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「心肺停止を確認」――瞳の揺れから思考を透かす無表情なセーラー服とすべてを失った男。体温と秘密を貪り合う『歪んだ日常』。
彼女が引き金を引き、俺が死体を片付ける。
無表情なセーラー服の少女と、余命二ヶ月の元刑事。
濡れたアスファルト、硝煙の匂い、漆黒の自動拳銃(グロック19)。
――システムは、小さなバグで容易に崩壊する。
無職になった初日、俺のスマホは完全に死んだ。
誰の連絡先もわからない、社会という牢獄からの静かな解放。
「俺の脳は、帰宅と奇跡の区別ができないほどに劣化している」
毎日飲む苦い薬の山と、錆びたアパート、お隣の喋らない少女。俺の永遠の夏休みは、平穏に終わるはずだった。
その日常を崩壊させた『バグ』――。
それは、隣の部屋から響いた、人が倒れる重い振動。
慌てて開けたドアの先。いつも通り無表情に佇む少女の細い指先には、その可憐な姿に不釣り合いな高強度ポリマーフレーム。
床に転がる、脳幹を撃ち抜かれた生暖かい肉塊。
「心肺停止を確認」
少女の細い高周波の声に、俺の脳の設定が強制的に書き換わる。
次々に増えていく肉塊と、黒い死体袋。
三十キロ台の細い身体の少女では、成人男性の死体すら運べない。
未来のない余命僅かな俺と、過去を抱える無表情な少女。
彼女が作る死体は、俺が片付ける。
これは、俺が最後に選んだ、残酷で美しい「救済」の物語。
登録日 2026.06.01
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