THE NEW GATE

風波しのぎ

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5巻

5-1

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「見えてきた!」

 シンと、ベイルリヒト王国第2王女であるリオンが聖地カルキアに転移してから3日。南下を続ける2人の視界に、城砦じょうさい都市バルメルの城壁じょうへきが見えてきた。
 本来なら3日で着くなど不可能なのだが、そこは上級選定者せんていしゃ。飛竜もかくやという速度で飛ばした結果だ。
 同じく聖地からバルメルに向かう、モンスターの大群との距離はかなりある。ゴブリンなどが主体で動きは遅いので、まだ1週間近く余裕よゆうがあるだろう。

「私は領主に会いに行く。シンは冒険者ギルドに報告を頼む」
「わかった。その後はどうする?」
「『氾濫はんらん』――モンスターの大規模侵攻を迎撃するとなれば、ギルドと軍の協力は不可欠だ。すぐに選定者が集まることになる」
「なるほど、了解だ」

 現在の時刻は、ちょうど正午を過ぎたところだ。深夜や早朝ではないので、受付で待たされることもないだろう。
 リオンは門のめ所にいた衛兵に事情を話し、領主の城へと案内されていった。
 シンもまた、衛兵に場所を聞いて冒険者ギルドへ向かう。

「ベイルリヒトとファルニッドの中間くらいか?」

 シンが口にしたのは、見かける人種の話だ。ベイルリヒトよりも獣人が多いが、ファルニッドよりはヒューマンが多く、エルフやドラグニルもそれなりに目にした。
 聖地からあふれ出すモンスターを食い止める防衛のかなめであり、山と海の恵みが豊かな都市というだけあって、様々な種族が集まっているのだろう。

「にぎやかだな」

 足早にしばらく歩くと、見慣れた看板が見えてきた。
 扉を開いて中に入ると、カウンターに向かう。

「すいません。ギルドマスターに取り次いでいただきたいのですが」
「失礼ですが、どのようなご用件でしょうか?」

 メガネをかけた、キャリアウーマンのような印象を受けるエルフの受付嬢が、怪訝けげんな顔でたずねてくる。
 シンはバルメルに来たのは初めてだ。顔見知りならいざ知らず、面識のない冒険者がいきなりギルドマスターを呼べと言えば、不審ふしんにも思うだろう。

「『氾濫』について情報があります。ギルドカード以外にも、身分を保証する物もありますが」
「……少々お待ちください」

 一瞬黙考もっこうし、受付嬢が軽く会釈えしゃくして奥へと引っ込む。『氾濫』と聞いては無視するわけにもいかないのだろう。

「こちらへどうぞ」

 数分で戻ってきた受付嬢が、シンを奥の部屋へとうながした。ギルド内の作りはどこの街でもほとんど同じらしく、少し歩くと大きな扉が見えてきて、受付嬢がそれをノックする。

「エリザです。例の冒険者の方をお連れしました」
「開いている。入ってもらえ」

 扉の向こうからは男性の声で返答が来た。
 この受付嬢はエリザという名前らしい。
 エリザの開けてくれた扉をくぐって、シンは部屋の中に入る。

「ようこそ冒険者ギルドへ。私がギルドマスターのバレン・ラクトだ。『氾濫』についての情報を持ってきたということだが、詳しく聞かせてくれんかね」

 ソファーをすすめられたとき、バレンに観察されているとシンは感じた。
 バレンの見た目は60すぎといったところ。髪は白いものが多く、顔にはしわも目立つ。しかし、柔和にゅうわな顔をしていても、その眼光はバルクスにもおとらぬするどさを持っていた。

「俺はシンといいます。『氾濫』が発生したのは聖地カルキア周辺。ゴブリン、オーガなどの人型モンスターが主となっています。進行速度から見て、こちらに来るまで一週間はかかると思われます」
「……まるで見てきたような言い方だね。情報源を聞いてもいいかな?」
「おっしゃる通り、見てきました。詳しくは言えませんが、聖地の近くまで行った際に大量のモンスターがバルメルへ向けて移動しているのを確認しています。すでに連れがここの領主に連絡しに行っています」
「領主に? お連れの方は身分の高い方なのかな?」

