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 それは、持て余すほどに甘く、切ない恩返し——。  憑依体質に侵されている齢十七の岬は、たった一つの居場所であった母を失い、あの世へ逝くことを望んでいた。 「(私はもう……生きる理由なんてないんだよ)」 「阿呆、勝手に逝くな」  しかし、突如現れた怪しげな男はそれを許さない。見目麗しいその男は、母と育てていた鈴蘭の化身・厘。“妖花“ という名のあやかしだった。  厘の使命は、憑依によって削られていく精気を「キス」で注ぎ、岬の命をつなぎとめること。 「もう、失いたくない」   そして、ぶっきら棒で庇護欲溢れるあやかしと暮らすうち、岬は生きる意味を取り戻していく。しかし、憑依に係るトラブルは次第に厄介なものへと変化していき——。  生きる意味を失った少女と、"恩返し"に勤しむあやかし。憑依の謎に迫りながら繰り広げる、絆と愛の物語。
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文字数 115,780 最終更新日 2023.01.22 登録日 2022.12.04
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