんてことも言っていた。
 その言葉は、この世界がゲームとよく似た世界、もしくはゲームが現実になった世界と認識していたシンに、改めてこの世界は何なのか、という疑問を抱かせる。

「この世界についても、お前の主は知っているのか?」
「主が何を知り、何を知らぬのか。それは創造されたわが身にはわかりかねます。しかし、この世界に生きる『人』よりも多くのことを知っているのは間違いないでしょう」

 そう言ってゲルゲンガーは小さくうなずく。
 本当は知っているのではないかとシンは思ったが、表情がまったく変化しないのでそこから嘘を付いていないか探ることはできなかった。
 なにせ今の顔は作り物である。感情が顔に出る、なんてこともないのだろう。
 この世界のことについて、人よりもモンスターのほうがよく知っているという点については、シンも実体験から理解している。
 エルフやピクシーのような長命種ですら、『栄華えいが落日らくじつ』前から生きている者は多くない。伝承という形で残っていても、正確に伝わっていないことも多かった。
 かつて実際に起こっていたことも、今では不確かな伝説になってしまっていることもある。
 ヒノモトのフジにいたカグツチや、シンたちのホームのひとつラシュガムにみ着いたツァオバトなど、記憶と知識を持つモンスターのほうが世界の、いわば真理に近い存在だ。

(長く生きてるって意味じゃ、ユズハもそうなんだけどな)

 そう思いながら、シンはちらりとユズハに視線を送る。
 深い叡智えいちを有するモンスターとしても、エレメントテイルは有名だ。子狐モードの様子からは想像するのは難しいが、本来のユズハならば大抵のことは知っていそうなものである。

「……わかった。話を聞かせてもらおう。ただ、他の守護者をどうするかは話を聞いてからだ」
「ありがとうございます」

 他の聖地の守護者を倒すことは、話し合いをする条件というわけではない。
 シンは話を聞いて、その上で倒す必要があるというならば倒すし、必要なしと判断すれば倒さず帰るつもりだ。素直に帰らせてくれればだが。

『本当に行くのですか? 聖地は守護者の本拠地のようなものでしょうし、何か罠を仕掛けている可能性もあります』

 行くと言ったシンに、即座にシュニーから心話が入った。
 今までは偶然による遭遇戦のようなものだったが、今回はそうではない。交渉などという手段を使ってくる時点で、今までの守護者と違うのは明白だ。
 シンたちには本当に守護者同士で敵対しているのかもわからない。
 シュニーの懸念けねんももっともで、もしかすると向かった先で、3体かそれ以上の守護者に襲われる可能性だってある。

『わかってる。それでも、この世界について無知でいるのはよくないと思うんだ』

 そもそも、シンは理由もわからずこの世界にやってきた。
 いったい何がどうなっているのか。来た当初こそ気になっていたものの、今ではそれを考えることはほとんどない。
 この世界でどう過ごしていくか、目の前の問題をどう片付けるか。そういったもののほうが圧倒的に多い。
 ゲルゲンガーは、シンは他のプレイヤーと違い異物と判断されていると言った。
 シンが思い当たるのはゲームで死ぬことなくこちらに来たこと。もしくは最終ボス扱いだったオリジンを倒したことのどちらか。
 しかし、本当にどちらかなのか、そうだとすればなぜそれが異物扱いされる要因なのかなど、わからないことばかり。

『いや、少し違うか』

 もっともらしい理由を考え口にしたが、真面目に考えてふと思う。
 モンスターの大群をさえぎる壁もでき、残りを作り終えればゲルゲンガーの主が他の守護者と争ってまたモンスターがあふれようと気にする必要はなくなる。
 土地はもったいないが、モンスター相手に交渉するのは本当に可能かもわからないし、交渉が必ずうまくいく保証もない。向こうが出てこられないならほうっておけばいい。
 それが一番楽で、面倒のない解決法だ。守護者がなんと言おうとシンはこの世界で生きていく。
 特別どこかを支配しようだとか、力を使ってわがままに生きようだとか思っているわけでもない。
 普通に暮らせるのが一番なのだ。今ならば、どこかに腰を落ち着けて実力のある冒険者として生活するのも可能だ。スキルを使えば、正体を隠すことなどたやすい。
 ならなぜそれをしないのか。わざわざ守護者に会いに行こうなんて思うのか。
 理由は多々あれども、つまりは認めて欲しいのだとシンは思う。
 この世界に対して、自分は悪意など持っていない。この世界で生きて行きたい。それを伝え、この世界で生きていていいと認めてもらいたいのだ。

「主に先触さきぶれを出します。すぐに出発なさいますか?」
「話を通しておかないといけない連中がいるが、待たせて大丈夫なのか?」

 向こうが来られない以上シンたちの都合に合わせるほかないのだが、あまり時間をかけて第2のヘルトロスやセルキキュスのようなモンスターが出てきても困る。

「今回のような大量のモンスターを発生させるのは守護者といえども簡単なことではありません。人のこよみならば、1月は余裕があります」

 人の使う時間の概念もあるようだ。太陽の昇った回数や傾きなどで表されるかと思ったがそうでもないらしい。

「わかった。なら2日後の今くらいの時間に……いや待った。お前たちって時間は計れるのか?」
「日数はわかりますが、細かい時間は指定いただいても対応できるかと言われますと難しいとしか言えません。我々には皆様と同じ時間を正確に計測する能力がありませんので」

 シンや元プレイヤー、サポートキャラクターならばメニュー表示の隅に時刻表示がある。
 そうでなくとも、ある程度身分の高い人や裕福な人ならば時計を持っていることも珍しくない。しかし、モンスターの身ではさすがに難しいようだ。

「なら、これを渡しておく。見方は知ってるか?」
「初めて目にします。詳しい使い方について、ご教授していただいてもよろしいでしょうか」

 シンがゲルゲンガーに渡したのは、アイテムボックスの中に入っていた懐中かいちゅう時計だ。
 ゲーム時代に作製したもので特別な能力はほとんどついていない。使い方を教えて現時刻と同じくらいに戻ってくると告げる。


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