 わずかに目を細めて、バレンは問う。
 領主にすぐ謁見えっけんできるとなれば、それなりに地位の高い人物でなくてはならない。さすがに聖地に近い都市のギルドマスター。話が早い。

「連れの身分についてはすぐにわかるでしょう。間もなく情報が下りてくるはずです。それより、俺の情報は信じていただけますかね?」
「ふむ、私としても『氾濫』と聞いて黙っているわけにはいかない。しかし、現状では君の言うことには一切の証拠がない――」

 そう言いながらあごに手をやるバレン。
 ただ、言葉とは裏腹にすでに早馬を出して情報の成否を確かめているようだ。ギルドからあわただしく出ていく者たちがいることを、シンは感知していた。

「君がAランクの冒険者とでもいうなら、話は別なのだがね」

 バレンとしては、早く行動に移せるに越したことはない。しかし、組織の長である以上、シンの情報をすぐ鵜呑うのみにするようなことはできない。

「では、これでいかがです?」

 探るような視線を受けて、シンはアイテムボックスから月のほこらの紹介状を取り出した。

「まさか……」

 紹介状を見て、エリザが言葉をらす。

「すでにベイルリヒトのギルドマスターに、本物だとお墨付すみつきをもらっていますよ」
「……なるほど、これを見せられては信じないわけにはいかないな」

 バレンも視線に含んでいた疑念ぎねんを消した。

「確かめないので?」
生憎あいにくと私は紹介状を持っていなくてね。ただ、君が言ったようにバルクス殿と連絡を取ることはできる。君が嘘をついていてもすぐにわかるというわけだ」
「では――」
「うむ、これより非常事態宣言を発令する。君の言う連れが領主に話をつけてくれるなら、すぐにでも軍は動くだろう。連絡が来しだい、我々は住民の避難準備を開始する。エリザ、各ギルドの代表者に連絡をつけてくれ」
「承知しました」

 命令を受けたエリザが部屋を後にした。軍や部隊の編成、物資の調達、住民の避難と、これからやるべきことは多い。

「君はこれからどうする? 察するに上級選定者なのだろう? 私としては是非ぜひとも協力願いたいが」
「聞かれるまでもないですよ。おっしゃる通り上級選定者ですから、ある程度は期待していただいて結構です」
「それは心強い。ならば、この都市にいる他の選定者と顔合わせをしておくといい」

 バレンの話では主力となる選定者、とくに上級選定者クラスは一般の冒険者や騎士と同じ部隊にはできないので、選定者同士でパーティを組んで戦うことになるという。武具も自分専用の物を持っていることが多いので、通常の冒険者より準備に手間取らないそうだ。

「今はバルメルを守る選定者が、1人少ないと聞きましたが」
「知っていたか。こちらとしてもそれを懸念けねんしていたんだが、君という戦力が加わってくれたからね。幾分いくぶんかマシになったと思いたいところだよ」
「連れも選定者ですから、だいぶ当てにできますよ」
「それはありがたいことだ」

 選定者が経営しているという店の場所を聞き、シンは冒険者ギルドを後にした。選定者といっても皆が皆、冒険者や騎士になるわけではないのだろう。


         †


「あれか……どっかで見たような看板だな」

 言われた通り道を進んだ先で、目印の看板を見つける。肉球と小さな魚の描かれた看板に、シンは首をかしげた。

「肉球、小魚……いや待て、あれは……煮干にぼし?」

 肉球と煮干し。その組み合わせに、シンの脳裏のうりひらめくものがあった。

「店の名前は、『にゃんダーランド』……だと? ま、まさか」

 ここにはいないはずの人物を思い浮かべながら、シンは店の扉を開ける。カランとベルの鳴る音を立てて店の中に入ると、そこは落ち着いた雰囲気のバーになっていた。
 見覚えのある、いな、見覚えのありすぎる内装にシンはどう動くべきか一瞬迷った。

