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アニメなら、ぼっちにも個性がある。
でも現実の僕には、ぼっちと呼べるほどの個性すらなかった。そんな奴の話だ。
僕は、クラスに馴染んでいる。
少なくとも、そう見えていると思う。
話しかけられれば普通に話す。
みんなが笑えば一緒に笑う。
休み時間には誰かの輪の中にいることもある。
だから、僕を「孤独な人間」だと思う人はいないだろう。
僕自身も、そう思っていなかった。
ただ、親友と呼べる人はいない。
放課後に「一緒に帰ろう」と言われることも、休日に「遊ぼう」と誘われることも、ほとんどない。
別に嫌われているわけじゃない。
たぶん、僕がいなくても困らないだけだ。
教室では、僕がいなくても会話は続く。
僕が帰ったあとも、みんなは楽しそうにしている。
それは当たり前のことだった。
それなのに、たまに胸の奥が妙に静かになる。
誰かと話していたはずなのに、家に帰ると一日分の会話が全部消えてしまったような気がする。
スマホを見る。
通知はない。
別に誰かから連絡が来ると思っていたわけじゃない。
それでも、画面を閉じる。
そしてまた開く。
そんなことを繰り返している自分が、少しだけ嫌になる。
学校では、ちゃんと笑えている。
ちゃんと馴染めている。
ちゃんと「普通の高校生」をやれている。
なのに、どうしてこんなに一人なんだろう。
そんな疑問を抱えたまま、夏休みが始まる。
予定は、ほとんどない。
誰かと約束したわけでもない。
ただ、時間だけがたくさんある。
そして僕は初めて気づく。
学校という場所がなくなったら、僕には何が残るんだろう。
僕には、名前を呼んでくれる人がいる。
でも、その人たちの中に、僕がいなくなったら寂しいと思ってくれる人はいるのだろうか。
――そんなことを考える自分は、きっと面倒くさい。
だから今日も、何でもない顔をして教室にいる。
笑っている。
誰かと話している。
そして、誰にも気づかれないまま、少しずつ夏が過ぎていく。
これは、誰から見ても普通だった僕の、誰にも話さなかった夏の記録。
僕はみんなの輪の中にいた。
でも、一度もその輪の中にいる気はしなかった。
僕の真っ白な夏は、何者にもなれないまま、湯水のように溶けてゆく
文字数 3,820
最終更新日 2026.08.10
登録日 2026.08.10
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