人は皆、春を祝福する。
芽吹き、出会い、恋を知り、新しい人生が始まる季節だからだ。
けれど私にとって春とは、何かを失い続ける季節だった。
これは成功譚ではない。
傷が癒える物語でも、救済の物語でもない。
醜さも、傲慢さも、依存も、孤独も、すべて抱えたまま、それでも今日を生き延びようとする、一人の人間の生活録である。
春に生まれた男が、ついに一度も芽吹くことのなかった人生を、それでもなお書き続ける。
その記録の名を、『堕落の春』という。
文字数 1,272
最終更新日 2026.07.06
登録日 2026.07.06