Signet:β

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こんばんは、Signet:βです。
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この物語の主人公は、自らの意思を持つ事以外はごくごく平凡な市松人形だ。 勿論大好きな人は自分の持ち主でもあるお婆ちゃん。例え直接の会話が出来なくとも、彼女が話し掛けてくれるだけで市松人形は十分であった。そんな日々を、幸せに感じていた。 しかしその幸せな日々も、そう長くは続かなかった。患っていた病により、お婆ちゃんが外出先で帰らぬ人となってしまったのだ。それを知らぬまま、市松人形は三日間も彼女の帰りを待ち続ける事となる。 主人不在となった家の中は、お婆ちゃんの子供達ーー年齢で言えば四十代後半程ーーが行った遺品整理と言う名の押し込み強盗により、金目の物は全て持ち去られ、更にはお婆ちゃんの大切にしていた物は全てゴミとして捨てられてゆく。 ……無論、市松人形もその例外ではなかった。 そして雨と風が吹き荒ぶ中、彼女はゴミステーションに捨てられた。 「このまま私、お婆ちゃんに会えないまま捨てられちゃうのかな」 だが全てを諦めかけていた市松人形にも転機が訪れる。偶然にも通りかかった轆轤首と言う妖怪が、彼女を家へと持ち帰ったのである。 新しい居場所が見つかった事により、安堵する市松人形。だが彼女の体に轆轤首が触れた途端、ある大きな異変が起こった。 なんと市松人形は、自身の体を動かせるようになってしまったのだ。 事の成り行きから、市松人形は轆轤首にツクモノと言う名を与えられる。しかし同時に、自分が動くようになった事から彼女は、自分と言う存在が曖昧で理解出来ずにいた。 それを見た轆轤首は、市松人形の力になってあげたいと言う想いから、彼女の自己理解への道を手助けする事を決意する。 市松人形……もといツクモノは果たして、無事自分の正体を掴む事が出来るのか。 これは生まれてくる時代を間違えてしまったとある妖怪の、苦悩と葛藤を描く物語である。 ※この物語はフィクションです。実在する人物や団体とは関係ありません。 ※この作品は「カクヨム」、「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。
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文字数 145,065 最終更新日 2019.03.13 登録日 2019.03.07
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