日銀利上げでもなぜ「円安」のままなのか?アメリカ人は日本の「異次元緩和」終了をどう見ているのか?

2024.03.24 Wedge ONLINE

 こうした観点からは、今回の利上げに対して為替相場が反応しなかったことは、少々気がかりのようだ。米国の連邦準備制度理事会(FRB)は既に、これ以上の利上げを停止するとして、反対に利下げの可能性も示唆している。であるならば、今回の日銀の利上げによって、日米の金利差は急速に縮まることが考えられる。にもかかわらず、円が上がらなかったというのは、米国の投資家からはやや失望感を伴っているようだ。

 この点に関する解説としては、植田日銀が19日の時点では追加利上げの見通しを示さなかったので、円は上がらなかったというストーリーが一般的だ。こうした見方を受けて、20日から21日にかけては、世界中のアナリストが「7月追加利上げ説」であるとか「いや次の利上げは10月」あるいは「全ては米国のFRBの動き次第」などとさまざまな予測を打ち出し始めた。だが、それで市況が動くわけでなく、1ドル150円から151円と、円は依然として弱含みである。

「円高メリット」を生かせ

 もしかしたら、米国の、そして世界の投資家の見方としては、日本経済のファンダメンタルズが相当に弱くなっており、円の実力を150円以下に置いているのかもしれない。仮にそうした悲観論が浸透するのであれば、世界から日本への投資はゆっくりと細っていくかもしれない。

 とはいえ、本番は、4月以降である。新年度入りして以降が、本当に今回の利上げへの世界の評価が見えてくることになるだろう。そこで円がある程度買われて、円高になっても、そこで日本株が持ちこたえれば、今度は「円高メリット」が出てくる。

 例えば、エネルギーや資材などの価格が落ち着くことで、日本国内の国民生活にも落ち着きが出てくるであろう。また、なかなか難しかった日本から世界への留学生も増えるのではないか。更に、日本でも国際労働市場で戦えるような給与を払うことができれば、優秀な人材を招聘して各産業を活性化することも可能になる。

 一部の外国人投資家は、この後にやってくるかもしれない一時的な円高のタイミングで、日本株を売り抜けるかもしれない。その弊害を限定的な範囲にとどめ、とにかく円高メリットを活かすことで、日本経済を再度活性化することにつなげてゆくべきだろう。