「ん? お客さん、申し訳ありませんがまだ開店前となっております。お酒はもう少し日がかたむいてからの方が、美味おいしくいただけますよ」

 シンが固まったまさにその時、店の奥から深みのある男性の声が聞こえた。
 これまた聞き覚えのありすぎる声に、シンは声のした方向へ顔を向ける。

「……ひびねこ、さん?」
「確かに、親しい人にはそう呼ばれていますが……゛にゃ゛にゃ゛にゃっ!?」

 その人物は、シンの顔を確認すると全身で驚きを表現した。
 種族は猫のハイビースト。外見は、二足歩行の猫が服を着ている、という以外に表現のしようがない。顔は大部分が白いのだが耳だけが黒い。なぜか顔の毛の一部が灰色になっており、それがタイルに入ったひび割れのように見える。
 シンが呼んだ「ひびねこ」というのはそこからついたあだ名だ。ゲームだったころのアバター名は、【猫又ねこまた@ライジング】である。
 声だけ聞けば、しぶ壮年そうねんの男性を思い浮かべるのだが、低身長、着ぐるみ体型のせいで、遊園地にいるような動物をデフォルメしたマスコットキャラクターに見えなくもない。
 頭上にビックリマークでも浮かんでいそうなり具合が、見た目と相まって漫画のギャグキャラのようである。

「そ、そっくりさんですかな?」
「誰のですか! あ、いやでも、なんで。ひびねこさん、あなたはデスゲームで……」

 死んだはず。
 声にこそ出さなかったが、シンはそれが間違いないことを知っている。
 しかし、【分析アナライズ】で表示されるのは間違いなく【猫又@ライジング】だ。

「本当に、なのか……?」
「あー……間違いなくひびねこさんだ……とりあえずその呼び方をやめようか」

 名前の最後に「にゃー」をつける独特の呼び方に、シンは緊張が霧散むさんするのを感じた。思えばゲームだったときも、意図せず場の空気を変えるプレイヤーだった。

「はぁ、なんだかよくわかりませんが、お久しぶりです、ひびねこさん。いや、猫又@ライジングさんと呼んだほうがいいですかね?」
「むぐっ、吾輩わがはいの封印されし真名しんめいを知っているとは、やはりシンにゃー」
「【分析アナライズ】で見ただけですけどね。というか、マジでシンナーみたいな呼び方はやめてください」

 以前もわしたことのあるやり取りをしながら、シンはため息をつく。

「ふぅむ、どうやら本当にシンのようだな……なあ、シン。これだけは、確認させてほしい。シンは死んでしまったのか?」
「いや、それはない、はずです」

 シンは【オリジン】に勝ってから自分の身に起こったことを簡単に話す。少なくとも死んでいないはずなのだ。

「いやはや、そんなことが」
「こっちとしては、どうしてひびねこさんがここにいるのかが気になるんですが」
「それについては吾輩にもわからん。デスゲームで命を落として、気がついたら草原に寝ていたのだ。レベル、ステータス、アイテム。そういったものは死ぬ前と変わりなかったので、生きていくには苦労はしなかったがな」

 バルメルは一番最初に辿たどり着いた場所らしく、ここを拠点きょてんに冒険者として活動していたという。

「じゃあこの店は何なんです?」
「冒険者として活動するよりも、こっちのほうがしょうに合っていたのだ」

 バー『にゃんダーランド』は、ゲーム時代にひびねこがやっていた店の名前だ。メニューの半分がの系統なのも変わっていない。

「それに、他にもプレイヤーが来た時の目印にもなる」
「他にもいるんですか!?」

 どうやら、シンが思っていたより事態は大規模なようだ。デスゲームで死んだはずのプレイヤーが何人もいるなど、予想外にもほどがある。

「吾輩が知っている限りではシャドにゃー、ホーにゃー、マサにゃー、ヒラにゃーがこの世界に来てるのは間違いない。ただ……」
「ただ?」
「他にもPKが何人か来ているようだ」
「PKが!?」

 プレイヤーが来ている。それを聞いて、たとえ元の世界で死んでもこっちで生きていられるのなら救いがあると思ったシンだが、続くひびねこの言葉を聞いて表情が変わる。
 PK――プレイヤーキル、もしくはプレイヤーキラーの略称だ。プレイヤーがプレイヤーを殺す行為、もしくはそういった行動をするプレイヤーを指す。今回は後者の意味だ。
 そして、デスゲーム時代のPKといえば、好んで人を殺す凶悪きょうあくな者たちがほとんど。

