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「今からこの国で“道徳の授業”を受けてもらう」
そう言われ、あなたが開いた教科書の最初のページにはこう書かれていた。
『白髪こそが“正義”であり、黒髪こそが“悪”である』
…どう思うだろうか?
疑うか? 怯えるか? それとも、怒りを覚えるだろうか。
だが、この国に生まれ、生きる者たちは、皆こう答える。
──それが、“当たり前”だ、と。
文字数 7,173
最終更新日 2025.06.11
登録日 2025.06.11
『白髪は“正義”、黒髪は“悪”──』
雨が降り頻る大都市。灰色の空の下、白髪の人々だけが行き交うスクランブル交差点。黒髪の姿はどこにもない。
『その歪んだ常識に慣れきった国民を敵に回すことが、どれほど危険か──』
白いスーツ姿の白髪議員たちがTVカメラの前で高らかに演説する。白髪の聴衆も拍手と歓声で応える。
『わかっていても、白髪の霞城瞳后[かじょう ひとみ]は黒髪の男を救った。』
薄暗い部屋。雨音が微かに響く中、フードを被った黒髪の男を庇うように立つ1人の女性のシルエット。その髪は紛れもなく白だった。
『それが──』
──過去。幼き日の瞳后と白黒の髪の男が黒いゴーグルをつけて机越しに立ち、笑っている過去。
『彼女が、かつて亡き親友と交わした、“この国を変える”という唯一の約束であり、芯であった。』
机の上に置かれた2冊のノート。その表紙にはこう書かれていた。
【俺プロジェクト】
このノートをキッカケに、ある2人の物語が始まる──
文字数 15,385
最終更新日 2025.05.31
登録日 2025.05.31
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