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美大進学を夢見る高校2年生の美晴(みはる)。しかし、親からの反対とスランプで、大好きだった絵を描くことから逃げていた。そんな夏休み、鷹匠の叔父の基に滞在することになり、長年の相棒であるワシミミズクの「月読(つくよみ)」の世話をすることに。
大きな瞳でじっと世界を見つめる月読。夜の闇に溶けるような美しい羽の模様、獲物を見つめる鋭い眼差し。言葉を交わさずとも、その静かな佇まいや仕草の一つひとつをスケッチするうちに、美咲は忘れかけていた「描きたい」という衝動と、創作の喜びを思い出していく。
進路に揺れる少女と、悠久の時を生きるようなワシミミズクとの静かで穏やかな日々が、少女の心をゆっくりと解きほぐしていく、再生の物語。
文字数 11,105
最終更新日 2025.07.30
登録日 2025.06.30
高校二年生の柳田八雲。彼は教室の窓際、一番後ろの席が定位置。他人とのコミュニケーションを極度に苦手とし、休み時間はいつもSF小説かヘッドフォンの奥の世界に没入している。要領は良くないけれど頭は良く、自分の内なる世界には確かな自信を持っているけれど、過去のトラウマから現実では心を閉ざしがち。
そんな彼の隣の席に座るのは、月山栞。クラスでも目を引く清楚な佇まいで、彼とは対照的にファンタジー少女漫画『星詠みのエトランゼ』を愛読している。どこか掴みどころがなく、違う世界に生きているように見える彼女に、八雲は密かに心を惹かれていく。
勇気を振り絞った告白は、「見ている世界が違う気がする」という彼女の言葉と共に、儚く散ってしまう。打ちひしがれた八雲だったけれど、彼女の「世界」を知りたい一心で、手に取った『星詠みのエトランゼ』。その緻密な世界観と複雑な伏線に、彼は意外なほど深く魅了され、寝食を忘れて分析に没頭するように。
溢れる考察への熱意を誰かと共有したい。けれど現実では叶わない。彼は「深読みのシグレ」という名前で、匿名でSNSに考察を投稿し始める。その鋭い分析と作品への深い愛は瞬く間に注目を集め、熱心なファンたちの間で話題に。
そんな中、「月の雫」と名乗るアカウントから、シグレの考察、特にその繊細な感性への共感を示すリプライが届く。それは、隣の席の彼女、月山栞だった。栞もまた「シグレさん」の紡ぐ言葉そのものに価値を見出し、二人の交流が始まる。
『星エト』の話題から始まったDMは、次第に個人的な領域へ。栞は「シグレさんになら話せる」と、現実の友人にも打ち明けられないような悩みを、画面の向こうの「シグレ」にだけ、そっと打ち明けるようになる。信頼される喜びと、正体を隠していることへの激しい罪悪感。理想の友人「シグレ」を演じながら、現実の自分とのギャップに八雲は苦悩する。
隣の席にいるのに、決して交わることのない現実。画面越しに深まる、危ういほど親密な関係。この秘密の繋がりは、いつか彼女を深く傷つけるのではないか? 違う世界に生きる二人の距離は、果たして縮まるのだろうか。
文字数 44,238
最終更新日 2025.07.11
登録日 2025.04.23
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