「誰が来てるか、わかりますか?」
「さすがにすべては把握はあくできていない。ただ、ハーメルンが来ているのは間違いないようだ」
「あいつが来てるんですか? 厄介やっかいな……」

 ハーメルン、その名を聞いたシンの表情は硬い。
 デスゲーム時代にモンスターを利用したPK――MPK(モンスタープレイヤーキル)の常習犯として知られていたプレイヤー、それがハーメルンだ。
 ハイピクシーであり、シュニーたちほどではないが、この世界の上級選定者を上回る戦闘力を持っていた。

「この世界でも、すでに多くの国で指名手配されている」
「何をしたんですか?」

 聞かずとも予想はできたが、それでもシンは聞いた。

「大量のモンスターを引き連れて、街を襲ったらしい。大きな街ではなかったようだが、全滅したという話だ」
「あの野郎。こっちでもやってることは同じか」

 デスゲーム時にとどめを刺した因縁を持つシンとしては、なんでそんなプレイヤーがこの世界にいるのかと思ってしまう。

「まあ、今は考えても詮無せんなきこと。それよりもシンはなぜこの店に?」
「ああ、もうすぐ連絡が来ると思うんですけど、『氾濫』が起こったんですよ。で、ギルドマスターに選定者同士顔合わせをしておくといい、って言われてここに」
「そういうことか。なら、シャドにゃーたちにも声をかけておこう」

 ひびねこは少しの間、黙り込む。プレイヤーだということもあって、シンはひびねこが【心話しんわ】を使っていることがわかった。

「シンのことを話したら、すぐに来ると言っていたぞ」
「近くにいるんですか?」
「おとなりさんだ。看板を見なかったかね?」
「それが、肉球の看板に注意がいってまして」
喫茶店きっさてん『B&W』を見逃すとは、シンもまだまだだな」
「『B&W』? それってシャドゥさんとホーリーさんの」
「そういうことだ。ちなみに、娘さんもいるぞ」
「マジですか!?」

 娘がいる、のくだりで驚くシン。この世界では元プレイヤーでも子供が作れるらしい。
 詳しい話を聞こうとしたところで、店の扉が勢いよく開かれた。

「シンちゃんがいるってほんとなの!?」
「おいホーリー、少し落ち着け」


 扉を蹴破けやぶるように入ってきたのは、ハイエルフとハイロードの2人組だ。
 大声を上げたのがハイエルフの女性で、ゆるくウェーブのかかった白髪とあおき通った瞳が印象的だ。そんな彼女をたしなめているのが、シンと同じ黒髪黒目のハイロードの男性。美男美女という言葉が、実によく似合う2人である。

「あの……ホーリーさん……できれば、付けはやめてください」

 相手をちゃん付けするのはホーリーの癖なのだが、シンはどこかの幼稚園児と同じ呼び名になってしまうので、呼ばれるたびに訂正するように要求していた。最後に会ったときは君付けだったのだが、動転しているせいかすっかり忘れているようだ。

「ほ、ほんとにシンちゃんだわ。ああ、なんてことなの……」
「……ひびねこさん。なんだか思いっきり勘違いしてるっぽいんですけど」
「う、うむ、シンに聞いた話は大方伝えたはずだが」

 どうやら死んでこの世界に来たと思っているようだ。目に涙をめていることからも、間違いないだろう。

「おいホーリー、シンは死んでいないぞ。ひびねこの話を聞いていただろう」
「えっ? そうなの?」

 もともと早とちりな性格だったのだが、こっちにきてもそれは変わらないらしい。シャドゥがたしなめるのもいつものことだ。

「本当ですよ。少なくとも、HPが0になってこっちに来たんじゃないのは間違いありません」
「よかったわ。私てっきり……でも、ならどうしてここに?」
「わからないと言っていただろう。それにしても久しぶりだな、シン。また会えて嬉しい、と言っていいのかはわからんが」

