ナキ

ナキ

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ファンタジー 連載中 短編
――処刑されなかっただけ、まだ運が良いらしい。 「お前は今日限りで勇者パーティを追放する」  王都中央広場。  俺、レイン・アルトは、大勢の前でそう宣告された。 「理由は明白だ。お前は役に立たない」  勇者アレンが、俺を見下ろすように言い放つ。  周囲の仲間たちも、誰一人として反論しなかった。  ――まあ、そう見えるだろうな。  俺の役職は【雑用係】。  スキルも戦闘向きじゃないし、魔法も使えない。  荷物持ち、野営準備、交渉、書類整理。  全部地味で、目立たない。 「回復も攻撃もできない無能を、これ以上養う余裕はない」 「分かったよ」  俺はあっさり頷いた。  ざわり、と周囲が騒ぐ。  もっと泣きつくと思っていたらしい。  ――でも、俺は知っている。  このパーティが、なぜ今まで全滅せずにいられたのかを。  勇者アレンは確かに強い。  だが、彼が倒した魔物の弱点を調べたのは誰だ?  補給路を確保し、街と交渉し、罠を見抜いたのは?  全部、俺だ。  それだけじゃない。  俺の持つ唯一のスキル。  鑑定しても「効果不明」と表示されるこの能力。  【管理者権限(ローカル)】  ――王国はまだ、この意味を知らない。 「じゃあな、無能」  アレンはそう言って背を向けた。  その瞬間。  空気が、歪んだ。  俺の視界に、半透明のウィンドウが浮かぶ。 【王国管理システムにアクセスしました】 【権限レベル:未申告】 【周辺データを同期しますか?】  ……は?  心臓が嫌な音を立てる。  俺は反射的に「YES」を選んだ。 【同期完了】 【現在地:王都】 【国家安定度:低】 【重大警告:魔王軍侵攻ルートが未対処です】  次の瞬間、遠くで爆音が響いた。  城壁の外。  黒煙が立ち上り、悲鳴が聞こえる。 「な、何だ!?」  騎士たちが慌てて走り出す。  ウィンドウが、赤く点滅した。 【選択してください】 【① 介入する】 【② 放置する】  俺は、少し考えた。  ――追放された雑用係が、王国を救う義理はあるか?  答えは、簡単だった。 「……介入するか」  どうせなら。  この国が、俺を手放したことを後悔するくらいには。 【管理者権限を一時解放します】 【警告:世界バランスが崩壊する可能性があります】  俺は笑った。 「今さらだろ」  こうして――  勇者よりも先に、俺がこの世界を掌握することになった。
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文字数 3,809 最終更新日 2025.12.30 登録日 2025.12.30
ファンタジー 連載中 ショートショート
かつて神を封じし地、 今は魔がはびこる世界――。 治安は崩れ、人の心は闇に沈み、 空には光が届かない。 そんな絶望の時代を旅するのは、六人の若き者たち。 魔法剣士として名を馳せる英雄アルヴェイン・カグラ、 彼を陰から支える“魔力の泉”とも呼ばれる弟、ノクス・カグラ。 癒しの巫女ユイナ、豪胆な槍使いテンマ、 火と風を封ずる陰陽師イズナ、 沈黙の射手ナトリ―― それぞれが異なる力と過去を持ち、 ただひとつの目的のために、闇の地を行く。 ノクスは戦わない。 けれど、その魔力は、仲間の限界を越えさせる。 世界が滅びに向かう中、 彼らは「誰かを救う」ために剣を取り、術を放つ。 そして語り継がれる―― 「六つの影が朱き獣を封じし夜」の昔語り。 和と剣と術が交差する、静かなる群像戦記。 これは、滅びゆく世界を旅する六人の冒険譚――
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文字数 1,139 最終更新日 2025.09.15 登録日 2025.09.15
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