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異世界とは、その名の通り現世とは異なる世界だ。
剣と魔法があり、モンスターがいて、勇者が魔王を倒す。
そういうものだと、霧島龍之介は本で読んだ。漫画でも見た。
知っているのはそこまでだ。
霧島龍之介、十六歳。最後の身寄りが蒸発し、残された温泉旅館「よりみち荘」を一人で継いだ若主人。女装が趣味。現在、赤字経営。
そんな彼の前に現れたのが、シャスール。
中世ヨーロッパ風の異世界から転移してきた猫耳の剣士で、その異名は剣鬼。
唯一の使い手である妖流の剣技を持ち、モンスターの知識は豊富、現代日本の知識はゼロ。
生卵に毒と疑いをかけ、ルンバに抜刀し、自動販売機を神と崇める。
気づけばよりみち荘に住み着いていた。家賃の代わりに番をするという。飯と温泉が目当てなのは全員わかっている。
やがて荘には次々と訳あり異世界人が転がり込んでくる。
深夜にベースをかき鳴らすエルフの姫君、貧乏一人暮らしに奮闘する騎士姫、天井裏で生ゴミを貪るグール——
帰れない者たちは今日も荘に集い、飯を食い、湯に浸かり、時々やらかす。
ラブコメになりそうで、ならない。
異世界王道、現世では全部ズレてる。
温泉宿「よりみち荘」、本日も営業中。
文字数 12,659
最終更新日 2026.05.02
登録日 2026.05.01
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