 ホーリーの問いに答えつつ、シャドゥが声をかけてきた。

「いえ、俺も会えて嬉しいですよ……再会、できたんですね」
「死んだあとというのは、予想していなかったがな」

 シンとシャドゥは、このメンツの中では一番付き合いが長い。一時、パーティを組んでいたこともある。シンはシャドゥとホーリーが一緒にいるのを見て嬉しく、同時にうらやましくなった。
 シャドゥとホーリーは現実世界でも夫婦で、仲のよさは仲間内でも評判だったのだ。死してなお、異世界とはいえ共にいられるということに、軽く嫉妬しっとしてしまう。

(まあ、俺との場合はちょっと事情が違うからな)

 2人みたいな再会を願いそうになって、自重じちょうするようにシンは小さく肩をすくめた。

「とりあえず、再会を喜ぶのはここまでにしましょう。ちょっと状況が状況なんで」
「そうだな。『氾濫』が起こったと聞いては、吾輩も落ち着いてはいられん」

 シャドゥも表情を変える。

「冒険者ギルドはもう動いているのか?」
「はい、領主にも連れが話をしてます。各ギルドにも連絡がいってるはずです」
「さすがに対応が早いわね。でも、シン君の話をギルドマスターがよく信じてくれたわね」
「そこは、これを」

 シンはホーリーの前に月の祠の紹介状を取り出す。それを見ると、皆納得したようにうなずいた。

「そっか。もうホームには行ったのね」
「目覚めた場所から近かったので、最初に行きました。もうシュニーとも会いましたよ」

 3人とも月の祠の状況は知っていたようで、ホーリーなどは、シンに詳しい話を聞きたそうにしていた。しかしさすがに呑気のんきにしている場合ではないので、シンはホーリーの視線をスルーして話を戻す。

「ギルマスにも言いましたが、モンスターはゴブリンやオーガといった人型がメインです。注意するべきはとにかく数ですね。ゲームのイベントでもそうは見ない数でした」
「低レベルモンスターが大量に湧くのは『氾濫』の特徴だ。吾輩たち近接タイプは面の攻撃への対応が難しいが、シンがいてくれるなら心配はいらなそうだな」
「見つけたときにやってしまえばよかったんじゃないか?」

 シャドゥが冗談とも本気ともつかない調子で言った。

「いやそれが、例の連れってのがベイルリヒト王国の第2王女様なんですよ。さすがにそんな人の前で力を使うのはなあ、と」
「怖がるか、たたえるか、いずれにしろ混乱するでしょうねぇ。こっちじゃハイヒューマンって、半分神様みたいな扱いを受けてるし。シン君のサポートキャラクターのシュニーちゃんはすごく有名だし」
「そうなんですよ。しかも今でも十分興味持たれてて。シャドゥさんの言うとおり、俺も戦って犠牲を出さないようにするつもりなんですけど、俺だってことがばれたくないんです」

 そう、数がいくらいようと所詮は大半がレベル100もいかない雑魚ざこ。広範囲魔術スキルで焼き払えなくはないのだ。
 それをしなかったのは、リオンが近くにいたからだ。

「権力者というのは、いつの時代も厄介やっかいなものだ。くだんの第2王女の場合は、そこまで毒されてはいないと聞くが」

 ひびねこに続いてシャドゥが口を開く。

「まあ、王族となれば俺たちとは配置が違うだろう。おそらく、派遣組と一緒になるはずだ」

 派遣組とは持ち回りで各地に配属される選定者たちのことだ。リオンの言っていた魔剣士と魔導士が該当がいとうする。

「だといいんですけど」
「それに我々が知り合いだと言えば、王女と別々になるのはほぼ確定だろう。急造のパーティと連携の取れるパーティとでは、戦果が大きく違う。そのあたりはギルドマスターも理解している」
「むしろ私たちが足手まといになるかしら……シュニーちゃんは来ないの?」
「今はベイルリヒトです。俺がここにいる原因でもあるんですけど、王城内に瘴魔デーモンがいたみたいで」
瘴魔デーモンが?」

 シンの言葉にシャドゥが反応する。ひびねこやホーリーも声には出さなかったが、同じように驚いているようだった。
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